2012/11/29

コメ高騰は全農の概算金引き上げが要因とする報道に、全農・全中が反論

8月の投稿で、JA概算金の設定に影響されて新米相場が高騰していることを書きました。
当時はまだ早期米の季節であり、一般米が登場するころには相対価格の大幅な修正もあるかもと淡い期待をしておりましたが、依然高値がつづいた状態です。まあ今でも、概算金そのままでも、あと1,500円くらいならJA相対価格も下げる余裕があるのと思ってます。

しかし全国作況指数102の発表にもかかわらず高騰がつづき、ついに一般紙も農協の概算金設定が高騰をもたらしていることを報じるようになりました。代表例は読売新聞の11月5日の社説「豊作でも高値 矛盾だらけのコメ政策見直せ」でしょう。消費者軽視の農協の理論、消費者ニーズに沿う努力の不足、飼料用米への補助金の太さなどが上手く指摘されています。

ところが11月20日に全中と全農が連名でこのような新聞報道に対する反論を行っています。

 「豊作にもかかわらず米価が高いのは全農の概算金引き上げに要因があるとする一部報道について」 

 
この反論では「全農の概算金の引き上げや集荷拡大が原因であるとの報道」は誤解を招くとして三点を主張しています。


  1. 端境期に需給がひっ迫し、そのため業者の価格水準が上昇し、概算金はそれに合わせたにすぎない。
  2. 報道されている米価は、全価格帯の加重平均。高価格帯の上昇はわずかだが業務用低価格帯の需給がひっ迫し上昇が大きい。低価格帯がひっ迫したのは「政府備蓄米の運営が、新米を買い入れ、古米を売り渡す回転備蓄方式から、買い入れた米を一定期間保管後、飼料用等に販売する棚上備蓄方式に移行したことにより、政府備蓄米が主食用に売却されなくなったことも要因の1つ」。
  3. 東北、北陸での猛暑による被害がある。精米歩留の低下が懸念されている。

三点についての感想です。
  1. 端境期の記憶を辿ってみると・・・。
    春から夏にかけて、確かに動いているコメが少なかったです。卸売りの営業も、顔は出しても「売るものがない」とぼやくばかり。ただ、今になって見ると23年産も無かったわけではない。農家から末端の米屋まで、なんだかんだいって少しずつ在庫してたみたいですね。実際、口では「無い、無い」と言ってもパニックは起こらなかった。
    むしろ、南九州から始まる早期米の概算金が軒並み高かったことがショックでした。当然、JA相対価格も、予想だにしなかった強気の値段。民間集荷業者もJA概算金が高すぎて様子見。
    米屋の現場からは、概算金設定 → 高騰という順番にみえましたね。
  2. 低価格帯ひっ迫の理由として挙げられている棚上備蓄。なんか政策が悪いような口ぶりですが、もともと回転備蓄から、隠れた価格支持政策といえる棚上備蓄への変更は生産者側が望んで実現させたのではなかったか?例えばこの記事(棚上げ備蓄で米価が上がる | コラム | JAcom)。
    また、低価格帯の不足は、上記の読売社説でも示されている飼料用米への補助金の太さが大きく影響しているといわれています。農政の責任といえばそうですが、これも生産者側としては望んでいた政策ではなかったか?
    最大の理由は、「消費者のニーズを満足させたい」という意識が生産者側に希薄であることではないでしょうか。消費者は生産者にとって都合のいいもの、生産者が作りたいものを食べてればいいのだ、という驕りがないでしょうか?
    自分たちは消費者のニーズを無視する一方で、その捨て置かれた消費者ニーズを満たすだろう米が消費者に届くことは、政治的圧力で阻止する。どうも最近、TPPに反対する農業関係者の姿がこんな感じに見えてしまって・・・。
  3. まず、高いのは玄米価格です。精米価格も高いですが、精米業者は原料の上昇分を充分転嫁できていません。歩留が悪いから商品価格を上げているという意味なら、全くのお門違いでしょう。
    もしかしたら、歩留が悪そうだから、精米の出来上がりが少なくなりそうだから、必要な玄米量を多めに見積もってひっ迫しているというのでしょうか?だとすると、なんか、ひとごとみたいですね。
ついでに確認しておきたいのが今年4月のこの記事です


集荷量減少に危機感をもち、24年産は具体的な数値目標を設定して臨んでいたことがわかります。
23年産は266万トンであった連合会出荷米を300万トンに、JA直売まで含めた集荷を23年の356万トンから400万トンにすることを目指すと。
具体策として、機動性に欠く現在の共同計算のやり方を見直すなどありますが、今年の各地での集荷に間に合ったのでしょうか?
他に有効な策がないままで、300万トンを実現しようとすれば、やっぱり力技にならざるをえないのでは?
しかし、この記事も、また今年の概算金の騒動も、「集荷すればどうにかなる」という雰囲気を全農さんから感じるのですが、やっぱり現場では高ければ米は動かないのです。
そもそも全農集荷量が減ったのは、委託する農家が減っただけでなく、全農玉に魅力を感じない買い手が増えたからでしょう。