2018/10/26

新米の味、古米の味

新米より古米がうまい?


「今は低温倉庫が当たり前になっているので、古米も新米と変わらない。むしろ古米の方が味が乗ってて美味い。」ということをまことしやかに言う人が時々います。食通を気取るオジサマか、古米の売残り在庫を山ほど抱えている販売業者や直売農家に多いようです。
 本当にそうなのでしょうか?これについて私見を記します。ちなみに、この記事で「古米」とは前年度産のコメを考えています。

格差の縮小


 まず、低温倉庫や籾貯蔵の普及その他保管技術の進歩によって、古米の品質がかつてよりも大きく向上したことは事実と思います。保管の仕方があまり重要視されていなかった昭和時代はあきらかに新米の方が美味しく、そのためにやたらと新米をありがたがり古米を嫌悪したのも理解できます。しかし現在は適切に保管されたコメであれば古米臭がきつくて食べられないなんてことは滅多になく、普通に食べられてます。この数年連続したコメの値上もあってか、かなり遅い季節まで古米で引っ張っている飲食店等もありますね。
 また、新米は乾燥が不十分で水分量が多いから水加減を控えめに、なんて昔は言われていましたが、それは機械乾燥が普及していなかった時代の話で、今でも確かに新米は軟らかいのですが昔ほどに水加減を減らす必要もないと思います。
 機械乾燥の普及により新米の乾燥不足の減少と、低温貯蔵の普及による古米の品質劣化の緩和によって、新米と古米の違いは昔ほど大きくはないということです。
 余談ですが、乾燥機の普及と品種の移り変わりによって、太平洋側の産地=硬質米、日本海側の産地=軟質米という言葉が死語になっていますね。

一長一短


 さてしかし、古米と新米が同じかと聞かれたら、これは明確に違う。実際に食べ比べてみれば、ほとんどの方が味の違いに気付かれるでしょう。古米は低温倉庫で保管されていたとしてもやはり古米の味がしますし、新米は独特のキャラクターを感じます。この違いはどちらが上か下かというものではなく、どちらが美味いかは人それぞれの好みに依存するし、業務用なら扱いやすさも考慮されると思います。

 新米は独特のさわやかな香り、透明感のある味、瑞々しさがあり、いかにも消化に良さそうでふっくらした食感は何杯でもスーッとお腹に収まっていきます。反面、この瑞々しさを水っぽい、柔らかすぎると感じ、張り、粒々感、歯ごたえを求める人には物足りなさを覚える人もいるでしょう。エグみ、イヤミがない裏返しで食べ応えに乏しく、業務用としても古米からの切り替えにおいては炊き上がりがコントロールし難い、といった短所があります。しかし、それらの短所も年が明ける前後には解消されるように感じます。
 古米は安定感や新米にはないコクがあります。ただ、このコクも程度の話で、強くなってくるとむしろエグみに感じられる。新米のような爽やかな香りや後に残る甘味に乏しく、粘りは確実に劣り、噛んだ時のそっけない食感はマイナスポイントです。また、そのシーズンに一度新米を食べてしまうと、それ以降は古米を食べるとどうしても古米臭が気になるものです。

まとめとしての私見


 用途と好みの問題。扱いやすさでは古米。新米の風味は独特で、この瑞々しさを水っぽいと感じる人もいます。
 しかし、新米特有の味わいはこの時期だけのものです。この時期に味わっておかなければ来シーズンまで出会えません。特有の瑞々しくやわらかな食感をしっかり堪能したいものです。

 ちなみに私は収穫後年明けからゴールデンウィーク明けまでが一番美味しい季節だと思ってます。コクがあるけどエグミがない。次いで収穫から正月までのいわゆる新米の期間。梅雨時期以降はどんどん味が落ちると感じます。これは低温貯蔵、籾貯蔵であっても劣化は確実にあります。新米より古米のほうが美味いとは、私には決して思えません。
 ということで、この新米時期は白飯なら古米よりも新米を食べたい派ですが、用途(焼飯、炊き込み、寿司飯など)によっては古米で良いかという感じです。

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