コンビニ等でおにぎり値上げのニュース。
おにぎり値上げ 業務用米高値 価格に転嫁 コンビニスーパー
リンク先は日本農業新聞の記事がヤフーニュースに転載されたものです。
けっこうな量の読者のコメントがついており、関心の高さが感じられます。コメントのごく一部しか目を通してませんが、コメ業界、消費者、生産者との三者間の認識の違いも面白いです。
米穀店的には当然に予想された値上げですが、コメが高騰している事実を知らない消費者が多いこと、コメが売れない問題と業務用米の不足の関係がうまく理解されてないこと、昨年以前から飼料米政策に起因する低価格米が不足気味であることが一般には知られていないこと、作況指数からみて値上げは不可解と感じられていること、などなど。
そして消費者のみならず生産者も流通についてはあまり確かな知識を持っていないということ。
そして農家の側からすれば高くなったと言ってもまだまだ安くてやってられないレベル。消費者の側からすれば生活を苦しめる不条理な値上げ。流通からすると仕入れは上がるのに売値に転嫁できない、とりあえず来年以降は落ち着くだろうから今年は何とか生き延びたい。
三者とも苦しいばかり。たちの悪い大岡裁きです。
わたしはこの状況は、産地の衰退以上に消費地が消耗していることの表れだと解釈します。
かつて昭和時代の生産地の衰退は若者の都市部への流出によるものでした。今は消費地の衰退と生産地の衰退がリンクしているように見えます。
都市部が農村部に対して経済的に優位だった時代には、都市住人による農産物の購入や観光消費、国や自治体の財政などを通じて消費地が生産地を経済的に支える形が自然に可能でした。今でも農村部で村おこし的なことを考えている人たちのなかには、そういう構造を前提にしているの人も多いのではないでしょうか。
しかし、今の消費地・都市部にはこれ以上生産地・農村部を支えるだけの力がない。もはや打ち出の小づちではないのです。すべての農村部を支えられるほどの力量はないのです。
都市部の貧困を目の当たりにすれば消費地の購買力をあてにすることの難しさが理解されるでしょう。むしろ都市部を含めた日本全体がインバウンド消費などと、外国人の財布をあてにした村おこし的なものに希望をつないでいるくらいです。
都市部消費者の購買力の低下。これから目を逸らすなら、消費者、中外食業者などの実需者が外国産というもう一つの選択肢を選ぶのを後押しすることになりかねないでしょう。
2017/11/18
2014/12/09
鼻白むニュース
半月くらい前にみた、テレビのローカルニュース。
要約すると、
何が鼻白むかといえば、このニュースをみたちょうど前日、取引のある業者から電話があり、県内産精米についてスポットでどこか使ってくれるところはないかと、かなりのダンピング価格を提示しながらの問い合わせがあったばかりだったからです。
確かに、「販売先の確保」という部分は、まるっきりハズレとは言えないでしょう。ただし、学校給食や病院、施設に対する市町村会議員等有力者による強い営業力に頼ったものであったり、卸売業者への押しつけであったり。消費地での売れ行きを無視すれば、確かにJAグループから民間業者への販売は出来ているといえるでしょう。しかしそれは、実際にコメを食べる人に支持されての結果とは思えません。
要約すると、
- 今年のコメ価格は全国的に大幅に下がったが、農水省の統計によれば、当県内の下落幅は近隣地方内で最も少なく、結果として地方内では最高値となった。
- その理由について、農水省は「品質の高いコメ作りによる販売先の確保に加え、地域の需要に見合った生産量の作付けが、価格低下を回避」と分析している。
という内容。
ここの発表を基に、農水省からもらったコメントを付けてつくったニュースですね。前半まではなんてことなく聞き流してました。「やはり、当県内産のコスパは悪いよなあ。」なんて思いながら。
しかし、後半の説明がなんとも鼻白む。だいたい、いくら農水省が発表した統計についてであっても、価格の理由について農水省なんかに聞いてもわからんでしょう。聞かれた方も、仕方なしに、なんとなく恰好がついて当たり障りのない回答をするしかない。
何が鼻白むかといえば、このニュースをみたちょうど前日、取引のある業者から電話があり、県内産精米についてスポットでどこか使ってくれるところはないかと、かなりのダンピング価格を提示しながらの問い合わせがあったばかりだったからです。
縁故米シーズンということもありますが、特に今年はスーパーが安売りしてもコメが動かない、裏にはコメがあふれてるとも聞きます。けどスーパーも特売しなきゃならないし、精米年月日は新しくなければいけない。店頭に出せない売れ残りはさらに膨れる。そんなコメが業務用にダンピングされていくわけです。
また、いまだに24年産の県産米もけっこう残っているとも聞きます。
確かに、「販売先の確保」という部分は、まるっきりハズレとは言えないでしょう。ただし、学校給食や病院、施設に対する市町村会議員等有力者による強い営業力に頼ったものであったり、卸売業者への押しつけであったり。消費地での売れ行きを無視すれば、確かにJAグループから民間業者への販売は出来ているといえるでしょう。しかしそれは、実際にコメを食べる人に支持されての結果とは思えません。
品質や味は二の次、三の次で、とにかく地産地消のスローガン、政治力で売るという姿勢がいまだ根強く残っているのです。これには権威に弱い県民体質というのもあるのでしょう。地産地消というより地縁血縁といった方がいいかも。
これでは、正しい意味での「需要に見合った生産量」とはいえないと思えます。
そして、「品質の高いコメづくりによる販売先の確保」という部分。
これこそ、当たり障りのない意味のない言葉でしかないのですが、しかしこれを聞いた県内生産者が勘違いするならば、むしろ有害ですらあります。
生産者間の本当の競争、淘汰が始まろうかというこれから、品質の向上あるいはコストの削減へと、それぞれの方向へますますレベルアップしていくだろう有力生産地との力の差が、さらに広がっていくのではないかとの危惧を感じます。
一体、このニュースは、なにが言いたかったのか、誰に向けたものだったのか。テレビのニュース番組のお得意様である、農村の老人生産者の自尊心をくすぐるためだったとしたら悲しい話です。
これこそ、当たり障りのない意味のない言葉でしかないのですが、しかしこれを聞いた県内生産者が勘違いするならば、むしろ有害ですらあります。
生産者間の本当の競争、淘汰が始まろうかというこれから、品質の向上あるいはコストの削減へと、それぞれの方向へますますレベルアップしていくだろう有力生産地との力の差が、さらに広がっていくのではないかとの危惧を感じます。
一体、このニュースは、なにが言いたかったのか、誰に向けたものだったのか。テレビのニュース番組のお得意様である、農村の老人生産者の自尊心をくすぐるためだったとしたら悲しい話です。
2014/06/21
ダンピング合戦と産地偽装のニュースと
じつに半年以上、このブログを放ったままでした。
書きたいことがないわけでもなかったのですが、どうも書くタイミングを逸したりしてた次第です。
今の状況をざっとみるに、新米シーズンが近づいてるにもかかわらず、25年産の消化が進まない。さらには糖質抜ダイエットなんてコメ関係者にとってはテロ行為のような言説も流布される。10月末の持ち越しは60万トン、過剰米対策35万トンを引いても25万トンが残るなんて予測も聞きます。
宅配Y社の強気の値上げや、某牛丼チェーンでのアルバイトの反乱など、これまでの歪なバランスを修正するような動きが報じられましたが、コメに関しては情けないというか、辛いというか。
そんなわけで、ここ1、2カ月でますます酷くなっているダンピングの件などからブログ再開しようかと。
他の業界と同様に、刹那的で暴力的なダンピングは九州方面からやってきます。特にこの時期、もう来月には南九州の早期米が収穫されるため、倉庫を空けておかなければならない事情が元来のダンピング気質に加わるのです。
元はといえば、需要を上回ることが分かっているのに行われる過剰な作付け。しかし、無駄な生産の責任は生産者がとっているのかといえば、そうとは言い切れない。たとえば、このダンピングも、生産者の処分売りもあるでしょうが、流通業者の損切りが大きいのでは。JA直売の値下げもあるでしょうが、民間ほどのヒリヒリした感じはないのかと。全農価格に至っては反応が鈍いというか、どこか他人事という風でもある。
というわけで、過剰な生産の尻拭いをさせられてるのは悲惨な流通業者というのが私の解釈です。
まあ、それでも、事情があるにせよ、捌ききれない仕入れをした業者の自己責任ではあります。しかしそれだけで済まないのが問題で、損を出して処分する業者が出れば、その周辺で堅実に仕入れて経営してきた業者までが巻き込まれてしまうわけです。馬鹿な仕入れをした業者が一人沈むなら仕方ないけど、周りの業者の足を引っ張りながら巻き添えにしてゆくという状況があります。
そんなコメ余りのさなかに目にしたニュースです。
大手のモールでは激安米を売りにしていたようです。
産地を偽りながら低価格を売りにしていたわけで、競合する業者はアンフェアな価格競争を強いられていたことになります。消費者、コメ業界のどちらから見ても、とてもじゃないが許せない行為です。
あと一つ、某サイトでのカスタマーレビューを見て思ったこと。
消費者の皆さんは、コメはいくらでも安くなる、タダに近くなると思っているのかもしれません。が、実際には生産者の資材・労賃・機械・燃料等に加え、運送する段階での燃料・車両・労賃、搗精する段階での光熱費・機械・包材・労賃・倉庫での保管などなどのコストがかかっています。
理屈の上では農地の集約や品種の選択、作業手順の効率化で、玄米1俵を1万円未満で販売してもやっていけるようなことが言われていますが、現時点でほとんどの農家、つまり消費のボリュームゾーンを支える農家の生産コストは理想的なモデルからは程遠いのです。
激安であればそれなりのモノになる(中米や砕米が多い、粒が揃ってない、古米臭がするなど)のは当然で、10kgで3,000円切りながらマトモなものを欲しがるのは、現状では、失礼ながらムシがよすぎると申し上げたい。
しかし、実際には10kg3,000円切りながらマトモな商品も大量に、当たり前のようにして出回っています。それらの商品は、生産者から販売者の間のどこかの段階で誰かが血を流していることを理解していただきたい。生産者かもしれない、流通業者かもしれない、誰かの怨念がこもった価格です。
なんて言ったら、ちょっとおどろおどろしいでしょうか。
2013/12/06
水田農業改革に思う
先月26日の「農林水産業・地域の活力創造本部(第9回)」で、政府の水田農業改革の全体像がきまったそうで。
(水田農業改革を政府が決定 | 農政・農協ニュース | JAcom 農業協同組合新聞)
以下は一区切りついたということでのメモ書きです。
当初、「減反廃止」の報道を聞いた時、私はてっきり、「これは改革派のシナリオで行くんだな」と勘違いしていました(ここでは、山下一仁氏や昆吉則氏、浅川芳裕氏など論客を「改革派」と呼ばせてもらいます。)。改革派の主張は新自由主義と相性が良さそうだし、与党幹事長石破茂氏の過去の発言も改革派の影響を感じさせるものでした。
その後、具体的な内容が明らかになるにつれ、「なんか違うな・・・」となり、今に至ります。
さて、この改革プランについては賛否両論(否が多い?)ありますね。
減反廃止決定と補助金改革 各紙の扱いは? 真の農業改革に必要な発想 WEDGE Infinityでは、各新聞社の報道姿勢がサクッとまとめられています。
まず、批判。ざっと二つの立場があるようです。
このプランは減反廃止どころか減反強化であり、今まで以上のバラマキだとする批判です。飼料用・米粉用への最大10万5千円/反の補助金という転作への強いインセンティブがあり、実際には減反強化となるという見方です。
飼料用・米粉用への転作が増え主食用の生産が抑制されれば、主食用米の価格は高く維持されたままで、非効率的な農家の淘汰と担い手農家への集約は進まない。相変わらず国民は、消費者として高米価、納税者として補助金という二重の負担がつづく。消費者のコメ離れは加速し、稲作農業が補助金から自立する道はますます遠のく。
たとえば改革派として減反廃止を主張し続けていた山下一仁氏がその代表でしょうか。
戦後農政の大転換「減反廃止」は大手マスコミの大誤報――キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・山下一仁|DOL特別レポート|ダイヤモンド・オンライン
高橋洋一氏。
【日本の解き方】「減反5年後廃止」は本当か 補助金廃止は評価できるがバラマキはコメ以外に拡大 - 政治・社会 - ZAKZAK
民主党議員からは補助金頼りの見た目の所得向上について批判が。
農家の所得は13%増えるのではなく6%減る。
意外にも?毎日、朝日も、改革派寄りの意見です。単に「アンチ安倍」ってことでしょうか?
社説:減反政策の廃止 補助金で改革妨げるな- 毎日新聞
(波聞風問)減反廃止 農政大改革、看板に偽りあり 原真人:朝日新聞デジタル
減反見直しても農家所得13%増 農水省試算、補助金増:朝日新聞デジタル
むしろ、バリバリ改革派なイメージの読売や日経のほうが淡々と政府の主張を報じています。こちらは単に「安倍贔屓」ということ?
農業 3本柱で強化 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
確かに今回の政府方針では、需給がダブダブになって価格低下→淘汰で経営マインドを持った農家が残る、というシナリオにはならない感じです。また、日本再興戦略で謳われる華やかな感じともイメージが違うようです。
今回の方針決定があまりにも性急であること、小農切り捨ての国の姿勢が見て取れること、中山間地への理解に欠けること、水田の多面的機能の評価が足りないこと等。
日本型直接支払いや飼料米の補助金についての内容が具体的になるにつれ、批判のトーンは下がってきましたが、居住する集落やこれまでの暮らしの存続についての不安はまだまだ拭えないでしょう。
はたして飼料用米の販売先など見つかるのか、農地維持も含めてこれら補助金はいつまで続くのか・・・。また、専業農家の方が兼業農家よりも厳しい状況に追いやられ先に倒れてしまうのでは、という懸念もあります。
高橋はるみ知事「進め方性急」政府の減反廃止に : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
上記リンク先ウェッジ誌の記事にもありましたが、地方紙、特に中山間地を多く抱える地域の新聞はこの辺りの不安を伝えます。
鹿児島の情報は南日本新聞 - 社説 : [減反廃止] 丁寧な議論が不可欠だ
AGARA紀伊民報 - 「農政の転換と中山間地」
岐阜のコメ、未来図は 減反見直し、農家賛否 - 岐阜新聞 Web
この不安は、国、とくに農水省の目指しているのイメージがハッキリと見えないことにあるのではないでしょうか。
安倍総理は、
が、どうも、今回の改革方針はこれらの言葉としっくりこない。
どうも目標とする姿というか想定している改革後のイメージがハッキリと語られてない。なんかモゴモゴと言葉を濁されている、そんな気持ちになるのです。
国産米需要については人口減・価値観の変化による減少が従来から続いてますが、さらに関税撤廃後は外国産米に奪われる消費がかなりになるでしょう。
生産コストを低減して価格を下げ消費減に歯止めをかけるといっても、コスト削減の余裕は言われてるほどでもなさそうだし、そもそも担い手も含めて生産者・関係者の大部分は生産コスト低減に意欲がある風じゃない。
海外富裕層相手の輸出なんていっても、数はしょぼそうだ。
結局、今のままでは供給過剰でダブダブになることが予想されます。稲作農家の全滅を防ぎ、さらに自立まで目論むには、これまで以上に供給を抑制しなければならない。
ただし、国が生産量を決めて割り当てるのではなく、稲作農家が自分の判断でこれ以上のコメは作らないという判断を下すべきだ、と。
需給見通しの情報は提供するが、その先は自分で判断してほしい。自分のコメが消費側にとってどれほどの価値のものかを正しく自覚して、売れる売れないの判断を各自で下すべきだ。
そして、過剰米が発生しても、自分たちの責任で処理してくれよ。「作る自由」と「作った責任」はセットですよ、と。
安倍総理の次の言葉からそう印象します。
これからは、コメを食糧として特別扱いするつもりはない。
そんなメッセージが込められているような気もします。まあ、私の勝手な解釈ですが。
そして、転作補助金による生産者のリストラ。
ある程度の低コストでコメを作れる生産者、あるいは、すこしくらい高価でも需要がある食味、品質、個性のあるコメを作れる生産者、つまり主食用米の生産にメリットが有る生産者だけが縮小する主食用国産米市場に残る。
そうでない人は飼料用米などの生産へ。いずれはトウモロコシなど、コメ以外の飼料用作物へとシフトしてもらいたいのでは?
国産米の需要は少なくなるのだから、供給もそれに合わせて減らす。ただし、これまでのように稲作農家の軒数は維持したままで各自の作付け面積を減らすという方向ではなく、主食用稲作農家の数を減らしていくという方向への転換ということでしょうか。
稲作問題の本質は需要量に比して過剰な数の人間がぶら下がっていることだ、と考える立場からすれば、これはありかな?
もし、私が想像したような姿が目標であれば、そりゃハッキリとは言いづらい。ストレートに言うのは少し無体な、というか反発ありそうな感じで、モゴモゴと言葉を濁したくなるでしょう。
しかし、この飼料用米の補助金はいつまでつづくのでしょうか。生産者からみて、補助金貰って飼料米を作るより、もっと魅力的な作物が出てくればいいのですが。どうやって終いにするつもりなのか気になります。まさか、今後ウン十年も続かないとは思いますが・・・。
(水田農業改革を政府が決定 | 農政・農協ニュース | JAcom 農業協同組合新聞)
以下は一区切りついたということでのメモ書きです。
当初、「減反廃止」の報道を聞いた時、私はてっきり、「これは改革派のシナリオで行くんだな」と勘違いしていました(ここでは、山下一仁氏や昆吉則氏、浅川芳裕氏など論客を「改革派」と呼ばせてもらいます。)。改革派の主張は新自由主義と相性が良さそうだし、与党幹事長石破茂氏の過去の発言も改革派の影響を感じさせるものでした。
その後、具体的な内容が明らかになるにつれ、「なんか違うな・・・」となり、今に至ります。
さて、この改革プランについては賛否両論(否が多い?)ありますね。
減反廃止決定と補助金改革 各紙の扱いは? 真の農業改革に必要な発想 WEDGE Infinityでは、各新聞社の報道姿勢がサクッとまとめられています。
まず、批判。ざっと二つの立場があるようです。
批判その1
ひとつは、改革派からの批判。このプランは減反廃止どころか減反強化であり、今まで以上のバラマキだとする批判です。飼料用・米粉用への最大10万5千円/反の補助金という転作への強いインセンティブがあり、実際には減反強化となるという見方です。
飼料用・米粉用への転作が増え主食用の生産が抑制されれば、主食用米の価格は高く維持されたままで、非効率的な農家の淘汰と担い手農家への集約は進まない。相変わらず国民は、消費者として高米価、納税者として補助金という二重の負担がつづく。消費者のコメ離れは加速し、稲作農業が補助金から自立する道はますます遠のく。
たとえば改革派として減反廃止を主張し続けていた山下一仁氏がその代表でしょうか。
戦後農政の大転換「減反廃止」は大手マスコミの大誤報――キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・山下一仁|DOL特別レポート|ダイヤモンド・オンライン
高橋洋一氏。
【日本の解き方】「減反5年後廃止」は本当か 補助金廃止は評価できるがバラマキはコメ以外に拡大 - 政治・社会 - ZAKZAK
民主党議員からは補助金頼りの見た目の所得向上について批判が。
農家の所得は13%増えるのではなく6%減る。
意外にも?毎日、朝日も、改革派寄りの意見です。単に「アンチ安倍」ってことでしょうか?
社説:減反政策の廃止 補助金で改革妨げるな- 毎日新聞
(波聞風問)減反廃止 農政大改革、看板に偽りあり 原真人:朝日新聞デジタル
減反見直しても農家所得13%増 農水省試算、補助金増:朝日新聞デジタル
むしろ、バリバリ改革派なイメージの読売や日経のほうが淡々と政府の主張を報じています。こちらは単に「安倍贔屓」ということ?
農業 3本柱で強化 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
確かに今回の政府方針では、需給がダブダブになって価格低下→淘汰で経営マインドを持った農家が残る、というシナリオにはならない感じです。また、日本再興戦略で謳われる華やかな感じともイメージが違うようです。
批判その2
もうひとつの批判は、淘汰されるかもしれない農業者の立場からです。今回の方針決定があまりにも性急であること、小農切り捨ての国の姿勢が見て取れること、中山間地への理解に欠けること、水田の多面的機能の評価が足りないこと等。
日本型直接支払いや飼料米の補助金についての内容が具体的になるにつれ、批判のトーンは下がってきましたが、居住する集落やこれまでの暮らしの存続についての不安はまだまだ拭えないでしょう。
はたして飼料用米の販売先など見つかるのか、農地維持も含めてこれら補助金はいつまで続くのか・・・。また、専業農家の方が兼業農家よりも厳しい状況に追いやられ先に倒れてしまうのでは、という懸念もあります。
高橋はるみ知事「進め方性急」政府の減反廃止に : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
上記リンク先ウェッジ誌の記事にもありましたが、地方紙、特に中山間地を多く抱える地域の新聞はこの辺りの不安を伝えます。
鹿児島の情報は南日本新聞 - 社説 : [減反廃止] 丁寧な議論が不可欠だ
AGARA紀伊民報 - 「農政の転換と中山間地」
岐阜のコメ、未来図は 減反見直し、農家賛否 - 岐阜新聞 Web
この不安は、国、とくに農水省の目指しているのイメージがハッキリと見えないことにあるのではないでしょうか。
安倍総理は、
農林水産業を若者に魅力ある産業にし、同時に、日本の農山漁村、ふるさとを守っていく
経営マインドを持った農林水産業者が活躍できる環境を整備し、農業の構造改革を進め成長産業とし、農業・農村全体の所得の増加につなげる
担い手の規模拡大を後押しし、美しいふるさとを守ってまいります。と力強く語ります。
が、どうも、今回の改革方針はこれらの言葉としっくりこない。
どうも目標とする姿というか想定している改革後のイメージがハッキリと語られてない。なんかモゴモゴと言葉を濁されている、そんな気持ちになるのです。
支持する意見
まあ、あまり見かけないのですが、この改革プランを支持する意見。
有坪民雄氏は、耕作放棄地問題をみる視点から“「中途半端」な減反廃止政策”を効果があるとしています。農地を増やしたい既存の農業者が、集落内での減反割り当てに縛られずに、自然な形で作付けを増やしていける政策だという評価。氏のイメージする改革は改革派のそれよりも穏健で現実的な感じがします。
メモ
で、私の感想です。場末の米屋が思いつき勝手に書いてるメモですので、その程度と軽く流してください。
この政策が減反廃止ではなく減反強化であるという指摘はその通りだと思います。が、しかし、その点がこの改革にダメ出しする理由とはならない気がします。
実は正直言って、改革派のシナリオよりも、農水省案の方が現実的で味わい深いようにも思えてきました。
実は正直言って、改革派のシナリオよりも、農水省案の方が現実的で味わい深いようにも思えてきました。
改革派の方達は、収量アップ、大規模化でコスト低減して、国内に流入してくる外国産との競争はおろか、どんどん生産量を増やして輸出しよう!という方向で考えているのだろうと思います。
その立場からすれば、今回の政策は全然方向が違うし、評価できないでしょう。
ただ私、改革派のこれまでの主張に大筋では同意するのですが、具体的な見通しについては些か楽観的で大雑把に過ぎるという印象を持っておりました。改革派的な政策が進められたなら、それはそれで不安が大きかったことでしょう。
その立場からすれば、今回の政策は全然方向が違うし、評価できないでしょう。
ただ私、改革派のこれまでの主張に大筋では同意するのですが、具体的な見通しについては些か楽観的で大雑把に過ぎるという印象を持っておりました。改革派的な政策が進められたなら、それはそれで不安が大きかったことでしょう。
国産米需要については人口減・価値観の変化による減少が従来から続いてますが、さらに関税撤廃後は外国産米に奪われる消費がかなりになるでしょう。
生産コストを低減して価格を下げ消費減に歯止めをかけるといっても、コスト削減の余裕は言われてるほどでもなさそうだし、そもそも担い手も含めて生産者・関係者の大部分は生産コスト低減に意欲がある風じゃない。
海外富裕層相手の輸出なんていっても、数はしょぼそうだ。
結局、今のままでは供給過剰でダブダブになることが予想されます。稲作農家の全滅を防ぎ、さらに自立まで目論むには、これまで以上に供給を抑制しなければならない。
ただし、国が生産量を決めて割り当てるのではなく、稲作農家が自分の判断でこれ以上のコメは作らないという判断を下すべきだ、と。
需給見通しの情報は提供するが、その先は自分で判断してほしい。自分のコメが消費側にとってどれほどの価値のものかを正しく自覚して、売れる売れないの判断を各自で下すべきだ。
そして、過剰米が発生しても、自分たちの責任で処理してくれよ。「作る自由」と「作った責任」はセットですよ、と。
安倍総理の次の言葉からそう印象します。
40年以上続いた生産調整の見直しを行って、自らの経営判断で作物をつくれるようにする、そういう農業を実現してまいります。そして、食料安全保障に直結する麦・大豆、飼料用米の生産を振興します。
これからは、コメを食糧として特別扱いするつもりはない。
そんなメッセージが込められているような気もします。まあ、私の勝手な解釈ですが。
そして、転作補助金による生産者のリストラ。
ある程度の低コストでコメを作れる生産者、あるいは、すこしくらい高価でも需要がある食味、品質、個性のあるコメを作れる生産者、つまり主食用米の生産にメリットが有る生産者だけが縮小する主食用国産米市場に残る。
そうでない人は飼料用米などの生産へ。いずれはトウモロコシなど、コメ以外の飼料用作物へとシフトしてもらいたいのでは?
国産米の需要は少なくなるのだから、供給もそれに合わせて減らす。ただし、これまでのように稲作農家の軒数は維持したままで各自の作付け面積を減らすという方向ではなく、主食用稲作農家の数を減らしていくという方向への転換ということでしょうか。
稲作問題の本質は需要量に比して過剰な数の人間がぶら下がっていることだ、と考える立場からすれば、これはありかな?
もし、私が想像したような姿が目標であれば、そりゃハッキリとは言いづらい。ストレートに言うのは少し無体な、というか反発ありそうな感じで、モゴモゴと言葉を濁したくなるでしょう。
しかし、この飼料用米の補助金はいつまでつづくのでしょうか。生産者からみて、補助金貰って飼料米を作るより、もっと魅力的な作物が出てくればいいのですが。どうやって終いにするつもりなのか気になります。まさか、今後ウン十年も続かないとは思いますが・・・。
2013/11/16
関税撤廃よりもMA枠の拡大か?
最近、コメ周辺のニュースが多いですね。
TPP交渉、コメ関税ゼロ枠拡大 米要求で妥協案浮上 :日本経済新聞
だいぶ前ですが、このように指摘するツイートをみかけたのを思い出しました。
なるほど、関税撤廃した日本国内で国際価格並の水準で他の国々と競合するよりも、輸出量の増加は少しでも今の価格水準で売れる方がオイシイ。
つまり、高く売りつけることができる市場をみすみす壊すのは馬鹿らしい、アメリカの生産者も減反と関税で支えられた高価格の恩恵に与ろうぜってことじゃないかと。
そこまでは考え過ぎかもしれませんが、しかし日本の消費者は随分と蔑ろにされているなと思わせる提案です。
そういえば、生産調整の見直しも、実質的には減反強化ですらあるとの意見も出ています(戦後農政の大転換「減反廃止」は大手マスコミの大誤報――キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・山下一仁|DOL特別レポート|ダイヤモンド・オンライン)。
なんだかんだと関税による高米価維持(消費者負担)も、多額の補助金(納税者負担)も変わらないのか?そんな気にさせるニュースでした。
TPP交渉、コメ関税ゼロ枠拡大 米要求で妥協案浮上 :日本経済新聞
米国はこのほど日本に関税をなくす品目の割合を示す「自由化率」を100%にするように要求。日本が「関税全廃はありえない」と回答すると、米国はコメを高い関税で守る代償に輸入を義務づける「ミニマムアクセス(最低輸入量)米」の枠の拡大を求めてきた。ということです。
同米の輸入量は年約77万トン。2012年度の最大の輸入先は米国で36万トンだった。国別の輸入量は国内需要などをもとに政府が決める。国産米への影響を抑えるため、無税輸入米の大半は焼酎やみそなど加工用に販売しているが、米国は自国産のコメの輸入枠を拡大し、主食米として日本で販売するように要請。政府内で「コメの関税を守るためにはやむを得ない」との意見が浮上した。
だいぶ前ですが、このように指摘するツイートをみかけたのを思い出しました。
アメリカの本当の狙いは日本のコメ関税撤廃ではなく、SBSの増枠。なぜなら日本は現状、アメリカ米をSBSで国際価格の2倍以上(トン16万円)で買っている。関税撤廃したら国際価格(トン7万円)になってしまう。関税撤廃してアメリカ米が日本で2倍以上売れる保障はなく、また輸出力もない。
— 週刊ライスビジネス (@2258hikone) April 3, 2013
なるほど、関税撤廃した日本国内で国際価格並の水準で他の国々と競合するよりも、輸出量の増加は少しでも今の価格水準で売れる方がオイシイ。
つまり、高く売りつけることができる市場をみすみす壊すのは馬鹿らしい、アメリカの生産者も減反と関税で支えられた高価格の恩恵に与ろうぜってことじゃないかと。
そこまでは考え過ぎかもしれませんが、しかし日本の消費者は随分と蔑ろにされているなと思わせる提案です。
そういえば、生産調整の見直しも、実質的には減反強化ですらあるとの意見も出ています(戦後農政の大転換「減反廃止」は大手マスコミの大誤報――キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・山下一仁|DOL特別レポート|ダイヤモンド・オンライン)。
なんだかんだと関税による高米価維持(消費者負担)も、多額の補助金(納税者負担)も変わらないのか?そんな気にさせるニュースでした。
2013/11/09
飼料用米に補助金を厚くするらしい件について
減反廃止の議論が本格的になったのが先月の下旬、それからまだ半月くらいしか経っていません。しかし、具体的な内容が明らかになるにつれ、皆さん、変化への高揚感とか期待感などがだんだん薄れてきているのではないでしょうか?
当初、減反廃止がねらう効果とされていた、中小兼業農家の退出と大規模農家への集約、コストダウンによる価格低下と競争力向上などは、ちょっとズレてきたようにも感じられます。2013/11/09付西日本新聞朝刊の社説は、今回の減反廃止方針について、2003年改正食糧法以降の「戦後農政の大改革」と同様の頓挫を心配しつつ、
農地集約・大規模化よりも今回は農地の維持に力点が置かれている印象が強い。と分析しています。
東京新聞:減反補助 5000円に減額 来年度から4年間:政治(TOKYO Web)
しかし、10月末にでた農水省の案で転作奨励の補助金を厚くすることが入っていると知ったときは、なんとも違和感がありました(コメ生産量は「農家の判断で」 農水省の減反廃止案:朝日新聞デジタル)。
つい先日、三瀧商事の事件で加工用米が問題になったばかりです。制度により人為的につくられた一物多価は不正の起こるリスクを常にはらむ。転作奨励の補助金がインセンティブとして働くことで消費者無視の独りよがりな稲作を生み、歪められた需給バランスが消費をさらに低迷させる。
「新規需要米」って言葉、どこかに新しい需要が生じていてそれに対応するモノかのような印象を与えますが、どちらかといえば供給側の思惑があって後から無理に需要を作っているのが実際ではないかと。だいたい、最初から補助金付けて思いっきりダンピングしないと買ってもらえないという時点でおかしいでしょう?
そもそもこれ、いつ補助金外すんでしょうか?消費者の舌が慣れ切って、需要者もそれに合わせた設備につぎ込んだころ合いを見計らって補助金をはずすのでしょうか?
まさか、国がそんなヤクザみたいなことはしないでしょうが。
2013/11/07付け記事「減反廃止にカラクリ 補助金減らぬ恐れ :NQNスペシャル :マーケット :日本経済新聞」では、実は減反政策は変わらないとみる理由として次のように説きます。
転作支援については、前回の自民党政権が積極的に取り組み、12年度は52万件、総額2223億円が交付された。民主党の政策と従来の自民党の政策が併存している。結局は補助金も作付けも転作扱いの新規需要米に振り分けられるだけで、補助金総額は減らないし主食用の低価格化も起きないという予想です。
今回、廃止方向となったのは民主党政権が導入した補償制度で、転作支援の交付金については存続する。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は、「減反補償は従来どおりのため、(転作促進による)生産調整は維持される。その結果、米価も下がらない」と話す。
それだけではないという。山下氏によれば、現在、主食用米から米粉・飼料用米に転作した場合、農家にはその収入差として10アール当たり8万円を支給している。それに米粉・飼料用米の作付面積(6.8万ヘクタール)を掛けると、総額はおよそ550億円になる。
山下氏は、政府が仮に、この支給額を10万円に増やし、その効果で米粉・飼料用米の作付面積が20万ヘクタールに拡大した場合、補助金総額は2000億円に膨らみ、民主党の「戸別所得補償」分がそっくり転作支援に入れ替わるとみる。
一方、2013/11/06付けの「円滑な減反廃止は可能 荒幡克己 岐阜大学教授 :日本経済新聞」では、転作助成の維持と適切な経過措置によってソフトランディングが可能であるとされています。
減反問題の要諦は、農業部門内での資源配分にある。これまで、需給動向を軽視した高米価路線によるコメ有利の状況で、土地、人などの資源が稲作に偏り過ぎ、増産が必要な飼料作物などに仕向けられなかった。この意味では財政支出の削減を検討する際、コメが有利とならないようコメへの助成を削減し、稲の飼料用仕向けを含めた転作助成は維持するのが妥当である。コメ偏重農政のままでは、減反廃止への道は開けない。
減反廃止後、市場に任せると、農家の手取りは20%を超えて減少することが予想される(シナリオ1)。長期的に競争力強化を考えるならば、この米価下落に耐え得るコストダウンは実現してほしい。しかし、短期での大幅なコストダウンは限界がある。減反廃止の効果をいかに高めるかというよりも、いかにそのインパクトを和らげるかに関心が向いている記事です。ここでは減反廃止のプロセスの消化自体が関心の的です。
そこでコメへの助成自体にあらかじめ生産刺激の弱い方法を設定しておけば、廃止後の増産と価格暴落を抑制できる。価格下落分を補償するような不足払い(シナリオ2)は、生産刺激が強く財政負担が膨大となる。財政規律を重視すれば、一定額を支払う固定支払い(シナリオ3)とした上で、さらにデカップリング度を高めれば、同程度の農家手取り減でも大幅な財政節約が可能である(シナリオ4)。
余剰分を飼料用、加工用などに振り向け隔離することで、主食用米の価格下落を防ぐ。内外価格差の大きな関税なしのMA米の取り扱いと同じ発想ですね。実に農水省的発想による解決方法ではないでしょうか。
ただ、国・農水省が需要のあるコメ、商品を見極めるセンスに欠けているのが問題なのです。補助金付けて安くさせて、農林事務所から宣伝させれば大丈夫、くらいに考えているのかもしれませんが。しかし、この数年をみても判ることですが、変なインセンティブをつけて生産を誘導すると、需要側に必要なコメが足りなく、要らないコメが余りまくるという状態になります。
ところで、2013/11/05の林芳正農林水産大臣の会見でこのような発言がありました。
今、全体需要の大体3分の1が、まあ、こういう外食・中食向けと、まあ、こういうことでありますので、こういう需要に対応するために、やっぱり低コスト生産ということが一つありますし、それから、これに併せて、やはり、この実需者、こういう方々が求めている品質のコメを安定供給すると、こういうことが大事だと思っております。そのためにですね、26年度の予算概算要求ですが、いわゆるブランド米とは異なる品質や価格での供給が求められるですね、業務用米、加工用米の、まあ、生産コスト低減技術の実証と、それから、外食・中食業者や卸業者と、まあ、産地のマッチング、関係者の連携による産地づくり、安定取引の推進、まあ、等へのですね、支援を行うための予算を要求をしております。・・・・・・実需者と産地が一体となってですね、こういう中食・外食等のニーズに応じたコメを安定的に供給できる体制と、こういうものが、を構築を進めていきたいと、こういうふうに思っております。減反廃止の行方とは関係なしに是非、進めていただきたいことです。
2013/11/05
減反廃止の報道から思うこと 後編
前篇からの続きです。
まず、ほんとうに兼業農家が離農して主業農家へと農地が集まるのか。
例えば次の記事では、減反廃止での農地拡大を期待する大規模農家の声が紹介されています。
少なくとも高齢生産者のリタイアのきっかけにはなりそうです。しかし、主たる収入源は他にある壮年の兼業農家は補助金廃止や価格低下にも抵抗する体力があると見られます。コメづくりを趣味とか家の年中行事として捉えるなら赤字でも構わない。むしろ稲作を主な収入としている主業農家の方が先に参ってしまうのではないか、という意見です。現在でも販売農家に該当しないため経営安定所得対策の対象とはなっていない園芸農家による自家飯米や縁故米の生産は珍しくありません。
次の記事の説明はしっくりと来ます。
「兼業農家」と戦って勝てるわけがない ドラッカーで読み解く農業イノベーション(4):JBpress(日本ビジネスプレス)
また、こんな主張があります。
新浪ローソン社長の減反廃止論は先祖返り | コラム | JAcom 農業協同組合新聞
改革派のストーリーは楽観的で単純に過ぎるという批判は、以前より行われていました。しかし、批判に対する改革派からの回答は無いのでは?
大規模農家に分類されていても、米価下落+補助金カットに耐えられるほどのコストダウンの準備が現在既にできているところはそう多くないでしょう。今回の減反廃止スケジュールでは、コストダウンにより米価引下という順序ではなく、米価下落による淘汰の後に集約とコストダウンがくることになります。
もしかしたら、現時点で大規模稲作農家とされる農家も含めての淘汰、再編ということがすすんでいくのかもしれません。大規模優遇と言っても、その「大規模」の意味するところは現時点での大規模、例えば家族+αの労働力で数十ヘクタールを耕作とかのレベルとは桁が違うのかな?とも。今は自信たっぷりの大規模農家も、あっという間に大きな資本に飲み込まれていくかもしれません。同じ資本のショッピングモールやCVSが全国どこにでもあるように、同じ資本の農地が全国どこにでもある。農村のファスト風土化なんて杞憂ですかね?
集約することで生産性が高まるような農地は、既に集約されてしまっているという意見もあります。まとめることができる田んぼなんてものは、広い平坦地にある田んぼです。干拓地であったり、扇状地であったり。すでに数十haの大規模農家が存在しているような土地です。
中小零細農家が分散して作付けしているのは、国内農地の40%と言われる中山間地域の田んぼ。また、どうにも生きない田んぼから順に耕作放棄されているわけです。
もっとも、このような田んぼはコメではなく、もっと儲かる作物を、と考えられているのかもしれません。それならそれで生きた農地の利用となるのかな?
補助金による減反へのインセンティブが無くなったとしても、果たして大規模専業農家はフル作付けするのでしょうか?
現在でもコメは過剰なわけで、さらに供給量が増えるとすれば、売り切ることができるかどうか。リスクを負って作付けすることになります。かといって、価格が下がっているのならば量で補わなければならない。
農水省によるコメの需給見通しの発表は継続されるとのことですが、春の作付け時点では他の生産者の動向全ては読めるものじゃありません。
収入保険や先物によるヘッジで補えるのかもしれません。見方を変えれば、それらを活用できなければ稲作経営は困難になるのかもしれません。
例えば、農協。
食管制度の廃止以来、生産・販売に独自の努力を続けてきた単位農協がいくつもあります。一方、お役所気質のまんまの単協もあります。確実に、今以上の格差が生じるでしょう。そのとき、JAグループの結束は?
減反廃止後に過剰となるコメ。
これまで農家はJAに尻拭いをさせてきたわけです。民間や消費者に直売して、残りそうならJAに出す。JAもコメの過剰は重々承知していながら、生産者が持ってきたコメは受託する。むしろ売るのに苦労することがわかっていてもJAへの出荷を呼び掛ける。
しかし、一時的なことかもしれませんが、大量な過剰が予想されるわけです。そのとき、JAは今までどおりに売れないコメを受託するのか?しかし、皮肉にも、過剰なコメを抱えた生産者は、こんなときばかりJAをいいように利用しようとするのでは。
縁故米。
目論みどおりに中小零細農家が退場すれば、これまで流通していた縁故米が減っていくでしょう。その分、誰かの販売量が増える?
これまで好調といわれたコイン精米機の将来は?あるいは、縁故米消費者が慣れ親しんだ玄米30kgでの販売が増える?
政府の買い上げ。
なんか25年産の過剰米対策がどうのこうのと聞きますが・・・。減反廃止後にも政府買い上げでの過剰米対策なんて矛盾したことはしないで貰いたいものです。
古米とか古古米とか。
一般に現在のコメ流通では、収穫からさほど間を空けずに新米が出回ります。一般消費者向けはモチロン、業務用でも底辺クラスでなければ遅くても年内には新米へ切り替わります。
ところで、減反廃止以降は春先の作付の動向が不明瞭となるわけで、極端な余剰米が発生したり、あるいは足りなかったりということが起こりうるのでは、と思われます。現在のように誰もが気軽に新米を食べられるという状況が続くのかどうか。新米が食べられる、ということが贅沢になるのかもしれません。
と、いろいろ不安はありますが、減反廃止が必要なのは確か。カルテルの維持に税金を使うなんて、あり得ないでしょう!
ただ、もっと早い時点での廃止、本質的な改革が行われていれば、と悔みます。本質的な改革から逃げ、継ぎ接ぎ、継ぎ接ぎでその場しのぎの対応を重ねた結果、糸はもつれにもつれ、いざ改革となると複雑すぎて・・・。
遡れば、間違いの始まりは農地改革でしょうか。それから数えれば半世紀以上、小手先ではない改革になること、有意義な改革になることを、切に願います。
減反廃止の効果についての是非
大規模化、コスト低減、競争力強化という目標の是非についてパスしたとしても、では果たして減反廃止によってこれらが実現するのかどうか、です。まず、ほんとうに兼業農家が離農して主業農家へと農地が集まるのか。
例えば次の記事では、減反廃止での農地拡大を期待する大規模農家の声が紹介されています。
一方、80ヘクタールの田んぼを抱える沼南ファーム(千葉県柏市)の橋本英介取締役は「補助金が減れば、兼業農家が農地を手放すはず。大規模農家にとっては農地を広げるチャンスになる」と農政の転換を歓迎する。大潟村あきたこまち生産者協会(秋田県大潟村)の涌井徹代表も「減反見直しは当然。補助金は加工技術や新用途の開発に使うべきだ」と期待を込めている。
減反見直しで競争へ一歩 農政、大規模経営に軸足 :日本経済新聞
少なくとも高齢生産者のリタイアのきっかけにはなりそうです。しかし、主たる収入源は他にある壮年の兼業農家は補助金廃止や価格低下にも抵抗する体力があると見られます。コメづくりを趣味とか家の年中行事として捉えるなら赤字でも構わない。むしろ稲作を主な収入としている主業農家の方が先に参ってしまうのではないか、という意見です。現在でも販売農家に該当しないため経営安定所得対策の対象とはなっていない園芸農家による自家飯米や縁故米の生産は珍しくありません。
次の記事の説明はしっくりと来ます。
「兼業農家」と戦って勝てるわけがない ドラッカーで読み解く農業イノベーション(4):JBpress(日本ビジネスプレス)
また、こんな主張があります。
新浪ローソン社長の減反廃止論は先祖返り | コラム | JAcom 農業協同組合新聞
改革派のストーリーは楽観的で単純に過ぎるという批判は、以前より行われていました。しかし、批判に対する改革派からの回答は無いのでは?
大規模農家に分類されていても、米価下落+補助金カットに耐えられるほどのコストダウンの準備が現在既にできているところはそう多くないでしょう。今回の減反廃止スケジュールでは、コストダウンにより米価引下という順序ではなく、米価下落による淘汰の後に集約とコストダウンがくることになります。
もしかしたら、現時点で大規模稲作農家とされる農家も含めての淘汰、再編ということがすすんでいくのかもしれません。大規模優遇と言っても、その「大規模」の意味するところは現時点での大規模、例えば家族+αの労働力で数十ヘクタールを耕作とかのレベルとは桁が違うのかな?とも。今は自信たっぷりの大規模農家も、あっという間に大きな資本に飲み込まれていくかもしれません。同じ資本のショッピングモールやCVSが全国どこにでもあるように、同じ資本の農地が全国どこにでもある。農村のファスト風土化なんて杞憂ですかね?
集約することで生産性が高まるような農地は、既に集約されてしまっているという意見もあります。まとめることができる田んぼなんてものは、広い平坦地にある田んぼです。干拓地であったり、扇状地であったり。すでに数十haの大規模農家が存在しているような土地です。
中小零細農家が分散して作付けしているのは、国内農地の40%と言われる中山間地域の田んぼ。また、どうにも生きない田んぼから順に耕作放棄されているわけです。
もっとも、このような田んぼはコメではなく、もっと儲かる作物を、と考えられているのかもしれません。それならそれで生きた農地の利用となるのかな?
補助金による減反へのインセンティブが無くなったとしても、果たして大規模専業農家はフル作付けするのでしょうか?
現在でもコメは過剰なわけで、さらに供給量が増えるとすれば、売り切ることができるかどうか。リスクを負って作付けすることになります。かといって、価格が下がっているのならば量で補わなければならない。
農水省によるコメの需給見通しの発表は継続されるとのことですが、春の作付け時点では他の生産者の動向全ては読めるものじゃありません。
収入保険や先物によるヘッジで補えるのかもしれません。見方を変えれば、それらを活用できなければ稲作経営は困難になるのかもしれません。
今後の不安
しかし、実際どうなるのか。私には全く分かりません。例えば、農協。
食管制度の廃止以来、生産・販売に独自の努力を続けてきた単位農協がいくつもあります。一方、お役所気質のまんまの単協もあります。確実に、今以上の格差が生じるでしょう。そのとき、JAグループの結束は?
減反廃止後に過剰となるコメ。
これまで農家はJAに尻拭いをさせてきたわけです。民間や消費者に直売して、残りそうならJAに出す。JAもコメの過剰は重々承知していながら、生産者が持ってきたコメは受託する。むしろ売るのに苦労することがわかっていてもJAへの出荷を呼び掛ける。
しかし、一時的なことかもしれませんが、大量な過剰が予想されるわけです。そのとき、JAは今までどおりに売れないコメを受託するのか?しかし、皮肉にも、過剰なコメを抱えた生産者は、こんなときばかりJAをいいように利用しようとするのでは。
縁故米。
目論みどおりに中小零細農家が退場すれば、これまで流通していた縁故米が減っていくでしょう。その分、誰かの販売量が増える?
これまで好調といわれたコイン精米機の将来は?あるいは、縁故米消費者が慣れ親しんだ玄米30kgでの販売が増える?
政府の買い上げ。
なんか25年産の過剰米対策がどうのこうのと聞きますが・・・。減反廃止後にも政府買い上げでの過剰米対策なんて矛盾したことはしないで貰いたいものです。
古米とか古古米とか。
一般に現在のコメ流通では、収穫からさほど間を空けずに新米が出回ります。一般消費者向けはモチロン、業務用でも底辺クラスでなければ遅くても年内には新米へ切り替わります。
ところで、減反廃止以降は春先の作付の動向が不明瞭となるわけで、極端な余剰米が発生したり、あるいは足りなかったりということが起こりうるのでは、と思われます。現在のように誰もが気軽に新米を食べられるという状況が続くのかどうか。新米が食べられる、ということが贅沢になるのかもしれません。
と、いろいろ不安はありますが、減反廃止が必要なのは確か。カルテルの維持に税金を使うなんて、あり得ないでしょう!
ただ、もっと早い時点での廃止、本質的な改革が行われていれば、と悔みます。本質的な改革から逃げ、継ぎ接ぎ、継ぎ接ぎでその場しのぎの対応を重ねた結果、糸はもつれにもつれ、いざ改革となると複雑すぎて・・・。
遡れば、間違いの始まりは農地改革でしょうか。それから数えれば半世紀以上、小手先ではない改革になること、有意義な改革になることを、切に願います。
追補
2013年11月6日付日本経済新聞「円滑な減反廃止は可能 荒幡克己 岐阜大学教授」では、コメ偏重を改め稲作と転作の相対的収益性を是正し、デカップリングを高めた経過措置を適切にすることで円滑な減反廃止は可能だと語られます。
このようなシュミレーションが出ることで、いろいろ見通しがしやすくなりますね。
このようなシュミレーションが出ることで、いろいろ見通しがしやすくなりますね。
減反廃止の報道から思うこと 前篇
2013年10月24日の産業競争力会議の農業分科会から、数年程度先の減反廃止の検討および来年度からの交付金の見直しが本格的に始まりました。
「減反」見直し着手、補助金削減も検討 TPPにらみ分科会 - SankeiBiz(サンケイビズ)
これまでのところ報道された案はこのような感じ。
11月末には政府方針がまとめられるとのこと。いつかは外されることが必至であるハシゴですが、ここにきて一気に現実的になってきました。一般の関心も高いようです。
この減反廃止・補助金見直しですが、二つの段階に世間の議論があります。
一つ目は、政府、産業競争力会議の目指す農業のあり方についての是非。そもそも、大規模農家に集約し、生産性を高め、国外のコメに対する競争力を強化するという、政府が掲げる目標自体がどうなのかという議論です。
二つ目は、仮に大規模農家へ集約、生産性アップを目指すとして、減反廃止という手段が適しているかの議論です。減反廃止、補助金の縮小~廃止、中山間地は別途支援、加工用・飼料用米は手厚く保護といった政策で、果たして、大規模かつ優秀な専業農家が輝き、兼業農家が退場していくのか?世界に誇れる優れた品質のコメ、世界で通用する価格のコメが生産されるようになるのか?が懸念されているのです。
まず、この方針を小農切り捨てと捉えて反対する立場があります。
この発想は、あくまでも「農業保護<農村社会の維持」というスタンスと思われます。農村社会の維持存続のために、農業支援があり、兼業収入確保のために工場等の企業誘致があり、という考え方。改革派が食料安全保障や多面的機能の確保のために農業保護の必要があると考えるのに対して、順番が逆になっています。
農林族議員やJA、左翼言論人に多い考え方だと思われます。
例えば、
岩手日報・論説 2019/10/29「減反廃止検討 小規模農家切り捨てか」
とか
「自民党の減反廃止は、小規模農家切り捨てで1戸当たり所得倍増ということだろう」民主党代表が解説 - 国会傍聴記by下町の太陽 宮崎信行
あるいは短期間で結論を出すことの拙速さを懸念する意見もあります。
社説:減反見直し 一連の議論、仕切り直せ|さきがけonTheWeb
また、そもそも日本国内ではいくら大規模化してもコスト低減には限度がある、オーストラリアやアメリカと同じレベルには成りえないと、大規模化の意義を疑問視する立場があります。
米豪レベルに広大な農地は造れません。日本だと一軒で数十ヘクタールの田んぼを持っていれば結構な大規模農家です。それも干拓地でもない限り結構分散しているし、1枚1枚の面積も数十アールならまだ広い方。移動や農機の出し入れにかかる手間も米豪の比ではない。
稲作は10haくらいで規模拡大によるコストダウンは限界だともいわれています。
さらに、国内の耕地面積の40%は中山間地。棚田に限らずとも1枚1枚が小さいうえに、形も三角形やら台形だったり、妙に細長かったり。そのような農地を集約しても大したコスト低減はできないでしょう。
ただ、集約されるのは農地ではなく農家、ということです。
国内の農地は決して過剰ではないし、輸入分を除いて考慮すれば食料生産能力も決して十分とは言えない。一方、労働力としての稲作農家数は実は過剰ということ。稲作では食えないから兼業するのではなく、農業界には稲作農家全てを食わせるほどの労働需要がないということです。専業なら1人でできる作業に10人も20人もが群がる。だから兼業で充分出来るし、コストも高くなる。一方、意欲的な若い人材は、そのような中途半端な場所に身を置きたいとは思わないはず。この現状を変えていくのが大事です。
集約の意味するところは、農地集積によるコストダウンよりも、農業界の人材リストラによる効率化でしょうか。
さらに、大企業が減反廃止に熱心であることに対する不信があります。
産業競争力会議で減反の廃止を提言したのはローソン最高経営責任者の新浪剛史氏です。言うまでもなくコンビニはおにぎり、弁当類を多く販売しており、コメの生産現場を押さえることは経営に有利であると想像されます。この参入をしやすくする、そして今まで100万軒以上の農家に分散されていた補助金等を新たな利権集団が奪い取るための減反廃止だ、と。
結局、税金を吸い上げるのが農家から一部民間企業に変わるだけのことで、それにしては破壊されるものが大きすぎるという見解です。
ところで、米屋としての私が気になるのは、中山間地の稲作。
中山間地には直接支払いによる支援が提案されているようですが、今のところ内容は不明。そもそも農地の40%を占める中山間地、そのうちどこをどう支援していくのか、有意義な内容なのか?
まあ、安倍首相のお好きな、地元選挙区内にある山口県長門市油谷の棚田などは何か支援が出るかもしれませんが。でも、油谷みたいに魅せるロケーションを持たない中山間地は?
むしろ、地味でなんの変哲もない中山間地にこそ、美味いコメを作る人がいたりするんですよね。押しつけがましい思想だとか、大上段に構えた哲学とか、ハッタリ臭い商品化やら表面だけのブランド化なんかとは無縁の、ただ淡々と研鑽し栽培し、JAや民間業者に出荷する生産者。美味いコメの生産者ってのはそんな中にいる、というのが私の実感です。商売っ気ばかりが先に立った胡散臭い生産者が悪貨のごとくに振る舞い、これら良貨のような生産者を駆逐しやしないか、という懸念を私は強く持っています。
「減反」見直し着手、補助金削減も検討 TPPにらみ分科会 - SankeiBiz(サンケイビズ)
これまでのところ報道された案はこのような感じ。
- 大規模農家を支援(認定農業者限定?)
- 中山間地は直接支払いで支援?
- 価格下落に備えた収入保険を導入?
- 経営所得安定対策の固定部分、来年度には1/2~1/3に削減?
- 同対策の変動部分は来年度から廃止?
- 飼料用米は奨励、収量に応じて補助金支給?
11月末には政府方針がまとめられるとのこと。いつかは外されることが必至であるハシゴですが、ここにきて一気に現実的になってきました。一般の関心も高いようです。
この減反廃止・補助金見直しですが、二つの段階に世間の議論があります。
一つ目は、政府、産業競争力会議の目指す農業のあり方についての是非。そもそも、大規模農家に集約し、生産性を高め、国外のコメに対する競争力を強化するという、政府が掲げる目標自体がどうなのかという議論です。
二つ目は、仮に大規模農家へ集約、生産性アップを目指すとして、減反廃止という手段が適しているかの議論です。減反廃止、補助金の縮小~廃止、中山間地は別途支援、加工用・飼料用米は手厚く保護といった政策で、果たして、大規模かつ優秀な専業農家が輝き、兼業農家が退場していくのか?世界に誇れる優れた品質のコメ、世界で通用する価格のコメが生産されるようになるのか?が懸念されているのです。
大規模化促進の是非
減反を廃止すれば、大規模農家への集約 → コストダウン → 生産性向上がおこり、コメの価格も下がる。価格が下がれば国内消費量も増えるし、海外のコメとも張り合えるようになり、関税の撤廃や輸出も可能となる。かねてより山下一仁氏などの改革派が主張していたストーリーがそのまま今回の政府・与党の検討案となっています。まず、この方針を小農切り捨てと捉えて反対する立場があります。
この発想は、あくまでも「農業保護<農村社会の維持」というスタンスと思われます。農村社会の維持存続のために、農業支援があり、兼業収入確保のために工場等の企業誘致があり、という考え方。改革派が食料安全保障や多面的機能の確保のために農業保護の必要があると考えるのに対して、順番が逆になっています。
農林族議員やJA、左翼言論人に多い考え方だと思われます。
例えば、
岩手日報・論説 2019/10/29「減反廃止検討 小規模農家切り捨てか」
とか
「自民党の減反廃止は、小規模農家切り捨てで1戸当たり所得倍増ということだろう」民主党代表が解説 - 国会傍聴記by下町の太陽 宮崎信行
あるいは短期間で結論を出すことの拙速さを懸念する意見もあります。
社説:減反見直し 一連の議論、仕切り直せ|さきがけonTheWeb
また、そもそも日本国内ではいくら大規模化してもコスト低減には限度がある、オーストラリアやアメリカと同じレベルには成りえないと、大規模化の意義を疑問視する立場があります。
米豪レベルに広大な農地は造れません。日本だと一軒で数十ヘクタールの田んぼを持っていれば結構な大規模農家です。それも干拓地でもない限り結構分散しているし、1枚1枚の面積も数十アールならまだ広い方。移動や農機の出し入れにかかる手間も米豪の比ではない。
稲作は10haくらいで規模拡大によるコストダウンは限界だともいわれています。
さらに、国内の耕地面積の40%は中山間地。棚田に限らずとも1枚1枚が小さいうえに、形も三角形やら台形だったり、妙に細長かったり。そのような農地を集約しても大したコスト低減はできないでしょう。
ただ、集約されるのは農地ではなく農家、ということです。
国内の農地は決して過剰ではないし、輸入分を除いて考慮すれば食料生産能力も決して十分とは言えない。一方、労働力としての稲作農家数は実は過剰ということ。稲作では食えないから兼業するのではなく、農業界には稲作農家全てを食わせるほどの労働需要がないということです。専業なら1人でできる作業に10人も20人もが群がる。だから兼業で充分出来るし、コストも高くなる。一方、意欲的な若い人材は、そのような中途半端な場所に身を置きたいとは思わないはず。この現状を変えていくのが大事です。
集約の意味するところは、農地集積によるコストダウンよりも、農業界の人材リストラによる効率化でしょうか。
さらに、大企業が減反廃止に熱心であることに対する不信があります。
産業競争力会議で減反の廃止を提言したのはローソン最高経営責任者の新浪剛史氏です。言うまでもなくコンビニはおにぎり、弁当類を多く販売しており、コメの生産現場を押さえることは経営に有利であると想像されます。この参入をしやすくする、そして今まで100万軒以上の農家に分散されていた補助金等を新たな利権集団が奪い取るための減反廃止だ、と。
結局、税金を吸い上げるのが農家から一部民間企業に変わるだけのことで、それにしては破壊されるものが大きすぎるという見解です。
ところで、米屋としての私が気になるのは、中山間地の稲作。
中山間地には直接支払いによる支援が提案されているようですが、今のところ内容は不明。そもそも農地の40%を占める中山間地、そのうちどこをどう支援していくのか、有意義な内容なのか?
まあ、安倍首相のお好きな、地元選挙区内にある山口県長門市油谷の棚田などは何か支援が出るかもしれませんが。でも、油谷みたいに魅せるロケーションを持たない中山間地は?
むしろ、地味でなんの変哲もない中山間地にこそ、美味いコメを作る人がいたりするんですよね。押しつけがましい思想だとか、大上段に構えた哲学とか、ハッタリ臭い商品化やら表面だけのブランド化なんかとは無縁の、ただ淡々と研鑽し栽培し、JAや民間業者に出荷する生産者。美味いコメの生産者ってのはそんな中にいる、というのが私の実感です。商売っ気ばかりが先に立った胡散臭い生産者が悪貨のごとくに振る舞い、これら良貨のような生産者を駆逐しやしないか、という懸念を私は強く持っています。
「コメ減反の見直し 農家と農村守れるのか - 社説 - 中国新聞」
「コメ減反見直し 中山間地を置き去りにするな | 社説 | 愛媛新聞ONLINE」
「社説:減反見直し 一連の議論、仕切り直せ|さきがけonTheWeb」
「南日本新聞 - 社説 : [減反見直し] あまりにも乱暴すぎる」
あと、こういう意見もありますが・・・、申し訳ないですが、私には下記のこれら主張は単なるノイズとしか評価できません・・・
10月28日(月) 苛酷なスクラップ・アンド・ビルドが始まろうとしている:五十嵐仁の転成仁語:So-netブログ
自民党の農業潰しがいよいよ露骨になった - 弁護士 猪野 亨のブログ
長いので一旦切ります。
つづきはこちら。
「コメ減反見直し 中山間地を置き去りにするな | 社説 | 愛媛新聞ONLINE」
「社説:減反見直し 一連の議論、仕切り直せ|さきがけonTheWeb」
「南日本新聞 - 社説 : [減反見直し] あまりにも乱暴すぎる」
あと、こういう意見もありますが・・・、申し訳ないですが、私には下記のこれら主張は単なるノイズとしか評価できません・・・
10月28日(月) 苛酷なスクラップ・アンド・ビルドが始まろうとしている:五十嵐仁の転成仁語:So-netブログ
自民党の農業潰しがいよいよ露骨になった - 弁護士 猪野 亨のブログ
長いので一旦切ります。
つづきはこちら。
2013/10/17
イオン・三瀧商事偽装事件であれこれ考える
イオングループで販売された弁当などで、「国産米」の表示に関わらず中国産米が使用されていた事件。
量の多さや期間の長さだけでなく、こんな時代錯誤で幼稚でふてぶてしい不正がイオンのような全国的に名の知られた場所で行われていたという点にも驚愕します。
その後、三瀧商事は加工用米を主食用へ転用していたこと、業務用納品だけでなく小売店で販売される袋詰精米商品にも混入していたこと、取引先や関連会社などに偽装の協力をさせていたことなどが報じられました。
三瀧商事の偽装は2005年から行われていたとのこと。それから今に至るまでの間、2008年に三笠フーズの事故米不正転売が発覚し、2010年から米トレーサビリティ法が施行されているのにです。
さらに、この事件に関連した記事「『中国猛毒米』偽装 イオンの大罪を暴く」が掲載された週刊文春2013年10/17号
がイオン系列の売り場から撤去される、なんてことも。
朝日新聞デジタル:イオン、週刊文春を撤去 偽装米問題で「誤解与える」 - 社会
この事件、そしてこれをめぐる報道やネット上の意見をみていると、つぎつぎとコメの世界が抱える問題が浮かんできます。
まあ、なんと2005年から不正をしていたとのことで震災以降の高騰とは関係はなさそうです。が、それでも当時の相場からしておかしくない価格だったのか?
コメの価格というのは国内産でマトモな品物なら、ずば抜けて安いものなんてあり得ません。けっこう出来の悪い酷いコメでも、そこそこの値段します。理由もなく安いモノなんてない。これはJAグループの力ですね。逆にいいコメでも、メチャクチャな価格差があるわけじゃない。
もし、あるラインを越えて安く仕入れたいなら、かつ国内産という条件をはずさないなら、くず米・砕米・未熟粒等の混入を我慢するか、あるいはスーパーでの売れ残りや返品されたもの、精米から時間が経ったものを受け入れるか。いわゆる「捨て場」になるということ。
低価格でなおかつ、品質はおにぎりに使用できる程度にそこそこで、というのであれば外国産とならざるを得ないでしょう。
品質がよくて、安くて、国内産というのは無いものねだりというものです。どこかで無理をすれば道理が引っ込むことになる。
ある程度の規模でやってる企業のバイヤーならそんなこと知らないはずはないし、もし本当に知らなかったとしたらそれも問題でしょう。
まあ、今回の事件での納入価格や要求されていた品質について、具体的で確たる情報がないので、この点については何とも言えません。ただ、スーパーや食品工場からの要求には、価格に限らず無茶が多いことはよく耳にします。配送や搗精の時間を考えれば物理的に無理な精米日を指定されたり、店内でネズミに齧られた商品を返品してきたり。このあたりの事情を掘り下げ公にしないと、この手の事件は無くならないでしょう。
ちなみに、週刊文春10月17日号の記事には米流通業者の発言としてこんなことが書かれています。
PB商品については販売者が100%品質に責任を持つからメーカー名は記載しないという見識については、これはありだと思います。
それが嫌な人、つまりメーカーや製造された国や地域がわからないのは嫌だという人は記載のない商品を買わなければいいのですから、記載しないことを批判するのは筋違いだと思います。
ただ、
「イオンのお米は、独自の抜き取り検査で検査済み」
というのはどういう内容の検査なんでしょうかね。
まあ、「安全」とか「安心」を安易に軽々しく売り口上にする輩は大抵が胡散臭いというのが相場ではありますが。
そして今回、自らも被害者であるようなコメントを出していたのにはゲンナリしました。
もうひとつ気になるのが、イオンのプレスリリースが出たのが9月25日、その後ツイッターなどでちらほら話題になっていたのですが、マスコミが本格的に取り上げるまでに数日間のタイムラグがあったこと。現時点でも、規模からしてもっと騒がれてもおかしくない事件なのですが。
誤解する人もいるのですが、加工用というのは菓子など加工食品の原料用という意味であって、肥料や工業製品の原料用ということではありません。食品としての安全性が問題なのではありません。
何が問題かといえば、カネです。加工用米というのは、その作付けについては加工用途に限定して出荷すると生産者が申請することで10aあたり2万円の補助金を受けたものです。その補助金を原資としてダンピングすることで、小麦粉やその他海外からの原料に対する競争力をもたせ消費量を増やそうということです。あくまで加工用として補助金が出されたものを転用し、低価格の恩恵を不正に享受しようとするのですから、これは消費者に対する罪というより、納税者に対する罪です。
勘違いした人もときどきいますが、未検査米を販売したり、食材として使用することになんの問題もありません。ただ、一般消費者向けに品種や産年を記載して販売することは出来ないというだけです(以前は原産国以上の詳細な産地も記載出来なかったのですが、米トレサ法との関係で逆に積極的に記載が求められるようにすらなりました。この辺りのその場しのぎにつぎはぎしたルールがこの業界を複雑でわかりにくいものにしています。浅はかな理解に基づいて思いつきでモノを言うような人たちの声が大きいのも問題でしょう。)。
未検査米には、生産者が品質に自信があり銘柄に頼る必要がなかったり、JA以外に充分な量の直接取引先があったり、業務用需要と結び付いていてJAS表示の必要がなく、わざわざ検査受ける意味がないというポジティブなケースと、JAに出せないくらいの粗悪なものだったり、無知な消費者からぼったくるだけの生産者直売だったりの質の悪いケースとがあり、未検査米という括りだけで内容を判断することはできません。
2005年以降ずっと中国産・米国産米を使用していたが、トレサ法以前は伝票での産地伝達義務も、おにぎりや弁当に原産国を表示する義務もなかったので措置の対象外、ということでしょうか。
トレサ法施行以前、イオンや炊飯業者は原料米の産地など内容についてどう認識していたのか?トレサ法の前後で取引条件等は同じだったのか?なども知りたいところです。
そもそも、SBS米(中国米・米国米)を精米として販売したり、おにぎり、弁当に使用したり、飲食店で提供すること、それ自体はなんら罪ではありません。「この単価でそこそこの品質を要求するならば中国米しかない!」旨をキチンと伝えて、そう表示して納入するべきなのです。
問題なのは、堂々と原産国名を表示せずに、国内産であると小狡く嘘をついていたことです。
しかし、あくまで三瀧商事の罪は、虚偽の表示をしたこと、加工用米転用により結果として補助金を不正に利得し食糧たるコメの需給安定を妨害した点にあります。
たしかに中国産農産物の重金属汚染や農薬のずさんな使用は伝え聞くところですし、実際有害であることが発覚した例もあります。しかし、だからといって今回使用されたコメが有毒であったという事実があったのか?
当然に、中国の生産現場に関する伝聞や過去の事件からリスクを避けたいという消費者の意思は尊重されなければなりません。現にこのような事件を起こした企業、下請けの偽装を見抜けなかった企業がいくら安全を請け負っても信用しにくいのは確かです。また、偏見や思想・信条に起因するものであっても特定の原産国のものを買いたくない、食べたくないという意思は同様に尊重されるべきです。それを、虚偽表示で蔑ろにすることは許されない行為です。
が、今回の事件を中国産を使ったからダメだ、安全や健康を脅かされたという風にしては問題がわかりにくくなります。さらに食品は国産だったら即ち安全だという安易な雰囲気を助長しかねません。
ある程度の価格を割り込んでくると、やはり外国産米の方がコストパフォーマンスに優れていると言えるでしょう。国内産ならば、中米、くず米、端米、売れ残り処分品などの価格帯でも外国産ならまともな整粒だったり。
また、加工用と言ってもあくまで制度上の区分で、必ずしもモノが違うわけではない。もちろん加工用として適性がすぐれた品種が作付けされる場合も多いでしょうが、主食用に一般的に使われる品種でも加工用として申請、作付けされれば加工用。税金から補助金つけてダンピングの原資にして加工用原料の国産シェアを上げましょうという発想のもの。
コメ業界以外では一般的な議論に上がりにくい問題ですが、根深い問題です。
その後、三瀧商事は加工用米を主食用へ転用していたこと、業務用納品だけでなく小売店で販売される袋詰精米商品にも混入していたこと、取引先や関連会社などに偽装の協力をさせていたことなどが報じられました。
三瀧商事の偽装は2005年から行われていたとのこと。それから今に至るまでの間、2008年に三笠フーズの事故米不正転売が発覚し、2010年から米トレーサビリティ法が施行されているのにです。
さらに、この事件に関連した記事「『中国猛毒米』偽装 イオンの大罪を暴く」が掲載された週刊文春2013年10/17号
朝日新聞デジタル:イオン、週刊文春を撤去 偽装米問題で「誤解与える」 - 社会
この事件、そしてこれをめぐる報道やネット上の意見をみていると、つぎつぎとコメの世界が抱える問題が浮かんできます。
納入価格など
さて、当初このニュースを知った時、まず思ったのは「果たして納入価格はいくらだったのだろう?」ということです。まあ、なんと2005年から不正をしていたとのことで震災以降の高騰とは関係はなさそうです。が、それでも当時の相場からしておかしくない価格だったのか?
コメの価格というのは国内産でマトモな品物なら、ずば抜けて安いものなんてあり得ません。けっこう出来の悪い酷いコメでも、そこそこの値段します。理由もなく安いモノなんてない。これはJAグループの力ですね。逆にいいコメでも、メチャクチャな価格差があるわけじゃない。
もし、あるラインを越えて安く仕入れたいなら、かつ国内産という条件をはずさないなら、くず米・砕米・未熟粒等の混入を我慢するか、あるいはスーパーでの売れ残りや返品されたもの、精米から時間が経ったものを受け入れるか。いわゆる「捨て場」になるということ。
低価格でなおかつ、品質はおにぎりに使用できる程度にそこそこで、というのであれば外国産とならざるを得ないでしょう。
品質がよくて、安くて、国内産というのは無いものねだりというものです。どこかで無理をすれば道理が引っ込むことになる。
ある程度の規模でやってる企業のバイヤーならそんなこと知らないはずはないし、もし本当に知らなかったとしたらそれも問題でしょう。
まあ、今回の事件での納入価格や要求されていた品質について、具体的で確たる情報がないので、この点については何とも言えません。ただ、スーパーや食品工場からの要求には、価格に限らず無茶が多いことはよく耳にします。配送や搗精の時間を考えれば物理的に無理な精米日を指定されたり、店内でネズミに齧られた商品を返品してきたり。このあたりの事情を掘り下げ公にしないと、この手の事件は無くならないでしょう。
ちなみに、週刊文春10月17日号の記事には米流通業者の発言としてこんなことが書かれています。
「通常、コシヒカリの新米は一キロ三百円ほどの卸値で取引されます。しかし、イオンは『一キロあたり二百円のコシヒカリを持ってこい』というような要求を平気で言う。キロ二百円台のコシヒカリなど、あり得ません。精米や物流にかかるコストを計算すると、そんな値段で入れられるはずがない。だから、我々はイオンの求める値段では不可能とすぐ分かる。
・・・」(週刊文春10月17日号36ページ)
販売店の責任
イオン「品質について100%責任を持ちます」トップバリュー弁当の国産米表示 → 中国産米の混入が発覚 - NAVER まとめPB商品については販売者が100%品質に責任を持つからメーカー名は記載しないという見識については、これはありだと思います。
それが嫌な人、つまりメーカーや製造された国や地域がわからないのは嫌だという人は記載のない商品を買わなければいいのですから、記載しないことを批判するのは筋違いだと思います。
ただ、
「イオンのお米は、独自の抜き取り検査で検査済み」
というのはどういう内容の検査なんでしょうかね。
まあ、「安全」とか「安心」を安易に軽々しく売り口上にする輩は大抵が胡散臭いというのが相場ではありますが。
そして今回、自らも被害者であるようなコメントを出していたのにはゲンナリしました。
もうひとつ気になるのが、イオンのプレスリリースが出たのが9月25日、その後ツイッターなどでちらほら話題になっていたのですが、マスコミが本格的に取り上げるまでに数日間のタイムラグがあったこと。現時点でも、規模からしてもっと騒がれてもおかしくない事件なのですが。
加工用
原産国の偽装だけでなく、加工用の転用もあったようです。誤解する人もいるのですが、加工用というのは菓子など加工食品の原料用という意味であって、肥料や工業製品の原料用ということではありません。食品としての安全性が問題なのではありません。
何が問題かといえば、カネです。加工用米というのは、その作付けについては加工用途に限定して出荷すると生産者が申請することで10aあたり2万円の補助金を受けたものです。その補助金を原資としてダンピングすることで、小麦粉やその他海外からの原料に対する競争力をもたせ消費量を増やそうということです。あくまで加工用として補助金が出されたものを転用し、低価格の恩恵を不正に享受しようとするのですから、これは消費者に対する罪というより、納税者に対する罪です。
未検査米
未検査米というのは農産物検査を受けていないコメというだけのことです。そもそも農産物検査は、放射性物質の検査でもなければ、残留農薬の検査でも、重金属の検査でもありません。産地、品種、産年、等級を確認するだけのもので、食品としての安全性をみる検査ではありません。勘違いした人もときどきいますが、未検査米を販売したり、食材として使用することになんの問題もありません。ただ、一般消費者向けに品種や産年を記載して販売することは出来ないというだけです(以前は原産国以上の詳細な産地も記載出来なかったのですが、米トレサ法との関係で逆に積極的に記載が求められるようにすらなりました。この辺りのその場しのぎにつぎはぎしたルールがこの業界を複雑でわかりにくいものにしています。浅はかな理解に基づいて思いつきでモノを言うような人たちの声が大きいのも問題でしょう。)。
未検査米には、生産者が品質に自信があり銘柄に頼る必要がなかったり、JA以外に充分な量の直接取引先があったり、業務用需要と結び付いていてJAS表示の必要がなく、わざわざ検査受ける意味がないというポジティブなケースと、JAに出せないくらいの粗悪なものだったり、無知な消費者からぼったくるだけの生産者直売だったりの質の悪いケースとがあり、未検査米という括りだけで内容を判断することはできません。
米トレサ法
報道では2010年に米トレサ法が施行される以前の2005年からこのようなことは継続されていたそうです。しかし農水省のプレスリリースでは平成22年(2010年)10月以降の販売分が偽装であったとなっています。2005年以降ずっと中国産・米国産米を使用していたが、トレサ法以前は伝票での産地伝達義務も、おにぎりや弁当に原産国を表示する義務もなかったので措置の対象外、ということでしょうか。
トレサ法施行以前、イオンや炊飯業者は原料米の産地など内容についてどう認識していたのか?トレサ法の前後で取引条件等は同じだったのか?なども知りたいところです。
そもそも、SBS米(中国米・米国米)を精米として販売したり、おにぎり、弁当に使用したり、飲食店で提供すること、それ自体はなんら罪ではありません。「この単価でそこそこの品質を要求するならば中国米しかない!」旨をキチンと伝えて、そう表示して納入するべきなのです。
問題なのは、堂々と原産国名を表示せずに、国内産であると小狡く嘘をついていたことです。
安全とは?中国だからだめなのか?
ところで、今回ネットなどで目についたのは、「中国産の毒米を食べさせられた!」という発言。イオンが棚からはずした週刊文春の記事も「中国猛毒米偽装」とタイトルされたものでした。しかし、あくまで三瀧商事の罪は、虚偽の表示をしたこと、加工用米転用により結果として補助金を不正に利得し食糧たるコメの需給安定を妨害した点にあります。
たしかに中国産農産物の重金属汚染や農薬のずさんな使用は伝え聞くところですし、実際有害であることが発覚した例もあります。しかし、だからといって今回使用されたコメが有毒であったという事実があったのか?
当然に、中国の生産現場に関する伝聞や過去の事件からリスクを避けたいという消費者の意思は尊重されなければなりません。現にこのような事件を起こした企業、下請けの偽装を見抜けなかった企業がいくら安全を請け負っても信用しにくいのは確かです。また、偏見や思想・信条に起因するものであっても特定の原産国のものを買いたくない、食べたくないという意思は同様に尊重されるべきです。それを、虚偽表示で蔑ろにすることは許されない行為です。
が、今回の事件を中国産を使ったからダメだ、安全や健康を脅かされたという風にしては問題がわかりにくくなります。さらに食品は国産だったら即ち安全だという安易な雰囲気を助長しかねません。
内外価格差と一物多価
国内産米と外国産米の価格差。主食用米と加工用米の価格差。そもそもこの価格差があるからこんな悪事を働く者が出る。ある程度の価格を割り込んでくると、やはり外国産米の方がコストパフォーマンスに優れていると言えるでしょう。国内産ならば、中米、くず米、端米、売れ残り処分品などの価格帯でも外国産ならまともな整粒だったり。
また、加工用と言ってもあくまで制度上の区分で、必ずしもモノが違うわけではない。もちろん加工用として適性がすぐれた品種が作付けされる場合も多いでしょうが、主食用に一般的に使われる品種でも加工用として申請、作付けされれば加工用。税金から補助金つけてダンピングの原資にして加工用原料の国産シェアを上げましょうという発想のもの。
コメ業界以外では一般的な議論に上がりにくい問題ですが、根深い問題です。
需給のミスマッチ
三瀧商事幹部が「イオンに指定された国産米が足りずに中国産を使った」と語ったという報道について、ネットの掲示板などでは「国産米はあまってるのに」といった反応もみられました。幹部発言はいうまでもなく「イオンに指定された内容と価格の国産米が足りない(あるいは存在しない)」という意味でしょう。
なぜコメ農家は需要側の要求を無視した生産を続けていられるのか、という点も考えてみると面白そうです。
なぜコメ農家は需要側の要求を無視した生産を続けていられるのか、という点も考えてみると面白そうです。
2013/05/30
産地偽装のニュースに思う
最近、米穀販売業者による産地偽装の報道が多いです。
昨日も次のような記事を読みました。
東京の精米業者書類送検 コメ産地偽装の疑い - 47NEWS(よんななニュース)
事件の内容は東京都内の米穀店が、
また、FNNの記事(コメ産地偽装販売 精米店社長「本物よりうまいコメ作れる」)によると、
こちらの記事(ブレンド米を「ひとめぼれ」偽装 精米会社社長ら書類送検 - MSN産経ニュース)では、
ということがわかります。
まじめにやっている身としてはウンザリするような行為ですが、同業者としてこのような事件が起こる背景に関心が向いてしまいます。
以下、この事件について思ったことを書きます。
30年前といえばまだ食管法の時代。現在に比べて不自由な流通で、手持ちの原料で一定の食味を維持するためにブレンドは必須テクニックだったと聞きます。
そのためか、昔の人は往々にしてブレンド米に産地銘柄を表示して販売することに対し罪の意識が希薄だったりします。ちょうど今の回転寿司で、商品名とネタの本当の姿が違っていても味的にそれっぽかったら、なんとなくスルーされている事象と似たような感じだったのかな、と思います。
表示ルールも30年の間に変遷してきました。現在のJAS表示にも問題は多い。モノの本質を表すものではない、消費者よりも役人や生産者のための制度でしかないという批判もハズレではないでしょう。
しかし、だからといって現在の法を蔑ろにしていいものではありません。また、道府県レベルでの産地区分+品種という銘柄に対して消費者が抱くキャラクターイメージというものが所詮は虚妄であるというならば、法を遵守することでそれを明らかにして行くべきだと思います。
315円で粗利58円なら、原価257円。1俵から精米54kg取れたとしても、13,878円/俵。
ちなみに、過去の業界紙を引っ張り出してみたところ、この期間中最も安いと思われる平成22年11月での宮城県産ひとめぼれ1等の市中価格は税別で10,800円/俵。23年に入ると高騰し始め、震災以降は拍車がかかり、24年4月の価格はなんと17,400円/俵。
それぞれの時点での精米販売価格が分からないので何とも言えませんが、いずれの時点でも宮城ひとめぼれを使用するには無理な単価だったのではないでしょうか?
これで搗精・配達してるわけですから、まあ、儲かってはいませんね。利益のためというよりも、損失を防ぐためといった方が実情に合っているのでは?
だからって同情はできませんが。
この程度の価格は、業務用ではありえないわけではないのですが、ハッキリ言ってしんどいレベル。自分なら、この価格で品種・産地の指定は受け付けません。価格に合うものから作らせてもらいます。いや、今シーズンならこの価格に合う原料の確保にも不安があるので、新規ならば取引自体を受けないかも。
産地・品種・産年を記載できる原料、つまり農産物検査を受けたコメを使うとすれば、まず1等は無理、2等でもこの価格はちょっとしんどい。でも3等や規格外を使って品質を落とすくらいなら、未検査米を使用して品種の記載なしで販売する方がいい。特に業務用ならば尚更です。
この米穀店もこの価格を守るならば、堂々と「複数原料米」で販売すればよかったのですが。
食味、銘柄、価格の3つはトレードオフの関係にあります。食味、価格が譲れないというのであれば、銘柄へのこだわりは捨てるしかない。食味、銘柄が大事というのであれば価格は高くなる。
しかし思うに、価格が価格だけに、この給食業者も銘柄にはこだわってなかったのではないでしょうか?たまたま「宮城ひとめぼれ」の袋に入っていたけど、味と価格さえ満足できれば銘柄はどうでもいい、気にしてないという感じではなかったのか?銘柄が重要な取引だと米穀店側が勝手に思い込んで、やたらと無意味な苦労をしたなんて話もありがちです。だとしたら、なんとも残念な事件です。
もちろん、初めて買う時の目安として、産地や品種は便利な基準です。また、農薬、化学肥料の使用状況など五感では判断できないものに関しては表示を信用するしかありません。
しかし、そのコメが美味いかどうか、品質はどうかは、消費者自身が判断できることだし、自信を持って判断してよいことです。有名な産地銘柄であっても、口に合わなければ、そう言っても構わない。大事なのは、食べる人自身が満足できるかどうかですから。
有名産地の良食味品種であっても、個別のコメの善し悪しは生産者の管理や保管次第なのです。産地銘柄ばかりに頼ることを止めて、本質的な価値で判断できるリテラシーが消費者にも必要だと思います。コメの善し悪しは、どこどこ県産のコシヒカリだったら間違いがない、なんて安直なものではないのです。
評判の高い産地銘柄であっても全てのコメが美味いわけではないことを知っておいて頂きたいし、同時に運悪く美味くないコメに当たったとしてもそれでその産地銘柄すべてを否定しないで欲しいのです。
そういった原料のブレ、不安定さを解消して安定した内容の商品を提供することに米穀店のオリジナル商品の価値は有ります。本来は、そのためのブレンドなのです。
そういう基本的な理解の土壌が出来て初めて、瑞穂の国だとかコメの文化だとか自称できるのではないかと。
また、消費者・実需者の方にも妥当な値ごろ感を持っていただきたい。とくに業務店、食のプロであるならばその時点での相場に正しい値ごろ感をもってしかるべきです。そうすることで、悪貨が良貨を駆逐するような状況を避けられると思うのです。
しかし、このブレンド米、どれだけのものなのか一度食べてみたい。取り調べに対しても豪語するくらいだし、コストパフォーマンスはかなり高かった、のかな?。
昨日も次のような記事を読みました。
東京の精米業者書類送検 コメ産地偽装の疑い - 47NEWS(よんななニュース)
事件の内容は東京都内の米穀店が、
- 産地不明のコメ(未検査米ということ?)をブレンドして「宮城県産ひとめぼれ」として販売していた。
- このようなブレンド米を特定の産地銘柄米として販売する行為は30年前から続けていた。
- 昨年4月に計240キロを75,600円で販売。
- それで不正競争防止法違反で警視庁に書類送検された。
また、FNNの記事(コメ産地偽装販売 精米店社長「本物よりうまいコメ作れる」)によると、
- 偽装を行なっていたのは業務用精米の配達で一般向けの店頭販売では偽装はなかった。
- 70歳の経営者は「自分がブレンドすれば、本物よりうまいコメが作れる」と語っている。
- 2年間でおよそ145万円の利益を上げていた。
こちらの記事(ブレンド米を「ひとめぼれ」偽装 精米会社社長ら書類送検 - MSN産経ニュース)では、
- 販売先は老人ホーム向け給食会社
- 平成22年7月から平成24年4月までの期間に約25トン販売し140万円の利益。
ということがわかります。
まじめにやっている身としてはウンザリするような行為ですが、同業者としてこのような事件が起こる背景に関心が向いてしまいます。
以下、この事件について思ったことを書きます。
30年前
まず、30年前から偽装をしていたということ。30年前といえばまだ食管法の時代。現在に比べて不自由な流通で、手持ちの原料で一定の食味を維持するためにブレンドは必須テクニックだったと聞きます。
そのためか、昔の人は往々にしてブレンド米に産地銘柄を表示して販売することに対し罪の意識が希薄だったりします。ちょうど今の回転寿司で、商品名とネタの本当の姿が違っていても味的にそれっぽかったら、なんとなくスルーされている事象と似たような感じだったのかな、と思います。
表示ルールも30年の間に変遷してきました。現在のJAS表示にも問題は多い。モノの本質を表すものではない、消費者よりも役人や生産者のための制度でしかないという批判もハズレではないでしょう。
しかし、だからといって現在の法を蔑ろにしていいものではありません。また、道府県レベルでの産地区分+品種という銘柄に対して消費者が抱くキャラクターイメージというものが所詮は虚妄であるというならば、法を遵守することでそれを明らかにして行くべきだと思います。
キツイ価格
240kgを75,600円で販売ということは、平均1kgで315円ですか。2年で145万円の利益というのも、恐らく粗利のことでしょう(マスコミや公務員は粗利のことを利益と雑に言う事が多い。)。25tでおよそ145万円だと1kgあたり58円、業務用の粗利としては数量次第ではこんなものかと。月に1tあまりの納入であれば、この程度の粗利でも回していけるでしょう。315円で粗利58円なら、原価257円。1俵から精米54kg取れたとしても、13,878円/俵。
ちなみに、過去の業界紙を引っ張り出してみたところ、この期間中最も安いと思われる平成22年11月での宮城県産ひとめぼれ1等の市中価格は税別で10,800円/俵。23年に入ると高騰し始め、震災以降は拍車がかかり、24年4月の価格はなんと17,400円/俵。
それぞれの時点での精米販売価格が分からないので何とも言えませんが、いずれの時点でも宮城ひとめぼれを使用するには無理な単価だったのではないでしょうか?
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| 平成22年11月の市中価格(商経アドバイス2010年11月8日) |
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| 平成24年4月の市中価格(商経アドバイス2012年4月26日) |
これで搗精・配達してるわけですから、まあ、儲かってはいませんね。利益のためというよりも、損失を防ぐためといった方が実情に合っているのでは?
だからって同情はできませんが。
この程度の価格は、業務用ではありえないわけではないのですが、ハッキリ言ってしんどいレベル。自分なら、この価格で品種・産地の指定は受け付けません。価格に合うものから作らせてもらいます。いや、今シーズンならこの価格に合う原料の確保にも不安があるので、新規ならば取引自体を受けないかも。
産地・品種・産年を記載できる原料、つまり農産物検査を受けたコメを使うとすれば、まず1等は無理、2等でもこの価格はちょっとしんどい。でも3等や規格外を使って品質を落とすくらいなら、未検査米を使用して品種の記載なしで販売する方がいい。特に業務用ならば尚更です。
この米穀店もこの価格を守るならば、堂々と「複数原料米」で販売すればよかったのですが。
食味、銘柄、価格の3つはトレードオフの関係にあります。食味、価格が譲れないというのであれば、銘柄へのこだわりは捨てるしかない。食味、銘柄が大事というのであれば価格は高くなる。
しかし思うに、価格が価格だけに、この給食業者も銘柄にはこだわってなかったのではないでしょうか?たまたま「宮城ひとめぼれ」の袋に入っていたけど、味と価格さえ満足できれば銘柄はどうでもいい、気にしてないという感じではなかったのか?銘柄が重要な取引だと米穀店側が勝手に思い込んで、やたらと無意味な苦労をしたなんて話もありがちです。だとしたら、なんとも残念な事件です。
つまり
コメ以外の世界でもありがちですが、どうも皆さん能書きやら銘柄に判断を任せきっているのではないでしょうか。もちろん、初めて買う時の目安として、産地や品種は便利な基準です。また、農薬、化学肥料の使用状況など五感では判断できないものに関しては表示を信用するしかありません。
しかし、そのコメが美味いかどうか、品質はどうかは、消費者自身が判断できることだし、自信を持って判断してよいことです。有名な産地銘柄であっても、口に合わなければ、そう言っても構わない。大事なのは、食べる人自身が満足できるかどうかですから。
有名産地の良食味品種であっても、個別のコメの善し悪しは生産者の管理や保管次第なのです。産地銘柄ばかりに頼ることを止めて、本質的な価値で判断できるリテラシーが消費者にも必要だと思います。コメの善し悪しは、どこどこ県産のコシヒカリだったら間違いがない、なんて安直なものではないのです。
評判の高い産地銘柄であっても全てのコメが美味いわけではないことを知っておいて頂きたいし、同時に運悪く美味くないコメに当たったとしてもそれでその産地銘柄すべてを否定しないで欲しいのです。
そういった原料のブレ、不安定さを解消して安定した内容の商品を提供することに米穀店のオリジナル商品の価値は有ります。本来は、そのためのブレンドなのです。
そういう基本的な理解の土壌が出来て初めて、瑞穂の国だとかコメの文化だとか自称できるのではないかと。
また、消費者・実需者の方にも妥当な値ごろ感を持っていただきたい。とくに業務店、食のプロであるならばその時点での相場に正しい値ごろ感をもってしかるべきです。そうすることで、悪貨が良貨を駆逐するような状況を避けられると思うのです。
しかし、このブレンド米、どれだけのものなのか一度食べてみたい。取り調べに対しても豪語するくらいだし、コストパフォーマンスはかなり高かった、のかな?。
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