2013/11/16

関税撤廃よりもMA枠の拡大か?

最近、コメ周辺のニュースが多いですね。

TPP交渉、コメ関税ゼロ枠拡大 米要求で妥協案浮上  :日本経済新聞
 米国はこのほど日本に関税をなくす品目の割合を示す「自由化率」を100%にするように要求。日本が「関税全廃はありえない」と回答すると、米国はコメを高い関税で守る代償に輸入を義務づける「ミニマムアクセス(最低輸入量)米」の枠の拡大を求めてきた。
 同米の輸入量は年約77万トン。2012年度の最大の輸入先は米国で36万トンだった。国別の輸入量は国内需要などをもとに政府が決める。国産米への影響を抑えるため、無税輸入米の大半は焼酎やみそなど加工用に販売しているが、米国は自国産のコメの輸入枠を拡大し、主食米として日本で販売するように要請。政府内で「コメの関税を守るためにはやむを得ない」との意見が浮上した。
ということです。

だいぶ前ですが、このように指摘するツイートをみかけたのを思い出しました。

なるほど、関税撤廃した日本国内で国際価格並の水準で他の国々と競合するよりも、輸出量の増加は少しでも今の価格水準で売れる方がオイシイ。
つまり、高く売りつけることができる市場をみすみす壊すのは馬鹿らしい、アメリカの生産者も減反と関税で支えられた高価格の恩恵に与ろうぜってことじゃないかと。
そこまでは考え過ぎかもしれませんが、しかし日本の消費者は随分と蔑ろにされているなと思わせる提案です。

そういえば、生産調整の見直しも、実質的には減反強化ですらあるとの意見も出ています(戦後農政の大転換「減反廃止」は大手マスコミの大誤報――キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・山下一仁|DOL特別レポート|ダイヤモンド・オンライン)。

なんだかんだと関税による高米価維持(消費者負担)も、多額の補助金(納税者負担)も変わらないのか?そんな気にさせるニュースでした。

2013/11/09

飼料用米に補助金を厚くするらしい件について

減反廃止の議論が本格的になったのが先月の下旬、それからまだ半月くらいしか経っていません。しかし、具体的な内容が明らかになるにつれ、皆さん、変化への高揚感とか期待感などがだんだん薄れてきているのではないでしょうか?
当初、減反廃止がねらう効果とされていた、中小兼業農家の退出と大規模農家への集約、コストダウンによる価格低下と競争力向上などは、ちょっとズレてきたようにも感じられます。

2013/11/09付西日本新聞朝刊の社説は、今回の減反廃止方針について、2003年改正食糧法以降の「戦後農政の大改革」と同様の頓挫を心配しつつ、
農地集約・大規模化よりも今回は農地の維持に力点が置かれている印象が強い。
と分析しています。

来年度から4年間は減反参加者への定額部分補助金は現在の1/3の5,000円/10aとするが規模は問わない、浮いた予算は飼料用米の転作奨励に充てる。現時点ではこの方針とのこと。
東京新聞:減反補助 5000円に減額 来年度から4年間:政治(TOKYO Web)

しかし、10月末にでた農水省の案で転作奨励の補助金を厚くすることが入っていると知ったときは、なんとも違和感がありました(コメ生産量は「農家の判断で」 農水省の減反廃止案:朝日新聞デジタル)。
つい先日、三瀧商事の事件で加工用米が問題になったばかりです。制度により人為的につくられた一物多価は不正の起こるリスクを常にはらむ。転作奨励の補助金がインセンティブとして働くことで消費者無視の独りよがりな稲作を生み、歪められた需給バランスが消費をさらに低迷させる。
「新規需要米」って言葉、どこかに新しい需要が生じていてそれに対応するモノかのような印象を与えますが、どちらかといえば供給側の思惑があって後から無理に需要を作っているのが実際ではないかと。だいたい、最初から補助金付けて思いっきりダンピングしないと買ってもらえないという時点でおかしいでしょう?
そもそもこれ、いつ補助金外すんでしょうか?消費者の舌が慣れ切って、需要者もそれに合わせた設備につぎ込んだころ合いを見計らって補助金をはずすのでしょうか?
まさか、国がそんなヤクザみたいなことはしないでしょうが。


2013/11/07付け記事「減反廃止にカラクリ 補助金減らぬ恐れ :NQNスペシャル :マーケット :日本経済新聞」では、実は減反政策は変わらないとみる理由として次のように説きます。
転作支援については、前回の自民党政権が積極的に取り組み、12年度は52万件、総額2223億円が交付された。民主党の政策と従来の自民党の政策が併存している。
 今回、廃止方向となったのは民主党政権が導入した補償制度で、転作支援の交付金については存続する。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は、「減反補償は従来どおりのため、(転作促進による)生産調整は維持される。その結果、米価も下がらない」と話す。
 それだけではないという。山下氏によれば、現在、主食用米から米粉・飼料用米に転作した場合、農家にはその収入差として10アール当たり8万円を支給している。それに米粉・飼料用米の作付面積(6.8万ヘクタール)を掛けると、総額はおよそ550億円になる。
 山下氏は、政府が仮に、この支給額を10万円に増やし、その効果で米粉・飼料用米の作付面積が20万ヘクタールに拡大した場合、補助金総額は2000億円に膨らみ、民主党の「戸別所得補償」分がそっくり転作支援に入れ替わるとみる。
結局は補助金も作付けも転作扱いの新規需要米に振り分けられるだけで、補助金総額は減らないし主食用の低価格化も起きないという予想です。

一方、2013/11/06付けの「円滑な減反廃止は可能 荒幡克己 岐阜大学教授 :日本経済新聞」では、転作助成の維持と適切な経過措置によってソフトランディングが可能であるとされています。
 減反問題の要諦は、農業部門内での資源配分にある。これまで、需給動向を軽視した高米価路線によるコメ有利の状況で、土地、人などの資源が稲作に偏り過ぎ、増産が必要な飼料作物などに仕向けられなかった。この意味では財政支出の削減を検討する際、コメが有利とならないようコメへの助成を削減し、稲の飼料用仕向けを含めた転作助成は維持するのが妥当である。コメ偏重農政のままでは、減反廃止への道は開けない。
 減反廃止後、市場に任せると、農家の手取りは20%を超えて減少することが予想される(シナリオ1)。長期的に競争力強化を考えるならば、この米価下落に耐え得るコストダウンは実現してほしい。しかし、短期での大幅なコストダウンは限界がある。
 そこでコメへの助成自体にあらかじめ生産刺激の弱い方法を設定しておけば、廃止後の増産と価格暴落を抑制できる。価格下落分を補償するような不足払い(シナリオ2)は、生産刺激が強く財政負担が膨大となる。財政規律を重視すれば、一定額を支払う固定支払い(シナリオ3)とした上で、さらにデカップリング度を高めれば、同程度の農家手取り減でも大幅な財政節約が可能である(シナリオ4)。
減反廃止の効果をいかに高めるかというよりも、いかにそのインパクトを和らげるかに関心が向いている記事です。ここでは減反廃止のプロセスの消化自体が関心の的です。

余剰分を飼料用、加工用などに振り向け隔離することで、主食用米の価格下落を防ぐ。内外価格差の大きな関税なしのMA米の取り扱いと同じ発想ですね。実に農水省的発想による解決方法ではないでしょうか。
ただ、国・農水省が需要のあるコメ、商品を見極めるセンスに欠けているのが問題なのです。補助金付けて安くさせて、農林事務所から宣伝させれば大丈夫、くらいに考えているのかもしれませんが。しかし、この数年をみても判ることですが、変なインセンティブをつけて生産を誘導すると、需要側に必要なコメが足りなく、要らないコメが余りまくるという状態になります。

ところで、2013/11/05の林芳正農林水産大臣の会見でこのような発言がありました。
今、全体需要の大体3分の1が、まあ、こういう外食・中食向けと、まあ、こういうことでありますので、こういう需要に対応するために、やっぱり低コスト生産ということが一つありますし、それから、これに併せて、やはり、この実需者、こういう方々が求めている品質のコメを安定供給すると、こういうことが大事だと思っております。そのためにですね、26年度の予算概算要求ですが、いわゆるブランド米とは異なる品質や価格での供給が求められるですね、業務用米、加工用米の、まあ、生産コスト低減技術の実証と、それから、外食・中食業者や卸業者と、まあ、産地のマッチング、関係者の連携による産地づくり、安定取引の推進、まあ、等へのですね、支援を行うための予算を要求をしております。・・・・・・実需者と産地が一体となってですね、こういう中食・外食等のニーズに応じたコメを安定的に供給できる体制と、こういうものが、を構築を進めていきたいと、こういうふうに思っております。
減反廃止の行方とは関係なしに是非、進めていただきたいことです。

2013/11/05

減反廃止の報道から思うこと 後編

前篇からの続きです。

減反廃止の効果についての是非

大規模化、コスト低減、競争力強化という目標の是非についてパスしたとしても、では果たして減反廃止によってこれらが実現するのかどうか、です。

まず、ほんとうに兼業農家が離農して主業農家へと農地が集まるのか。
例えば次の記事では、減反廃止での農地拡大を期待する大規模農家の声が紹介されています。
 一方、80ヘクタールの田んぼを抱える沼南ファーム(千葉県柏市)の橋本英介取締役は「補助金が減れば、兼業農家が農地を手放すはず。大規模農家にとっては農地を広げるチャンスになる」と農政の転換を歓迎する。大潟村あきたこまち生産者協会(秋田県大潟村)の涌井徹代表も「減反見直しは当然。補助金は加工技術や新用途の開発に使うべきだ」と期待を込めている。
減反見直しで競争へ一歩 農政、大規模経営に軸足 :日本経済新聞

少なくとも高齢生産者のリタイアのきっかけにはなりそうです。しかし、主たる収入源は他にある壮年の兼業農家は補助金廃止や価格低下にも抵抗する体力があると見られます。コメづくりを趣味とか家の年中行事として捉えるなら赤字でも構わない。むしろ稲作を主な収入としている主業農家の方が先に参ってしまうのではないか、という意見です。現在でも販売農家に該当しないため経営安定所得対策の対象とはなっていない園芸農家による自家飯米や縁故米の生産は珍しくありません。
次の記事の説明はしっくりと来ます。
「兼業農家」と戦って勝てるわけがない ドラッカーで読み解く農業イノベーション(4):JBpress(日本ビジネスプレス)

また、こんな主張があります。
新浪ローソン社長の減反廃止論は先祖返り | コラム | JAcom 農業協同組合新聞
改革派のストーリーは楽観的で単純に過ぎるという批判は、以前より行われていました。しかし、批判に対する改革派からの回答は無いのでは?
大規模農家に分類されていても、米価下落+補助金カットに耐えられるほどのコストダウンの準備が現在既にできているところはそう多くないでしょう。今回の減反廃止スケジュールでは、コストダウンにより米価引下という順序ではなく、米価下落による淘汰の後に集約とコストダウンがくることになります。
もしかしたら、現時点で大規模稲作農家とされる農家も含めての淘汰、再編ということがすすんでいくのかもしれません。大規模優遇と言っても、その「大規模」の意味するところは現時点での大規模、例えば家族+αの労働力で数十ヘクタールを耕作とかのレベルとは桁が違うのかな?とも。今は自信たっぷりの大規模農家も、あっという間に大きな資本に飲み込まれていくかもしれません。同じ資本のショッピングモールやCVSが全国どこにでもあるように、同じ資本の農地が全国どこにでもある。農村のファスト風土化なんて杞憂ですかね?

集約することで生産性が高まるような農地は、既に集約されてしまっているという意見もあります。まとめることができる田んぼなんてものは、広い平坦地にある田んぼです。干拓地であったり、扇状地であったり。すでに数十haの大規模農家が存在しているような土地です。
中小零細農家が分散して作付けしているのは、国内農地の40%と言われる中山間地域の田んぼ。また、どうにも生きない田んぼから順に耕作放棄されているわけです。
もっとも、このような田んぼはコメではなく、もっと儲かる作物を、と考えられているのかもしれません。それならそれで生きた農地の利用となるのかな?

補助金による減反へのインセンティブが無くなったとしても、果たして大規模専業農家はフル作付けするのでしょうか?
現在でもコメは過剰なわけで、さらに供給量が増えるとすれば、売り切ることができるかどうか。リスクを負って作付けすることになります。かといって、価格が下がっているのならば量で補わなければならない。
農水省によるコメの需給見通しの発表は継続されるとのことですが、春の作付け時点では他の生産者の動向全ては読めるものじゃありません。
収入保険や先物によるヘッジで補えるのかもしれません。見方を変えれば、それらを活用できなければ稲作経営は困難になるのかもしれません。


今後の不安

しかし、実際どうなるのか。私には全く分かりません。

例えば、農協。
食管制度の廃止以来、生産・販売に独自の努力を続けてきた単位農協がいくつもあります。一方、お役所気質のまんまの単協もあります。確実に、今以上の格差が生じるでしょう。そのとき、JAグループの結束は?

減反廃止後に過剰となるコメ。
これまで農家はJAに尻拭いをさせてきたわけです。民間や消費者に直売して、残りそうならJAに出す。JAもコメの過剰は重々承知していながら、生産者が持ってきたコメは受託する。むしろ売るのに苦労することがわかっていてもJAへの出荷を呼び掛ける。
しかし、一時的なことかもしれませんが、大量な過剰が予想されるわけです。そのとき、JAは今までどおりに売れないコメを受託するのか?しかし、皮肉にも、過剰なコメを抱えた生産者は、こんなときばかりJAをいいように利用しようとするのでは。

縁故米。
目論みどおりに中小零細農家が退場すれば、これまで流通していた縁故米が減っていくでしょう。その分、誰かの販売量が増える?
これまで好調といわれたコイン精米機の将来は?あるいは、縁故米消費者が慣れ親しんだ玄米30kgでの販売が増える?

政府の買い上げ。
なんか25年産の過剰米対策がどうのこうのと聞きますが・・・。減反廃止後にも政府買い上げでの過剰米対策なんて矛盾したことはしないで貰いたいものです。

古米とか古古米とか。
一般に現在のコメ流通では、収穫からさほど間を空けずに新米が出回ります。一般消費者向けはモチロン、業務用でも底辺クラスでなければ遅くても年内には新米へ切り替わります。
ところで、減反廃止以降は春先の作付の動向が不明瞭となるわけで、極端な余剰米が発生したり、あるいは足りなかったりということが起こりうるのでは、と思われます。現在のように誰もが気軽に新米を食べられるという状況が続くのかどうか。新米が食べられる、ということが贅沢になるのかもしれません。


と、いろいろ不安はありますが、減反廃止が必要なのは確か。カルテルの維持に税金を使うなんて、あり得ないでしょう!
ただ、もっと早い時点での廃止、本質的な改革が行われていれば、と悔みます。本質的な改革から逃げ、継ぎ接ぎ、継ぎ接ぎでその場しのぎの対応を重ねた結果、糸はもつれにもつれ、いざ改革となると複雑すぎて・・・。
遡れば、間違いの始まりは農地改革でしょうか。それから数えれば半世紀以上、小手先ではない改革になること、有意義な改革になることを、切に願います。

追補

2013年11月6日付日本経済新聞「円滑な減反廃止は可能 荒幡克己 岐阜大学教授」では、コメ偏重を改め稲作と転作の相対的収益性を是正し、デカップリングを高めた経過措置を適切にすることで円滑な減反廃止は可能だと語られます。
このようなシュミレーションが出ることで、いろいろ見通しがしやすくなりますね。

減反廃止の報道から思うこと 前篇

2013年10月24日の産業競争力会議の農業分科会から、数年程度先の減反廃止の検討および来年度からの交付金の見直しが本格的に始まりました。

「減反」見直し着手、補助金削減も検討 TPPにらみ分科会 - SankeiBiz(サンケイビズ)

これまでのところ報道された案はこのような感じ。



11月末には政府方針がまとめられるとのこと。いつかは外されることが必至であるハシゴですが、ここにきて一気に現実的になってきました。一般の関心も高いようです。

この減反廃止・補助金見直しですが、二つの段階に世間の議論があります。

一つ目は、政府、産業競争力会議の目指す農業のあり方についての是非。そもそも、大規模農家に集約し、生産性を高め、国外のコメに対する競争力を強化するという、政府が掲げる目標自体がどうなのかという議論です。

二つ目は、仮に大規模農家へ集約、生産性アップを目指すとして、減反廃止という手段が適しているかの議論です。減反廃止、補助金の縮小~廃止、中山間地は別途支援、加工用・飼料用米は手厚く保護といった政策で、果たして、大規模かつ優秀な専業農家が輝き、兼業農家が退場していくのか?世界に誇れる優れた品質のコメ、世界で通用する価格のコメが生産されるようになるのか?が懸念されているのです。

大規模化促進の是非

減反を廃止すれば、大規模農家への集約 → コストダウン → 生産性向上がおこり、コメの価格も下がる。価格が下がれば国内消費量も増えるし、海外のコメとも張り合えるようになり、関税の撤廃や輸出も可能となる。かねてより山下一仁氏などの改革派が主張していたストーリーがそのまま今回の政府・与党の検討案となっています。

まず、この方針を小農切り捨てと捉えて反対する立場があります。
この発想は、あくまでも「農業保護<農村社会の維持」というスタンスと思われます。農村社会の維持存続のために、農業支援があり、兼業収入確保のために工場等の企業誘致があり、という考え方。改革派が食料安全保障や多面的機能の確保のために農業保護の必要があると考えるのに対して、順番が逆になっています。
農林族議員やJA、左翼言論人に多い考え方だと思われます。
例えば、
岩手日報・論説 2019/10/29「減反廃止検討 小規模農家切り捨てか」
とか
「自民党の減反廃止は、小規模農家切り捨てで1戸当たり所得倍増ということだろう」民主党代表が解説 - 国会傍聴記by下町の太陽 宮崎信行
あるいは短期間で結論を出すことの拙速さを懸念する意見もあります。
社説:減反見直し 一連の議論、仕切り直せ|さきがけonTheWeb

また、そもそも日本国内ではいくら大規模化してもコスト低減には限度がある、オーストラリアやアメリカと同じレベルには成りえないと、大規模化の意義を疑問視する立場があります。
米豪レベルに広大な農地は造れません。日本だと一軒で数十ヘクタールの田んぼを持っていれば結構な大規模農家です。それも干拓地でもない限り結構分散しているし、1枚1枚の面積も数十アールならまだ広い方。移動や農機の出し入れにかかる手間も米豪の比ではない。
稲作は10haくらいで規模拡大によるコストダウンは限界だともいわれています。
さらに、国内の耕地面積の40%は中山間地。棚田に限らずとも1枚1枚が小さいうえに、形も三角形やら台形だったり、妙に細長かったり。そのような農地を集約しても大したコスト低減はできないでしょう。
ただ、集約されるのは農地ではなく農家、ということです。
国内の農地は決して過剰ではないし、輸入分を除いて考慮すれば食料生産能力も決して十分とは言えない。一方、労働力としての稲作農家数は実は過剰ということ。稲作では食えないから兼業するのではなく、農業界には稲作農家全てを食わせるほどの労働需要がないということです。専業なら1人でできる作業に10人も20人もが群がる。だから兼業で充分出来るし、コストも高くなる。一方、意欲的な若い人材は、そのような中途半端な場所に身を置きたいとは思わないはず。この現状を変えていくのが大事です。
集約の意味するところは、農地集積によるコストダウンよりも、農業界の人材リストラによる効率化でしょうか。

さらに、大企業が減反廃止に熱心であることに対する不信があります。
産業競争力会議で減反の廃止を提言したのはローソン最高経営責任者の新浪剛史氏です。言うまでもなくコンビニはおにぎり、弁当類を多く販売しており、コメの生産現場を押さえることは経営に有利であると想像されます。この参入をしやすくする、そして今まで100万軒以上の農家に分散されていた補助金等を新たな利権集団が奪い取るための減反廃止だ、と。
結局、税金を吸い上げるのが農家から一部民間企業に変わるだけのことで、それにしては破壊されるものが大きすぎるという見解です。

ところで、米屋としての私が気になるのは、中山間地の稲作。
中山間地には直接支払いによる支援が提案されているようですが、今のところ内容は不明。そもそも農地の40%を占める中山間地、そのうちどこをどう支援していくのか、有意義な内容なのか?
まあ、安倍首相のお好きな、地元選挙区内にある山口県長門市油谷の棚田などは何か支援が出るかもしれませんが。でも、油谷みたいに魅せるロケーションを持たない中山間地は?
むしろ、地味でなんの変哲もない中山間地にこそ、美味いコメを作る人がいたりするんですよね。押しつけがましい思想だとか、大上段に構えた哲学とか、ハッタリ臭い商品化やら表面だけのブランド化なんかとは無縁の、ただ淡々と研鑽し栽培し、JAや民間業者に出荷する生産者。美味いコメの生産者ってのはそんな中にいる、というのが私の実感です。商売っ気ばかりが先に立った胡散臭い生産者が悪貨のごとくに振る舞い、これら良貨のような生産者を駆逐しやしないか、という懸念を私は強く持っています。
コメ減反の見直し 農家と農村守れるのか - 社説 - 中国新聞
コメ減反見直し 中山間地を置き去りにするな | 社説 | 愛媛新聞ONLINE
社説:減反見直し 一連の議論、仕切り直せ|さきがけonTheWeb
南日本新聞 - 社説 : [減反見直し] あまりにも乱暴すぎる

あと、こういう意見もありますが・・・、申し訳ないですが、私には下記のこれら主張は単なるノイズとしか評価できません・・・
10月28日(月) 苛酷なスクラップ・アンド・ビルドが始まろうとしている:五十嵐仁の転成仁語:So-netブログ
自民党の農業潰しがいよいよ露骨になった - 弁護士 猪野 亨のブログ

長いので一旦切ります。
つづきはこちら。