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2017/11/22

中外食のコメの価格とか

低価格帯のコメが高騰していますが、中外食から消費者への影響が目に見えるようになり、テレビのニュースワイドショーなどでも取り上げられる話題となっています。

曰く、高騰の原因として、
業務用米農家減少の一つの理由としては減反政策の廃止である。国が農家を守ってくれる政策で、米を作る量を国がある程度調整し、米の価格を調整してきた。その際は使わない田んぼに対して補助金を支給する制度があったがその補助金支給をやめた。すると業務用米を作っている人は高く売れる家庭用米を作って利益を出して方が良いのではとのことで業務用米を作らなくなった。もう一つの理由は2014年に飼料用米制度が施行されたこと。飼料用米は圧倒的に安い値段ではあるが家庭用米と業務用米は今後補助金が出なくなる。しかし飼料用米は最大10万5000円も手厚い補償金があるため飼料用米を作る人が多くいるためである。( [直撃LIVE グッディ! (2017年11月21日放送回) ]の番組概要ページ - gooテレビ番組(関東版)

以下は私なりの考えです。

上記引用では生産者が業務用から家庭用に切り替えたため、という説明がありますが、業務用(中外食向け)から家庭用という動きもないわけじゃないでしょうが、どうなんでしょうか?家庭用と言ってもスーパーの特売コーナーのコメと業務用のコメの境界は曖昧です。

また、東北・北陸各県からのブランド米デビューが盛んであることから、米どころの生産者が高価格帯にシフトした結果と分析する記事も目にしまた記憶がありますが、まだ今年は各県とも試験的な作付け面積であり、それほどのインパクトがあるか疑問ですね。また食味で競う高価格クラスは業務用以上に小さなパイを取り合う難しい市場でしょうし。

上記リンク先の番組では触れられてないようですが、法人化や高齢化により安価な未検査米の庭先集荷が減ったのではないか、だとすればそれも原因の一つではないかと思っています。
余談ですが、法人化や高齢化による離農は縁古米の流通量へも影響するでしょう。その代わりがふるさと納税の返礼品でしょうか。取立て美味いわけでもないが、別にそう悪くもないというクラスのコメ。業務用の一部、スーパーのコメと同じ雰囲気のコメ。お徳に貰えるのだからそれでも文句はない、という意味では縁古米に近い。

そして、飼料米。
この数年の作付状況からして、これが一番の原因でしょう。コメから飼料への転換は、食料自給率を上げると同時に、農地を保全しながら過剰に生産されがちなコメの需給を引き締め価格を維持するのが狙いでしょう。
政府による過剰米の買い入れや隔離による価格安定よりは余程ましだと思いますが、それでも補助金の過大さや政策の継続に対する不信などの問題があります。また必ずしも飼料米専用品種でなければいけないというわけでもなく生産者が作りなれた主食用品種が飼料米としてつくられることもあり、その結果税金で家畜にコシヒカリを食わせる一方、納税者たる国民はファストフード・チェーンで輸入米やくず米ブレンドを食べるという現象も。また補助金の動向次第では主食用米への逆流入からのコメ暴落、コメ生産崩壊という心配も消えません。将来的には100万トン以上の飼料米生産がめざされているわけですが、この100万トンが価格安定のバッファとして機能するのか、はたまた不安定をもたらす存在となるのか。

まあ、生産コストからみてこれまでの価格が安すぎた。しかしそれ以上に供給が過剰だったため、需給からは決して安価ではなかった。安すぎる米価をそれが当たり前の価格と実需者が思い込んだ責任の一端は過剰作付けを続けてきた生産者たち自身にもあると思います。
従来の価格を適正と考える実需者やそれを前提としたサービスを受けていた消費者は、これ以上の米価の上昇に対しては淡々と輸入米を求めてくるでしょう。目先の価格に一喜一憂していると外国産米に業務用のシェアを奪われることになりかない。
今のところ一部の生産を飼料米へ隔離することで見かけ上は需給のバランスが取れてきました。ただ、飼料「米」である限り、潜在的にはコメ生産の過剰は解消されていないでしょう。いずれは飼料生産者とコメ生産者と、別の道に分かれる必要があるのではないかと思います。

最後にボヤキ。
現在は、中外食業者が望む価格と品質レベルのものが、求められているコメ、あるいは売れるコメとされています。まずは価格ありきで品質はそこそこ。テクスチャーはそこそこでコメの甘味や香りはない、そんなコメが「売れるコメ」とされているようです。美味いとは言えない、おにぎりの塩加減や弁当の濃い味のおかずで押し込む腹を満たすためのご飯です。
また学校の米飯給食。「地産地消」やら「和食文化」などと通りの良い言葉を使えばいいというものではないでしょう。食べ物は、口に入れるモノそれ自体が意味を持ち、雄弁に語るのです。どうも学校給食の炊飯を食べて育った子供たちはご飯の甘味や香りを知らないようなのです。とんだネガティブキャンペーンになっているのでは?
中外食、給食の不味いご飯こそが、コメの消費を下げた主犯ではないかと思うのです。


2017/11/18

農産物検査と未検査米

どうも世間的に、未検査米というものはなにか劣悪なコメとか、違法なコメだとか不当に認識されているのではないでしょうか。

そもそも未検査米とは農産物検査法の品位等検査を受けてないコメという意味です。これを受検して検査証明書ももらったコメが検査米。そして、この農産物検査法の検査証明書(例えば30㎏/袋の荷姿なら袋に印刷されたテンプレに内容が記入され印鑑が押してある)が、精米・玄米の一般小売での食品表示法食品表示基準で規定されている原料玄米の「産地」、「品種」、「産年」の表示根拠として流用されています。
ちなみに農産物検査法には「成分検査」の規定もあり、コメの場合はアミロース、たん白質の割合が検査項目となっていますが、これを受けなくても未検査米というわけではありません。品質チェックのために産地や精米業者が自身が持つ分析計を用いての非公式な分析は日常的にいたるところで行われてますが、農産物検査法の登録検査機関による成分検査を受けてるコメはあまりないでしょう。

もちろんこの検査を受けていないコメを販売することは違法でもなんでもありません。上記のような誤解が生じたのは、平成7年に廃止された食糧管理法時代に違法だった「ヤミ米」の概念がいまだに引きずられているためでしょう。国が主要食糧として位置づけるコメの法律上の扱いが大きく変わったわけですが、国民一般への周知はあまりなされてないようで二十数年たった今でも勘違いが横行しています。せいぜい農家や米穀店による地道な説明くらいしかない。むしろ国というか農水省は未検査米=違法という誤解が解けないほうがいいと思ってるんじゃないか?と下衆な勘繰りも。

ただし未検査米自体は違法でも何でもないのですが、これに「品種」「産年」を表示して販売することは食品表示法違反(産地は米トレサ法でむしろ表示が必要)。よく農家が未検査米を品種や新米をアピールしながら販売していますが、あれはアウト。産地品種銘柄に入ってない銘柄をうたっている場合なんてあきらかにアウト。

農水省は農家は野放し状態にしてますが、米穀店が同じことをすれば大きく報道されるというダブルスタンダードが存在します。よって米穀店が潰れるリスクを冒してまでこれに違反する行為はまずしない。しかし、そのために面白いんだけど売りにくくて手を出せないというコメがでてくる。珍しい品種だったり、変わった取り組みをしてる生産者だったりのコメでも、未検査であれば「未検査」とか「複数原料米」などのネガティブなイメージの文言を一括表示欄に記載する必要がありますし、米袋に品種名を表示することも許されません。

もちろん消費者を騙すような虚偽の表示は許されるものではないし、それがまかり通るような法律であって良いわけじゃありません。取引価格の高い確立されたブランド名を騙るような悪質なケースは取り締まるべきでしょう。しかし、そんな詐欺とか不正競争防止法違反といえるようなケースと、品種の検査を受けられないマイナー品種の品種名の表示とを同じように扱っていいものか。この制度が明るく活発なコメ消費の足を引っ張っていないか。と、そんな風に感じるわけです。

29年産の高騰について

コンビニ等でおにぎり値上げのニュース。
おにぎり値上げ 業務用米高値 価格に転嫁 コンビニスーパー

リンク先は日本農業新聞の記事がヤフーニュースに転載されたものです。
けっこうな量の読者のコメントがついており、関心の高さが感じられます。コメントのごく一部しか目を通してませんが、コメ業界、消費者、生産者との三者間の認識の違いも面白いです。

米穀店的には当然に予想された値上げですが、コメが高騰している事実を知らない消費者が多いこと、コメが売れない問題と業務用米の不足の関係がうまく理解されてないこと、昨年以前から飼料米政策に起因する低価格米が不足気味であることが一般には知られていないこと、作況指数からみて値上げは不可解と感じられていること、などなど。
そして消費者のみならず生産者も流通についてはあまり確かな知識を持っていないということ。

そして農家の側からすれば高くなったと言ってもまだまだ安くてやってられないレベル。消費者の側からすれば生活を苦しめる不条理な値上げ。流通からすると仕入れは上がるのに売値に転嫁できない、とりあえず来年以降は落ち着くだろうから今年は何とか生き延びたい。
三者とも苦しいばかり。たちの悪い大岡裁きです。

わたしはこの状況は、産地の衰退以上に消費地が消耗していることの表れだと解釈します。
かつて昭和時代の生産地の衰退は若者の都市部への流出によるものでした。今は消費地の衰退と生産地の衰退がリンクしているように見えます。

都市部が農村部に対して経済的に優位だった時代には、都市住人による農産物の購入や観光消費、国や自治体の財政などを通じて消費地が生産地を経済的に支える形が自然に可能でした。今でも農村部で村おこし的なことを考えている人たちのなかには、そういう構造を前提にしているの人も多いのではないでしょうか。
しかし、今の消費地・都市部にはこれ以上生産地・農村部を支えるだけの力がない。もはや打ち出の小づちではないのです。すべての農村部を支えられるほどの力量はないのです。
都市部の貧困を目の当たりにすれば消費地の購買力をあてにすることの難しさが理解されるでしょう。むしろ都市部を含めた日本全体がインバウンド消費などと、外国人の財布をあてにした村おこし的なものに希望をつないでいるくらいです。

都市部消費者の購買力の低下。これから目を逸らすなら、消費者、中外食業者などの実需者が外国産というもう一つの選択肢を選ぶのを後押しすることになりかねないでしょう。

2014/12/09

おこめ券

 ご存じと思いますが、「おこめ券」というギフト券があります。ちょっとしたお礼とか記念品、内祝い、快気祝なんかに活用されています。

 発行しているのは、全国米穀販売事業協同組合、略して全米飯。全農が発行している「おこめギフト券」というのもありますが、全米飯のおこめ券の方が少しだけメジャーでしょうか。
 どちらも1枚440円分の買い物券として使えます。また、ご存知ない方も多いようですが、米穀店だけでなく、コンビニやスーパーでも大抵は通用します。

 そんな、おこめ券について気になるというか、思う所を少々。

440円の金券だが、販売する時は500円。

これは、ビール券なんかと同じですね。60円ほどが印刷やら流通コストとしてのっている。
 企業が自社専用のギフト券を発行する場合は、使用価値と同額か、あるいはプレミアムがついてる場合もあるのに比べて、古臭く感じてしまいます。特定の企業が自社の販売促進のために発行しているものとは違うわけで、仕方ないかもしれませんが。

券面にでかでかと「1kg」と記されている。

これは誤解を招くもので、どうにかならんかなと思っています。あくまで1枚440円分の買い物券なのですが、お客さんはこの券1枚で米1kg貰えると思い込んでしまいます。おコメの価格なんて、それより安い物もあればずっと高い物も。若い人ならまだいいのですが、お年寄りに説明するのは結構大変です。
 ただ、「1kg」と書いてなければ、おこめ券っぽくないというか、なにものでもない商品券でしかないのも確かで・・。やっぱり、おこめ券のアイデンティティとして「1kg」の記載は必要なのか・・・?

 そんなおこめ券ですが、今年4月初頭、おこめ券を利用して買い物をされた方が若干目立ちました。つまり、新消費税率が導入されてからおこめ券で買い物される方が目立ったということ。
 で、私の推測なんですが、この方達は1枚440円ということを知らずに、1kg/枚のコメが買えると思っていたのではないか、と。ならば、消費税増税後に使った方が得である、と勘違いしてたのではなかろうか。
 結局は440円相当の金券でしかないのですから、おこめ券であろうが現金であろうが、増税前に買った方が得なわけです。
 まあ、単に4月というシーズン、御祝に貰ったおこめ券を使った人が多かっただけかもしれません。私の勝手な思いすごしかどうかの判定は、次の増税時の観察結果に委ねられています。

2014/12/01

平成26年産米の価格について雑感

 記録的ともいわれる今年のコメの価格について、今更でもありますが、感想などを徒然に。

 26年夏の過剰な古米在庫と26年産価格の下落は、昨年来巷間で予想(懸念)されていたままの展開でした。生産者にとっては新米出荷時に初めて下落のショックを受けたのかもしれませんが、流通では既に今春から大量出血しながらの在庫処分が始まっていました。
 情けない話に、一部ワイドショーではコメ価格下落を"明るいニュース"として報じてたものもあったそうで・・・。どうも人は、モノの価格が下がる理由として、何かイノベーションが起こったり、どこかで効率が改善されたり、なんかの影響で資材購入コストが下がった、などを想起しがちなのかもしれません。あるいは、テレビのドキュメンタリー風番組で、大規模で粗放なやり方により1俵数千円でもペイできる稲作なんてのを見て印象に残っている人もいるでしょう。しかし、現実に流通するコメのほとんどは、イノベーションとは縁がないし、急に今年になって効率化が進んだわけじゃない、ご覧の円安のため原油安でも燃料、資材は高止まり。つまり、この度の価格下落は単なる叩き売り、ダンピングでしかありません。
 生産者も流通業者も苦しむばかりの相場崩壊。その原因についてはJA概算金の設定や、農政に求める向きもあるようですが、根本は過剰な生産、過剰な供給だと思います。


概算金


まず、よく聞くのが、JAが概算金を下げたのが悪いという声。
 しかし率直な感想として、需給からは(あくまでも需給からです)今の価格、これこそが現実ではないでしょうか。
 一昨年、昨年とJAはかなり強気な、割高感の強い価格を設定しました。一昨年の独りよがりともいえる価格は消費者離れや業務筋での使用量減を加速させ、昨年の価格はそれよりは下がったものの需給バランスをとるにはまだまだ不足でした。それが販売不振の一因となり今夏の大量在庫を招き、溜まっていた価格下落への力が噴き出したという流れでしょう。
 もしJAが悪いとすれば、一昨年、昨年の強気な価格設定でしょう。
 しかし、そもそもの長期的な米価の下落傾向をJAの責めにする農家もよくいますが、この手の批判にはいささか違和感を感じます。むしろJAの共同販売、JA価格の存在により一般的なコメの価格は実力よりも高く維持されていたのではないでしょうか。大多数の農家はJAのおかげで現実を直視せずに済み、実力よりも過大な価格で販売できていたのでは。
 また、JA価格が全体の下支えとなることで、JAに出荷せずに独自の販売している方々もその恩恵は受けているはずです。もし、JAが存在しなければコメ農家はもっと早くから競争にさらされたことでしょうし、あるいは今頃は既に適正な生産量、生産者数へと淘汰が行われ、価格的にも安定期に入っていたかもしれません。その意味ではJAは罪な存在でしょう。


縁故米


 農家から親戚知人に譲渡されるコメを縁故米と呼びます。広義には職場の同僚などに有償で売られるコメも含まれますが、とくに価格への影響が大きいのは無償譲渡米と呼ばれるものでしょう。無償譲渡米については以前の投稿で紹介した書籍があります。
 
 ちなみに非課税輸入枠のミニマムアクセス米。国内産米価格への悪影響を避けるために、農水省による独占的な国家貿易で輸入されています。その量はSBS米10万トンも含めて76万トン、国内コメ生産量の約1割です。しかるに、先の書籍によれば流通量の1割近くが無償譲渡米、震災直後の報道では3割が縁故米という記事もありました。無償譲渡という究極のダンピング、それが流通の1割もあれば価格に影響しないわけがないでしょう。
 生産者や業者との会話の中で、「今、”担い手”に相当する農家ほど苦しんでいる」という話がよく出ます(たとえばこの記事も。)。能天気に「兼業や年金趣味農家が退場する機会」なんて言ってる人もいますが、トンデモナイ。
 プロ農家、腕のよい農家を支援する体制が整わないうちに起こった、ダンピングの我慢比べが現状です。品質/価格で競争する仕組みに至っていない。
 産業競争力会議等の議論も品質という評価軸は無視され続けてきたように感じますし、そもそも消費者も含め国民のコメの品質を見極めるリテラシーが不足しているのかもしれません(それに乗じるような、売り方ばかりに熱心で腕の方はサッパリという農家が増えているような気もするのですが、それはまた別記事で投稿しようかと思ってます。)。


とまらない過剰な生産


消費の場からは、もうずーっと前より「もう腹いっぱいだ、そんなにコメは食えない」というシグナルが送り続けられてきました。農水省の資料「日本農業新聞」からでも、あるいは一般紙やテレビからでも、生産者がその事実を知る機会は充分にあったはずです。でも、過剰がとまらなかったのは何故か。
 私はこう捉えてます。
 確かに年々生産量は減少しています。ですが、それは上から割り当てられた生産調整と高齢化・後継者不在による自然な減少との結果でしかない。生産者が状況を見極め能動的に動いた結果ではないし、なにより生産者自身が満足できる価格が形成されるまでに供給が絞られたわけじゃない。
 私は、ここがJAの罪だと思います。そして政治の罪。
 つまり、消費者がもう要らないよっていってること、確実に余るってことを知っているくせに、また売り切る自信もないくせに、まるで子供に甘いバカ親のようにJAは生産者がつくったコメをニコニコと引き受ける。
 そのため流通業者と接点の少ない農家は、自分のコメに下されている厳しい評価、現実について実感を持てず、よって真剣に進退を検討することもなく、ただ高齢化などにより二進も三進もいかなくなるまで惰性的につづける。
 そうしてJAの倉庫に生じた過剰なコメは、ダンピングしたり、流通業者にねじ込んだり、あるいは最終的には国に押し付ける。高度成長期に起源するだろうJAや国のこういった姿勢が現在のコメ生産の倦怠をもたらしたのではないでしょうか。
 ちなみに、農家が国の農政が悪いと批判する時は、国がこの甘やかしをやめようとしたことについて文句を言ってる事が多いようです。一方、流通業者や消費側が批判するのは、昭和30年代から始まったこの甘やかしがいまだに存在していることについて。そんなわけで、生産側と消費側がともに農政を批判していても話がかみ合わないことがある。それぞれ逆のことを考えているわけです。


ついでに・・・ 在庫の問題


 「米に関するマンスリーレポート(平成26年11月7日)」(PDF)の51ページによると、来年6月の民間在庫予想は233万トン。1年間の消費量の約3割です。南九州の早場米出荷は7月末に始まるでしょうが、本格的なシーズンまで2~3カ月残しての在庫と考えれば、安全保障の観点からは多いとも思えないかもしれません。でも、業界的にはこの数字は高い水準だといわれます。
 これ、新米が出たら国民みんなが新米を食べようとするからじゃないでしょうか。かつては、まず在庫の古米を食べつくしてから新米を食べ始めたと聞きます。自然なことだし、無駄なくしまつめのよい消費の順番だと思います。この風習は食糧を無駄にしないだけでなく、コメの価格の安定にも寄与するのではないでしょうか。今、みんながみんな新米を食べようとするのは、それが道徳的な気分だけでなく価格的にもハードルが下がっているからでしょう。特に今年のような親不幸相場ではなおさらに。
 つまり、新米購入の価格的ハードルがあまりに低すぎるのも問題では? と感じているのです。シーズン初っ端から新米を食べることは結構贅沢なことなのだ! と認識してもらうために、古米在庫がまだ多い間は新米価格にプレミアムがついてしかるべきではないか、と。古米をダンピングして叩き売るのではなくて。
 しかし、現在の慣習や産地間競争、業務用販売、スーパーやネットを舞台としたリンボーダンスのような価格の潜り合いがある以上、非現実的な夢想だとは解っております・・・。ただ、最低水準価格の業務用米が、10月くらいから新米を使用できるような現状は異常なことだと思います。

2014/08/04

やっぱり浸漬

 炊飯でなにが重要かって、やっぱり浸漬だと思います。
 研いだ後、炊飯開始までしっかりと水に漬けて吸水させる行為。「浸す」と書いて「かす」と読んだりもします。最近つくづく、この工程を軽んじている人が多いと感じてます。
 イマドキの炊飯器は炊きあがり後の蒸らし時間までプログラムに入っているのが普通ですから、浸漬させる工程が余計に面倒くささく見えるのかもしれません。無洗米なら、なおのこと、水加減してスイッチ入れるだけのお手軽さが当前だろ?と考える傾向にあるのかもしれません。
 ただ、美味しく炊飯しようと思うなら、ここは端折ってはならない部分でしょう。デンプンが糊化するには水分と熱が必要ですが、米粒の中心まで水が浸透するのに充分な浸漬時間がないと、中心部が糊化しきれない芯のあるご飯となります。
 また、このようなご飯は短時間で硬化しがちです。「冷めてもおいしいご飯」には、コメ自身の品質だけではなく、きちんとした炊飯も必要というわけです。いやむしろ、充分な浸漬が出来ているかどうかの方が影響大かな、と思ってます。

 で、どれくらいの時間、浸漬が必要なのか。

 よくいわれるのが、「冬場2時間、夏場1時間」。人によっては「冬場1時間、夏場30分」。でも、私の考えは、「夏場でも2時間浸漬したものは美味さが違う」です。
 芯まで吸水させるという観点からは、夏場でも30分では短いと思います。じゃあ、なんで夏場の浸漬は短時間でいいと言われ続けているのか?安全上、衛生上の観点からみれば、夏場にコメが漬けられた栄養たっぷりの水は簡単に腐敗してしまいます。長時間の浸漬はそういう危険があるのです。炊飯から変な臭いがしたり、黄色ないしは茶色っぽかったりするのは、何らかの菌が繁殖していると考えられます(余談ですが、炊飯器の内蓋の裏や蓋の蒸気が抜ける部分も毎回清潔にしましょう!)。
 じゃあ、夏場はきちんと浸漬した美味いご飯は諦めるしかないのか?対策としては、冷蔵庫に入れて浸漬させるということになります(冷蔵庫を使ったからといっても絶対な安全はありません、夏場は腐敗のリスクが高いので五感を活用してご注意ください。)。
 で、浸漬が完了したら、ざるで水をきって、一度かるく流水ですすいでから水加減して炊飯開始すれば理想でしょう。

 まあ、確かに面倒くさい。パンは買ってくればすぐに食べられるし、パスタなども熱湯に入れてから長くても十数分間茹でればOK。それに比べて、何時間も前から準備に取り組まないといけない。コメの消費増を願う米屋からすると、あまり口にしたくない不都合な真実ではあります。ではありますが、この手間をかけるか否かで世界が違うのは確かです。

 しかし実際、営業として飲食を提供しているところでも浸漬は軽視されているんです。
 先日、取引先でライスを食べたところなんか口当たりが悪い。調理現場のパートの方に浸漬はどれくらいしてるのか聞いてみたら、「うーん、10分くらいかな?」とのこと。「それじゃあ短すぎる、せめて1時間!」と言ったのですが、内部の事情がいろいろあるみたいで改善は難しそう・・・。ここは営業開始してから、たぶん15年近く経つと思うのですが、その間ずっとこのやり方でやってきた様子。
 いや、実にもったいないと思うんですが。

2014/06/21

ダンピング合戦と産地偽装のニュースと

じつに半年以上、このブログを放ったままでした。
書きたいことがないわけでもなかったのですが、どうも書くタイミングを逸したりしてた次第です。

今の状況をざっとみるに、新米シーズンが近づいてるにもかかわらず、25年産の消化が進まない。さらには糖質抜ダイエットなんてコメ関係者にとってはテロ行為のような言説も流布される。10月末の持ち越しは60万トン、過剰米対策35万トンを引いても25万トンが残るなんて予測も聞きます。
宅配Y社の強気の値上げや、某牛丼チェーンでのアルバイトの反乱など、これまでの歪なバランスを修正するような動きが報じられましたが、コメに関しては情けないというか、辛いというか。
そんなわけで、ここ1、2カ月でますます酷くなっているダンピングの件などからブログ再開しようかと。

他の業界と同様に、刹那的で暴力的なダンピングは九州方面からやってきます。特にこの時期、もう来月には南九州の早期米が収穫されるため、倉庫を空けておかなければならない事情が元来のダンピング気質に加わるのです。

元はといえば、需要を上回ることが分かっているのに行われる過剰な作付け。しかし、無駄な生産の責任は生産者がとっているのかといえば、そうとは言い切れない。たとえば、このダンピングも、生産者の処分売りもあるでしょうが、流通業者の損切りが大きいのでは。JA直売の値下げもあるでしょうが、民間ほどのヒリヒリした感じはないのかと。全農価格に至っては反応が鈍いというか、どこか他人事という風でもある。
というわけで、過剰な生産の尻拭いをさせられてるのは悲惨な流通業者というのが私の解釈です。

まあ、それでも、事情があるにせよ、捌ききれない仕入れをした業者の自己責任ではあります。しかしそれだけで済まないのが問題で、損を出して処分する業者が出れば、その周辺で堅実に仕入れて経営してきた業者までが巻き込まれてしまうわけです。馬鹿な仕入れをした業者が一人沈むなら仕方ないけど、周りの業者の足を引っ張りながら巻き添えにしてゆくという状況があります。

そんなコメ余りのさなかに目にしたニュースです。

大手のモールでは激安米を売りにしていたようです。

産地を偽りながら低価格を売りにしていたわけで、競合する業者はアンフェアな価格競争を強いられていたことになります。消費者、コメ業界のどちらから見ても、とてもじゃないが許せない行為です。

あと一つ、某サイトでのカスタマーレビューを見て思ったこと。
消費者の皆さんは、コメはいくらでも安くなる、タダに近くなると思っているのかもしれません。が、実際には生産者の資材・労賃・機械・燃料等に加え、運送する段階での燃料・車両・労賃、搗精する段階での光熱費・機械・包材・労賃・倉庫での保管などなどのコストがかかっています。
理屈の上では農地の集約や品種の選択、作業手順の効率化で、玄米1俵を1万円未満で販売してもやっていけるようなことが言われていますが、現時点でほとんどの農家、つまり消費のボリュームゾーンを支える農家の生産コストは理想的なモデルからは程遠いのです。

激安であればそれなりのモノになる(中米や砕米が多い、粒が揃ってない、古米臭がするなど)のは当然で、10kgで3,000円切りながらマトモなものを欲しがるのは、現状では、失礼ながらムシがよすぎると申し上げたい。
しかし、実際には10kg3,000円切りながらマトモな商品も大量に、当たり前のようにして出回っています。それらの商品は、生産者から販売者の間のどこかの段階で誰かが血を流していることを理解していただきたい。生産者かもしれない、流通業者かもしれない、誰かの怨念がこもった価格です。
なんて言ったら、ちょっとおどろおどろしいでしょうか。

2013/11/05

減反廃止の報道から思うこと 後編

前篇からの続きです。

減反廃止の効果についての是非

大規模化、コスト低減、競争力強化という目標の是非についてパスしたとしても、では果たして減反廃止によってこれらが実現するのかどうか、です。

まず、ほんとうに兼業農家が離農して主業農家へと農地が集まるのか。
例えば次の記事では、減反廃止での農地拡大を期待する大規模農家の声が紹介されています。
 一方、80ヘクタールの田んぼを抱える沼南ファーム(千葉県柏市)の橋本英介取締役は「補助金が減れば、兼業農家が農地を手放すはず。大規模農家にとっては農地を広げるチャンスになる」と農政の転換を歓迎する。大潟村あきたこまち生産者協会(秋田県大潟村)の涌井徹代表も「減反見直しは当然。補助金は加工技術や新用途の開発に使うべきだ」と期待を込めている。
減反見直しで競争へ一歩 農政、大規模経営に軸足 :日本経済新聞

少なくとも高齢生産者のリタイアのきっかけにはなりそうです。しかし、主たる収入源は他にある壮年の兼業農家は補助金廃止や価格低下にも抵抗する体力があると見られます。コメづくりを趣味とか家の年中行事として捉えるなら赤字でも構わない。むしろ稲作を主な収入としている主業農家の方が先に参ってしまうのではないか、という意見です。現在でも販売農家に該当しないため経営安定所得対策の対象とはなっていない園芸農家による自家飯米や縁故米の生産は珍しくありません。
次の記事の説明はしっくりと来ます。
「兼業農家」と戦って勝てるわけがない ドラッカーで読み解く農業イノベーション(4):JBpress(日本ビジネスプレス)

また、こんな主張があります。
新浪ローソン社長の減反廃止論は先祖返り | コラム | JAcom 農業協同組合新聞
改革派のストーリーは楽観的で単純に過ぎるという批判は、以前より行われていました。しかし、批判に対する改革派からの回答は無いのでは?
大規模農家に分類されていても、米価下落+補助金カットに耐えられるほどのコストダウンの準備が現在既にできているところはそう多くないでしょう。今回の減反廃止スケジュールでは、コストダウンにより米価引下という順序ではなく、米価下落による淘汰の後に集約とコストダウンがくることになります。
もしかしたら、現時点で大規模稲作農家とされる農家も含めての淘汰、再編ということがすすんでいくのかもしれません。大規模優遇と言っても、その「大規模」の意味するところは現時点での大規模、例えば家族+αの労働力で数十ヘクタールを耕作とかのレベルとは桁が違うのかな?とも。今は自信たっぷりの大規模農家も、あっという間に大きな資本に飲み込まれていくかもしれません。同じ資本のショッピングモールやCVSが全国どこにでもあるように、同じ資本の農地が全国どこにでもある。農村のファスト風土化なんて杞憂ですかね?

集約することで生産性が高まるような農地は、既に集約されてしまっているという意見もあります。まとめることができる田んぼなんてものは、広い平坦地にある田んぼです。干拓地であったり、扇状地であったり。すでに数十haの大規模農家が存在しているような土地です。
中小零細農家が分散して作付けしているのは、国内農地の40%と言われる中山間地域の田んぼ。また、どうにも生きない田んぼから順に耕作放棄されているわけです。
もっとも、このような田んぼはコメではなく、もっと儲かる作物を、と考えられているのかもしれません。それならそれで生きた農地の利用となるのかな?

補助金による減反へのインセンティブが無くなったとしても、果たして大規模専業農家はフル作付けするのでしょうか?
現在でもコメは過剰なわけで、さらに供給量が増えるとすれば、売り切ることができるかどうか。リスクを負って作付けすることになります。かといって、価格が下がっているのならば量で補わなければならない。
農水省によるコメの需給見通しの発表は継続されるとのことですが、春の作付け時点では他の生産者の動向全ては読めるものじゃありません。
収入保険や先物によるヘッジで補えるのかもしれません。見方を変えれば、それらを活用できなければ稲作経営は困難になるのかもしれません。


今後の不安

しかし、実際どうなるのか。私には全く分かりません。

例えば、農協。
食管制度の廃止以来、生産・販売に独自の努力を続けてきた単位農協がいくつもあります。一方、お役所気質のまんまの単協もあります。確実に、今以上の格差が生じるでしょう。そのとき、JAグループの結束は?

減反廃止後に過剰となるコメ。
これまで農家はJAに尻拭いをさせてきたわけです。民間や消費者に直売して、残りそうならJAに出す。JAもコメの過剰は重々承知していながら、生産者が持ってきたコメは受託する。むしろ売るのに苦労することがわかっていてもJAへの出荷を呼び掛ける。
しかし、一時的なことかもしれませんが、大量な過剰が予想されるわけです。そのとき、JAは今までどおりに売れないコメを受託するのか?しかし、皮肉にも、過剰なコメを抱えた生産者は、こんなときばかりJAをいいように利用しようとするのでは。

縁故米。
目論みどおりに中小零細農家が退場すれば、これまで流通していた縁故米が減っていくでしょう。その分、誰かの販売量が増える?
これまで好調といわれたコイン精米機の将来は?あるいは、縁故米消費者が慣れ親しんだ玄米30kgでの販売が増える?

政府の買い上げ。
なんか25年産の過剰米対策がどうのこうのと聞きますが・・・。減反廃止後にも政府買い上げでの過剰米対策なんて矛盾したことはしないで貰いたいものです。

古米とか古古米とか。
一般に現在のコメ流通では、収穫からさほど間を空けずに新米が出回ります。一般消費者向けはモチロン、業務用でも底辺クラスでなければ遅くても年内には新米へ切り替わります。
ところで、減反廃止以降は春先の作付の動向が不明瞭となるわけで、極端な余剰米が発生したり、あるいは足りなかったりということが起こりうるのでは、と思われます。現在のように誰もが気軽に新米を食べられるという状況が続くのかどうか。新米が食べられる、ということが贅沢になるのかもしれません。


と、いろいろ不安はありますが、減反廃止が必要なのは確か。カルテルの維持に税金を使うなんて、あり得ないでしょう!
ただ、もっと早い時点での廃止、本質的な改革が行われていれば、と悔みます。本質的な改革から逃げ、継ぎ接ぎ、継ぎ接ぎでその場しのぎの対応を重ねた結果、糸はもつれにもつれ、いざ改革となると複雑すぎて・・・。
遡れば、間違いの始まりは農地改革でしょうか。それから数えれば半世紀以上、小手先ではない改革になること、有意義な改革になることを、切に願います。

追補

2013年11月6日付日本経済新聞「円滑な減反廃止は可能 荒幡克己 岐阜大学教授」では、コメ偏重を改め稲作と転作の相対的収益性を是正し、デカップリングを高めた経過措置を適切にすることで円滑な減反廃止は可能だと語られます。
このようなシュミレーションが出ることで、いろいろ見通しがしやすくなりますね。

減反廃止の報道から思うこと 前篇

2013年10月24日の産業競争力会議の農業分科会から、数年程度先の減反廃止の検討および来年度からの交付金の見直しが本格的に始まりました。

「減反」見直し着手、補助金削減も検討 TPPにらみ分科会 - SankeiBiz(サンケイビズ)

これまでのところ報道された案はこのような感じ。



11月末には政府方針がまとめられるとのこと。いつかは外されることが必至であるハシゴですが、ここにきて一気に現実的になってきました。一般の関心も高いようです。

この減反廃止・補助金見直しですが、二つの段階に世間の議論があります。

一つ目は、政府、産業競争力会議の目指す農業のあり方についての是非。そもそも、大規模農家に集約し、生産性を高め、国外のコメに対する競争力を強化するという、政府が掲げる目標自体がどうなのかという議論です。

二つ目は、仮に大規模農家へ集約、生産性アップを目指すとして、減反廃止という手段が適しているかの議論です。減反廃止、補助金の縮小~廃止、中山間地は別途支援、加工用・飼料用米は手厚く保護といった政策で、果たして、大規模かつ優秀な専業農家が輝き、兼業農家が退場していくのか?世界に誇れる優れた品質のコメ、世界で通用する価格のコメが生産されるようになるのか?が懸念されているのです。

大規模化促進の是非

減反を廃止すれば、大規模農家への集約 → コストダウン → 生産性向上がおこり、コメの価格も下がる。価格が下がれば国内消費量も増えるし、海外のコメとも張り合えるようになり、関税の撤廃や輸出も可能となる。かねてより山下一仁氏などの改革派が主張していたストーリーがそのまま今回の政府・与党の検討案となっています。

まず、この方針を小農切り捨てと捉えて反対する立場があります。
この発想は、あくまでも「農業保護<農村社会の維持」というスタンスと思われます。農村社会の維持存続のために、農業支援があり、兼業収入確保のために工場等の企業誘致があり、という考え方。改革派が食料安全保障や多面的機能の確保のために農業保護の必要があると考えるのに対して、順番が逆になっています。
農林族議員やJA、左翼言論人に多い考え方だと思われます。
例えば、
岩手日報・論説 2019/10/29「減反廃止検討 小規模農家切り捨てか」
とか
「自民党の減反廃止は、小規模農家切り捨てで1戸当たり所得倍増ということだろう」民主党代表が解説 - 国会傍聴記by下町の太陽 宮崎信行
あるいは短期間で結論を出すことの拙速さを懸念する意見もあります。
社説:減反見直し 一連の議論、仕切り直せ|さきがけonTheWeb

また、そもそも日本国内ではいくら大規模化してもコスト低減には限度がある、オーストラリアやアメリカと同じレベルには成りえないと、大規模化の意義を疑問視する立場があります。
米豪レベルに広大な農地は造れません。日本だと一軒で数十ヘクタールの田んぼを持っていれば結構な大規模農家です。それも干拓地でもない限り結構分散しているし、1枚1枚の面積も数十アールならまだ広い方。移動や農機の出し入れにかかる手間も米豪の比ではない。
稲作は10haくらいで規模拡大によるコストダウンは限界だともいわれています。
さらに、国内の耕地面積の40%は中山間地。棚田に限らずとも1枚1枚が小さいうえに、形も三角形やら台形だったり、妙に細長かったり。そのような農地を集約しても大したコスト低減はできないでしょう。
ただ、集約されるのは農地ではなく農家、ということです。
国内の農地は決して過剰ではないし、輸入分を除いて考慮すれば食料生産能力も決して十分とは言えない。一方、労働力としての稲作農家数は実は過剰ということ。稲作では食えないから兼業するのではなく、農業界には稲作農家全てを食わせるほどの労働需要がないということです。専業なら1人でできる作業に10人も20人もが群がる。だから兼業で充分出来るし、コストも高くなる。一方、意欲的な若い人材は、そのような中途半端な場所に身を置きたいとは思わないはず。この現状を変えていくのが大事です。
集約の意味するところは、農地集積によるコストダウンよりも、農業界の人材リストラによる効率化でしょうか。

さらに、大企業が減反廃止に熱心であることに対する不信があります。
産業競争力会議で減反の廃止を提言したのはローソン最高経営責任者の新浪剛史氏です。言うまでもなくコンビニはおにぎり、弁当類を多く販売しており、コメの生産現場を押さえることは経営に有利であると想像されます。この参入をしやすくする、そして今まで100万軒以上の農家に分散されていた補助金等を新たな利権集団が奪い取るための減反廃止だ、と。
結局、税金を吸い上げるのが農家から一部民間企業に変わるだけのことで、それにしては破壊されるものが大きすぎるという見解です。

ところで、米屋としての私が気になるのは、中山間地の稲作。
中山間地には直接支払いによる支援が提案されているようですが、今のところ内容は不明。そもそも農地の40%を占める中山間地、そのうちどこをどう支援していくのか、有意義な内容なのか?
まあ、安倍首相のお好きな、地元選挙区内にある山口県長門市油谷の棚田などは何か支援が出るかもしれませんが。でも、油谷みたいに魅せるロケーションを持たない中山間地は?
むしろ、地味でなんの変哲もない中山間地にこそ、美味いコメを作る人がいたりするんですよね。押しつけがましい思想だとか、大上段に構えた哲学とか、ハッタリ臭い商品化やら表面だけのブランド化なんかとは無縁の、ただ淡々と研鑽し栽培し、JAや民間業者に出荷する生産者。美味いコメの生産者ってのはそんな中にいる、というのが私の実感です。商売っ気ばかりが先に立った胡散臭い生産者が悪貨のごとくに振る舞い、これら良貨のような生産者を駆逐しやしないか、という懸念を私は強く持っています。
コメ減反の見直し 農家と農村守れるのか - 社説 - 中国新聞
コメ減反見直し 中山間地を置き去りにするな | 社説 | 愛媛新聞ONLINE
社説:減反見直し 一連の議論、仕切り直せ|さきがけonTheWeb
南日本新聞 - 社説 : [減反見直し] あまりにも乱暴すぎる

あと、こういう意見もありますが・・・、申し訳ないですが、私には下記のこれら主張は単なるノイズとしか評価できません・・・
10月28日(月) 苛酷なスクラップ・アンド・ビルドが始まろうとしている:五十嵐仁の転成仁語:So-netブログ
自民党の農業潰しがいよいよ露骨になった - 弁護士 猪野 亨のブログ

長いので一旦切ります。
つづきはこちら。

2013/10/17

イオン・三瀧商事偽装事件であれこれ考える

イオングループで販売された弁当などで、「国産米」の表示に関わらず中国産米が使用されていた事件。

量の多さや期間の長さだけでなく、こんな時代錯誤で幼稚でふてぶてしい不正がイオンのような全国的に名の知られた場所で行われていたという点にも驚愕します。
その後、三瀧商事は加工用米を主食用へ転用していたこと、業務用納品だけでなく小売店で販売される袋詰精米商品にも混入していたこと取引先や関連会社などに偽装の協力をさせていたことなどが報じられました。
三瀧商事の偽装は2005年から行われていたとのこと。それから今に至るまでの間、2008年に三笠フーズの事故米不正転売が発覚し、2010年から米トレーサビリティ法が施行されているのにです。

さらに、この事件に関連した記事「『中国猛毒米』偽装 イオンの大罪を暴く」が掲載された週刊文春2013年10/17号 がイオン系列の売り場から撤去される、なんてことも。
朝日新聞デジタル:イオン、週刊文春を撤去 偽装米問題で「誤解与える」 - 社会

この事件、そしてこれをめぐる報道やネット上の意見をみていると、つぎつぎとコメの世界が抱える問題が浮かんできます。

納入価格など

さて、当初このニュースを知った時、まず思ったのは「果たして納入価格はいくらだったのだろう?」ということです。
まあ、なんと2005年から不正をしていたとのことで震災以降の高騰とは関係はなさそうです。が、それでも当時の相場からしておかしくない価格だったのか?
コメの価格というのは国内産でマトモな品物なら、ずば抜けて安いものなんてあり得ません。けっこう出来の悪い酷いコメでも、そこそこの値段します。理由もなく安いモノなんてない。これはJAグループの力ですね。逆にいいコメでも、メチャクチャな価格差があるわけじゃない。
もし、あるラインを越えて安く仕入れたいなら、かつ国内産という条件をはずさないなら、くず米・砕米・未熟粒等の混入を我慢するか、あるいはスーパーでの売れ残りや返品されたもの、精米から時間が経ったものを受け入れるか。いわゆる「捨て場」になるということ。
低価格でなおかつ、品質はおにぎりに使用できる程度にそこそこで、というのであれば外国産とならざるを得ないでしょう。
品質がよくて、安くて、国内産というのは無いものねだりというものです。どこかで無理をすれば道理が引っ込むことになる。
ある程度の規模でやってる企業のバイヤーならそんなこと知らないはずはないし、もし本当に知らなかったとしたらそれも問題でしょう。
まあ、今回の事件での納入価格や要求されていた品質について、具体的で確たる情報がないので、この点については何とも言えません。ただ、スーパーや食品工場からの要求には、価格に限らず無茶が多いことはよく耳にします。配送や搗精の時間を考えれば物理的に無理な精米日を指定されたり、店内でネズミに齧られた商品を返品してきたり。このあたりの事情を掘り下げ公にしないと、この手の事件は無くならないでしょう。
ちなみに、週刊文春10月17日号の記事には米流通業者の発言としてこんなことが書かれています。
「通常、コシヒカリの新米は一キロ三百円ほどの卸値で取引されます。しかし、イオンは『一キロあたり二百円のコシヒカリを持ってこい』というような要求を平気で言う。キロ二百円台のコシヒカリなど、あり得ません。精米や物流にかかるコストを計算すると、そんな値段で入れられるはずがない。だから、我々はイオンの求める値段では不可能とすぐ分かる。
・・・」(週刊文春10月17日号36ページ)

販売店の責任

イオン「品質について100%責任を持ちます」トップバリュー弁当の国産米表示 → 中国産米の混入が発覚 - NAVER まとめ

PB商品については販売者が100%品質に責任を持つからメーカー名は記載しないという見識については、これはありだと思います。
それが嫌な人、つまりメーカーや製造された国や地域がわからないのは嫌だという人は記載のない商品を買わなければいいのですから、記載しないことを批判するのは筋違いだと思います。

ただ、
「イオンのお米は、独自の抜き取り検査で検査済み」
というのはどういう内容の検査なんでしょうかね。
まあ、「安全」とか「安心」を安易に軽々しく売り口上にする輩は大抵が胡散臭いというのが相場ではありますが。
そして今回、自らも被害者であるようなコメントを出していたのにはゲンナリしました。

もうひとつ気になるのが、イオンのプレスリリースが出たのが9月25日、その後ツイッターなどでちらほら話題になっていたのですが、マスコミが本格的に取り上げるまでに数日間のタイムラグがあったこと。現時点でも、規模からしてもっと騒がれてもおかしくない事件なのですが。

加工用

原産国の偽装だけでなく、加工用の転用もあったようです。
誤解する人もいるのですが、加工用というのは菓子など加工食品の原料用という意味であって、肥料や工業製品の原料用ということではありません。食品としての安全性が問題なのではありません。
何が問題かといえば、カネです。加工用米というのは、その作付けについては加工用途に限定して出荷すると生産者が申請することで10aあたり2万円の補助金を受けたものです。その補助金を原資としてダンピングすることで、小麦粉やその他海外からの原料に対する競争力をもたせ消費量を増やそうということです。あくまで加工用として補助金が出されたものを転用し、低価格の恩恵を不正に享受しようとするのですから、これは消費者に対する罪というより、納税者に対する罪です。

未検査米

未検査米というのは農産物検査を受けていないコメというだけのことです。そもそも農産物検査は、放射性物質の検査でもなければ、残留農薬の検査でも、重金属の検査でもありません。産地、品種、産年、等級を確認するだけのもので、食品としての安全性をみる検査ではありません。
勘違いした人もときどきいますが、未検査米を販売したり、食材として使用することになんの問題もありません。ただ、一般消費者向けに品種や産年を記載して販売することは出来ないというだけです(以前は原産国以上の詳細な産地も記載出来なかったのですが、米トレサ法との関係で逆に積極的に記載が求められるようにすらなりました。この辺りのその場しのぎにつぎはぎしたルールがこの業界を複雑でわかりにくいものにしています。浅はかな理解に基づいて思いつきでモノを言うような人たちの声が大きいのも問題でしょう。)。
未検査米には、生産者が品質に自信があり銘柄に頼る必要がなかったり、JA以外に充分な量の直接取引先があったり、業務用需要と結び付いていてJAS表示の必要がなく、わざわざ検査受ける意味がないというポジティブなケースと、JAに出せないくらいの粗悪なものだったり、無知な消費者からぼったくるだけの生産者直売だったりの質の悪いケースとがあり、未検査米という括りだけで内容を判断することはできません。

米トレサ法

報道では2010年に米トレサ法が施行される以前の2005年からこのようなことは継続されていたそうです。しかし農水省のプレスリリースでは平成22年(2010年)10月以降の販売分が偽装であったとなっています。
2005年以降ずっと中国産・米国産米を使用していたが、トレサ法以前は伝票での産地伝達義務も、おにぎりや弁当に原産国を表示する義務もなかったので措置の対象外、ということでしょうか。
トレサ法施行以前、イオンや炊飯業者は原料米の産地など内容についてどう認識していたのか?トレサ法の前後で取引条件等は同じだったのか?なども知りたいところです。
そもそも、SBS米(中国米・米国米)を精米として販売したり、おにぎり、弁当に使用したり、飲食店で提供すること、それ自体はなんら罪ではありません。「この単価でそこそこの品質を要求するならば中国米しかない!」旨をキチンと伝えて、そう表示して納入するべきなのです。
問題なのは、堂々と原産国名を表示せずに、国内産であると小狡く嘘をついていたことです。

安全とは?中国だからだめなのか?

ところで、今回ネットなどで目についたのは、「中国産の毒米を食べさせられた!」という発言。イオンが棚からはずした週刊文春の記事も「中国猛毒米偽装」とタイトルされたものでした。
しかし、あくまで三瀧商事の罪は、虚偽の表示をしたこと、加工用米転用により結果として補助金を不正に利得し食糧たるコメの需給安定を妨害した点にあります。
たしかに中国産農産物の重金属汚染や農薬のずさんな使用は伝え聞くところですし、実際有害であることが発覚した例もあります。しかし、だからといって今回使用されたコメが有毒であったという事実があったのか?
当然に、中国の生産現場に関する伝聞や過去の事件からリスクを避けたいという消費者の意思は尊重されなければなりません。現にこのような事件を起こした企業、下請けの偽装を見抜けなかった企業がいくら安全を請け負っても信用しにくいのは確かです。また、偏見や思想・信条に起因するものであっても特定の原産国のものを買いたくない、食べたくないという意思は同様に尊重されるべきです。それを、虚偽表示で蔑ろにすることは許されない行為です。
が、今回の事件を中国産を使ったからダメだ、安全や健康を脅かされたという風にしては問題がわかりにくくなります。さらに食品は国産だったら即ち安全だという安易な雰囲気を助長しかねません。

内外価格差と一物多価

国内産米と外国産米の価格差。主食用米と加工用米の価格差。そもそもこの価格差があるからこんな悪事を働く者が出る。
ある程度の価格を割り込んでくると、やはり外国産米の方がコストパフォーマンスに優れていると言えるでしょう。国内産ならば、中米、くず米、端米、売れ残り処分品などの価格帯でも外国産ならまともな整粒だったり。
また、加工用と言ってもあくまで制度上の区分で、必ずしもモノが違うわけではない。もちろん加工用として適性がすぐれた品種が作付けされる場合も多いでしょうが、主食用に一般的に使われる品種でも加工用として申請、作付けされれば加工用。税金から補助金つけてダンピングの原資にして加工用原料の国産シェアを上げましょうという発想のもの。
コメ業界以外では一般的な議論に上がりにくい問題ですが、根深い問題です。

需給のミスマッチ

三瀧商事幹部が「イオンに指定された国産米が足りずに中国産を使った」と語ったという報道について、ネットの掲示板などでは「国産米はあまってるのに」といった反応もみられました。幹部発言はいうまでもなく「イオンに指定された内容と価格の国産米が足りない(あるいは存在しない)」という意味でしょう。
なぜコメ農家は需要側の要求を無視した生産を続けていられるのか、という点も考えてみると面白そうです。



2013/08/01

研ぎ加減、浸漬の具合はコメを見て判断するのが王道かと

ときどき、業務店のお客様のところで炊飯について聞かれたり、話をしたりする機会があります。食堂のパートさんなどに炊飯の説明をしてほしいといわれることもあります。

炊飯てものは、炊飯器に入れてしまえばほとんどブラックボックス。具合を見ながら火加減を調整したり、時間を調整したりが出来ません。
とはいえ、その炊飯器に入れる前の段階をしっかりとするだけでも炊飯の出来は大きく変わります。具体的には「研ぎ」と「浸漬」です。

パートのおばさんなどに説明するとき、よく訊ねられるのが「何回研げばいいのか?」、「何回すすげばいいのか?」、「何分浸漬すればいいのか?」など。何回とか何分とか具体的で分かりやすい答えを要求されるのです。
とはいえ、コメの状態、気温、水温など一定であるわけがなく、質問者が求めるような分かりやすく都合のいい答えは出来ません。「あくまでもコメ自体を見て判断してください。充分なだけ研いで、充分なだけ浸漬してください」と答えるしかありません。

実際、ネットでも書籍でも何回研いだらいいとか、浸漬も夏場は何分、冬場は何分などと簡単な言い方がされている場合が多いようですが、それではちょっと乱暴な感じがしていました。コメを見て判断できるようなアドバイスが必要です。

例えば、研ぎ加減なら、研いでるコメを握ってみて、そのばらけ具合が目安になります。浸漬の具合なら、浸漬米をつぶしてみてその砕け方が目安になるでしょう。その上で、「何分浸漬すれば大概は充分でしょう」など付けくわえることはありますが。
浸漬にかかる時間はコメの状態や水温に大きく影響されますので、季節の変わり目にどれくらいの時間をみておく必要があるか再度確認するとよいでしょう。

しかし、パートのおばさんらは「何回」とか「何分」といった数字を求めたがるのです。
どうも、失敗したときに「私は決められた通りにやりましたよ!」と言えるからのようです。自分で判断するという負担を嫌っているな、というのは見ていてわかります。言われた通りのことだけやっていたい、自分で考えたり判断したりするのはゴメンだ、という雰囲気です。


でも、それでは美味いご飯は炊けないのです。


2013/06/10

コメにつく虫

以前、知人から聞かれました。
「コメに虫がつくのは、それこそが無農薬の証拠だって言われたけど本当か?」
もちろん、そんな訳ありません。農薬を使ってようがいまいが、保管次第で虫はつきます。というか、今どき虫がつかない位に農薬が残留しているコメなど普通ないでしょう。

この知人は、農家から新米ということで買ったコメから糸で綴ったような虫の巣を見つけたため、本当に新米かと訝しんで確認したところ、上のようなことを言われたそうです。
確かに、収穫時期から見て虫が巣を綴るには早いかなと思えるタイミングでしたが、新米だというのは多分嘘ではない。想像するに、単にこの農家のタンクの清掃が行き届いてなかったのでしょう。隅に去年のコメと虫の巣が残っていた、それが今年のコメと一緒になって出てきたのだと思います。

一方、別の話になりますが、先日同業者との立ち話から。
この業者は、とある病院の厨房にコメを納品しています。ある日、「虫が出たすぐに来てくれ」と電話で呼び出しがあり、片道1時間かけて駆け付けたとのこと。行ってみると、ハイザーの中にコクゾウムシが一匹いたそうです。どこで入ったのか、納品時に既に袋の中にいたのかどうかは不明でしたが、とにかくその分のコメを交換して帰ったそうです。

まあ、ほっとけばコメには虫がついてしまうのです。どんなに厳重に防除しても絶対にゼロとは言い切れません。連中はちょっとした隙にでも入り込んで、卵を産みつけます。すでに農家から出荷される米粒の中に穴をあけて潜んでいることもあります。とくにこの季節は活動も活発になります。

最近TVで米びつ用の防虫剤のCMも見かけます。天然成分使用とのことですが、それを言うなら虫そのものや虫の排泄物も天然成分だったリするわけで・・・。
お勧めできる方法は、愚直に物理的に防ぐということです。

  • 米びつやハイザーは定期的に空っぽにして隅々を拭き取る。特にハイザーでは部品の裏側に巣を作られることがあり、ひどい場合は分解しての清掃が必要になる。
  • なるべくなら、コメは密閉できる容器に入れて虫の侵入を防ぐ。
  • コメや粉、麺をこぼしたままにしておかない。
  • コメは1カ月程度のうちに食べきれる量で購入する。
  • 米びつだけでなく、周辺も清潔に。
  • 隙間を好むので、丁寧にチェックすること。


ところで、昔々の時代にはコクゾウムシもタンパク源として一緒に食べていたなんて説もあります。コクゾウ、メイガの幼虫、コクヌストモドキなどのコメにつくムシは食べても害はないという人もいます。が、それは害があるということが示されてないというだけで、安全だと言い切れるものでもありません。なにより、気持ち悪いですから・・・。

まあ、消費者の方はあまり気にしすぎるのもどうかと思いますが、一方、商品として販売する側は流通業者、農家の別なく覚悟して闘い続けなければならない問題です。


ちなみにどんな虫がコメにつくのか、下記リンク先がわかりやすいです。
食品総合研究所:食品害虫サイト

2013/05/30

産地偽装のニュースに思う

最近、米穀販売業者による産地偽装の報道が多いです。
昨日も次のような記事を読みました。
東京の精米業者書類送検 コメ産地偽装の疑い - 47NEWS(よんななニュース)

事件の内容は東京都内の米穀店が、

  • 産地不明のコメ(未検査米ということ?)をブレンドして「宮城県産ひとめぼれ」として販売していた。
  • このようなブレンド米を特定の産地銘柄米として販売する行為は30年前から続けていた。
  • 昨年4月に計240キロを75,600円で販売。
  • それで不正競争防止法違反で警視庁に書類送検された。


また、FNNの記事(コメ産地偽装販売 精米店社長「本物よりうまいコメ作れる」)によると、
  • 偽装を行なっていたのは業務用精米の配達で一般向けの店頭販売では偽装はなかった。
  • 70歳の経営者は「自分がブレンドすれば、本物よりうまいコメが作れる」と語っている。
  • 2年間でおよそ145万円の利益を上げていた。

こちらの記事(ブレンド米を「ひとめぼれ」偽装 精米会社社長ら書類送検 - MSN産経ニュース)では、

  • 販売先は老人ホーム向け給食会社
  • 平成22年7月から平成24年4月までの期間に約25トン販売し140万円の利益。

ということがわかります。

まじめにやっている身としてはウンザリするような行為ですが、同業者としてこのような事件が起こる背景に関心が向いてしまいます。
以下、この事件について思ったことを書きます。

30年前

まず、30年前から偽装をしていたということ。
30年前といえばまだ食管法の時代。現在に比べて不自由な流通で、手持ちの原料で一定の食味を維持するためにブレンドは必須テクニックだったと聞きます。
そのためか、昔の人は往々にしてブレンド米に産地銘柄を表示して販売することに対し罪の意識が希薄だったりします。ちょうど今の回転寿司で、商品名とネタの本当の姿が違っていても味的にそれっぽかったら、なんとなくスルーされている事象と似たような感じだったのかな、と思います。
表示ルールも30年の間に変遷してきました。現在のJAS表示にも問題は多い。モノの本質を表すものではない、消費者よりも役人や生産者のための制度でしかないという批判もハズレではないでしょう。
しかし、だからといって現在の法を蔑ろにしていいものではありません。また、道府県レベルでの産地区分+品種という銘柄に対して消費者が抱くキャラクターイメージというものが所詮は虚妄であるというならば、法を遵守することでそれを明らかにして行くべきだと思います。

キツイ価格

240kgを75,600円で販売ということは、平均1kgで315円ですか。2年で145万円の利益というのも、恐らく粗利のことでしょう(マスコミや公務員は粗利のことを利益と雑に言う事が多い。)。25tでおよそ145万円だと1kgあたり58円、業務用の粗利としては数量次第ではこんなものかと。月に1tあまりの納入であれば、この程度の粗利でも回していけるでしょう。

315円で粗利58円なら、原価257円。1俵から精米54kg取れたとしても、13,878円/俵。
ちなみに、過去の業界紙を引っ張り出してみたところ、この期間中最も安いと思われる平成22年11月での宮城県産ひとめぼれ1等の市中価格は税別で10,800円/俵。23年に入ると高騰し始め、震災以降は拍車がかかり、24年4月の価格はなんと17,400円/俵。
それぞれの時点での精米販売価格が分からないので何とも言えませんが、いずれの時点でも宮城ひとめぼれを使用するには無理な単価だったのではないでしょうか?

平成22年11月の市中価格(商経アドバイス2010年11月8日)
平成24年4月の市中価格(商経アドバイス2012年4月26日)


これで搗精・配達してるわけですから、まあ、儲かってはいませんね。利益のためというよりも、損失を防ぐためといった方が実情に合っているのでは?
だからって同情はできませんが。

この程度の価格は、業務用ではありえないわけではないのですが、ハッキリ言ってしんどいレベル。自分なら、この価格で品種・産地の指定は受け付けません。価格に合うものから作らせてもらいます。いや、今シーズンならこの価格に合う原料の確保にも不安があるので、新規ならば取引自体を受けないかも。
産地・品種・産年を記載できる原料、つまり農産物検査を受けたコメを使うとすれば、まず1等は無理、2等でもこの価格はちょっとしんどい。でも3等や規格外を使って品質を落とすくらいなら、未検査米を使用して品種の記載なしで販売する方がいい。特に業務用ならば尚更です。
この米穀店もこの価格を守るならば、堂々と「複数原料米」で販売すればよかったのですが。
食味、銘柄、価格の3つはトレードオフの関係にあります。食味、価格が譲れないというのであれば、銘柄へのこだわりは捨てるしかない。食味、銘柄が大事というのであれば価格は高くなる。

しかし思うに、価格が価格だけに、この給食業者も銘柄にはこだわってなかったのではないでしょうか?たまたま「宮城ひとめぼれ」の袋に入っていたけど、味と価格さえ満足できれば銘柄はどうでもいい、気にしてないという感じではなかったのか?銘柄が重要な取引だと米穀店側が勝手に思い込んで、やたらと無意味な苦労をしたなんて話もありがちです。だとしたら、なんとも残念な事件です。

つまり

コメ以外の世界でもありがちですが、どうも皆さん能書きやら銘柄に判断を任せきっているのではないでしょうか。
もちろん、初めて買う時の目安として、産地や品種は便利な基準です。また、農薬、化学肥料の使用状況など五感では判断できないものに関しては表示を信用するしかありません。
しかし、そのコメが美味いかどうか、品質はどうかは、消費者自身が判断できることだし、自信を持って判断してよいことです。有名な産地銘柄であっても、口に合わなければ、そう言っても構わない。大事なのは、食べる人自身が満足できるかどうかですから。
有名産地の良食味品種であっても、個別のコメの善し悪しは生産者の管理や保管次第なのです。産地銘柄ばかりに頼ることを止めて、本質的な価値で判断できるリテラシーが消費者にも必要だと思います。コメの善し悪しは、どこどこ県産のコシヒカリだったら間違いがない、なんて安直なものではないのです。
評判の高い産地銘柄であっても全てのコメが美味いわけではないことを知っておいて頂きたいし、同時に運悪く美味くないコメに当たったとしてもそれでその産地銘柄すべてを否定しないで欲しいのです。
そういった原料のブレ、不安定さを解消して安定した内容の商品を提供することに米穀店のオリジナル商品の価値は有ります。本来は、そのためのブレンドなのです。
そういう基本的な理解の土壌が出来て初めて、瑞穂の国だとかコメの文化だとか自称できるのではないかと。

また、消費者・実需者の方にも妥当な値ごろ感を持っていただきたい。とくに業務店、食のプロであるならばその時点での相場に正しい値ごろ感をもってしかるべきです。そうすることで、悪貨が良貨を駆逐するような状況を避けられると思うのです。


しかし、このブレンド米、どれだけのものなのか一度食べてみたい。取り調べに対しても豪語するくらいだし、コストパフォーマンスはかなり高かった、のかな?。

2012/11/29

コメ高騰は全農の概算金引き上げが要因とする報道に、全農・全中が反論

8月の投稿で、JA概算金の設定に影響されて新米相場が高騰していることを書きました。
当時はまだ早期米の季節であり、一般米が登場するころには相対価格の大幅な修正もあるかもと淡い期待をしておりましたが、依然高値がつづいた状態です。まあ今でも、概算金そのままでも、あと1,500円くらいならJA相対価格も下げる余裕があるのと思ってます。

しかし全国作況指数102の発表にもかかわらず高騰がつづき、ついに一般紙も農協の概算金設定が高騰をもたらしていることを報じるようになりました。代表例は読売新聞の11月5日の社説「豊作でも高値 矛盾だらけのコメ政策見直せ」でしょう。消費者軽視の農協の理論、消費者ニーズに沿う努力の不足、飼料用米への補助金の太さなどが上手く指摘されています。

ところが11月20日に全中と全農が連名でこのような新聞報道に対する反論を行っています。

 「豊作にもかかわらず米価が高いのは全農の概算金引き上げに要因があるとする一部報道について」 

 
この反論では「全農の概算金の引き上げや集荷拡大が原因であるとの報道」は誤解を招くとして三点を主張しています。


  1. 端境期に需給がひっ迫し、そのため業者の価格水準が上昇し、概算金はそれに合わせたにすぎない。
  2. 報道されている米価は、全価格帯の加重平均。高価格帯の上昇はわずかだが業務用低価格帯の需給がひっ迫し上昇が大きい。低価格帯がひっ迫したのは「政府備蓄米の運営が、新米を買い入れ、古米を売り渡す回転備蓄方式から、買い入れた米を一定期間保管後、飼料用等に販売する棚上備蓄方式に移行したことにより、政府備蓄米が主食用に売却されなくなったことも要因の1つ」。
  3. 東北、北陸での猛暑による被害がある。精米歩留の低下が懸念されている。

三点についての感想です。
  1. 端境期の記憶を辿ってみると・・・。
    春から夏にかけて、確かに動いているコメが少なかったです。卸売りの営業も、顔は出しても「売るものがない」とぼやくばかり。ただ、今になって見ると23年産も無かったわけではない。農家から末端の米屋まで、なんだかんだいって少しずつ在庫してたみたいですね。実際、口では「無い、無い」と言ってもパニックは起こらなかった。
    むしろ、南九州から始まる早期米の概算金が軒並み高かったことがショックでした。当然、JA相対価格も、予想だにしなかった強気の値段。民間集荷業者もJA概算金が高すぎて様子見。
    米屋の現場からは、概算金設定 → 高騰という順番にみえましたね。
  2. 低価格帯ひっ迫の理由として挙げられている棚上備蓄。なんか政策が悪いような口ぶりですが、もともと回転備蓄から、隠れた価格支持政策といえる棚上備蓄への変更は生産者側が望んで実現させたのではなかったか?例えばこの記事(棚上げ備蓄で米価が上がる | コラム | JAcom)。
    また、低価格帯の不足は、上記の読売社説でも示されている飼料用米への補助金の太さが大きく影響しているといわれています。農政の責任といえばそうですが、これも生産者側としては望んでいた政策ではなかったか?
    最大の理由は、「消費者のニーズを満足させたい」という意識が生産者側に希薄であることではないでしょうか。消費者は生産者にとって都合のいいもの、生産者が作りたいものを食べてればいいのだ、という驕りがないでしょうか?
    自分たちは消費者のニーズを無視する一方で、その捨て置かれた消費者ニーズを満たすだろう米が消費者に届くことは、政治的圧力で阻止する。どうも最近、TPPに反対する農業関係者の姿がこんな感じに見えてしまって・・・。
  3. まず、高いのは玄米価格です。精米価格も高いですが、精米業者は原料の上昇分を充分転嫁できていません。歩留が悪いから商品価格を上げているという意味なら、全くのお門違いでしょう。
    もしかしたら、歩留が悪そうだから、精米の出来上がりが少なくなりそうだから、必要な玄米量を多めに見積もってひっ迫しているというのでしょうか?だとすると、なんか、ひとごとみたいですね。
ついでに確認しておきたいのが今年4月のこの記事です


集荷量減少に危機感をもち、24年産は具体的な数値目標を設定して臨んでいたことがわかります。
23年産は266万トンであった連合会出荷米を300万トンに、JA直売まで含めた集荷を23年の356万トンから400万トンにすることを目指すと。
具体策として、機動性に欠く現在の共同計算のやり方を見直すなどありますが、今年の各地での集荷に間に合ったのでしょうか?
他に有効な策がないままで、300万トンを実現しようとすれば、やっぱり力技にならざるをえないのでは?
しかし、この記事も、また今年の概算金の騒動も、「集荷すればどうにかなる」という雰囲気を全農さんから感じるのですが、やっぱり現場では高ければ米は動かないのです。
そもそも全農集荷量が減ったのは、委託する農家が減っただけでなく、全農玉に魅力を感じない買い手が増えたからでしょう。

2012/09/10

「平成のコメ騒動」の思い出

仕事柄、私は毎日、お米に触れています。
玄米を見て、搗精して、食べてみて、生産者や同業者から話を聞き、各種資料や発表に目をとおし、アマゾンで関連書籍をチェックして・・・。お米への興味は尽きません。
かといって、「日本食バンザイ!パンはダメ!ファストフード嫌い!何が何でも日本の農村を守れ!」というタイプでは決してありませんし、なりたくありません。
むしろ、食育やら日本的食生活の推進やら限界集落の再生やらに熱心な方々からすると、ずいぶんと冷めてみえることでしょう。あるいは「米屋としての責務を心得てない」と映るかもしれません。

しかし、このような当事者たちも自分たちが何をしているのやらよくわからずに踊っているような活動からは、ちょっと引いているくらいがプロの米屋として正しいスタンスだと私は思っています。いくらお米が好きでも「目がない」までになっては具合が悪い。また、お客さんにとって無意味な思い入れを押し出すことも邪魔になるでしょう。
コメ原理主義的な姿勢では、コメがファストフードやパン、麺に負けている部分も見えてこないでしょう。
そして、大げさなことを言って消費者を脅したり、怪しげな健康法や思想を商売に利用するために軽率に紹介することは許されるべきではない。
そう思っています。

そんな私が、まったくコメに関わりなく、知識もなければ興味もなく、品質も味もよく判らない小僧だった頃です。でも、この時の記憶が米屋としての考え方に影響していると思います。
平成のコメ騒動が起こった1993年、当時の私はまさか自分が米屋になるなんて思いもしない学生で、一人暮らしをしておりました。
食事は自炊と外食が3:7くらい。本当は自炊メインにするつもりだったのですが、結局は外食の割合が増えていました。
そして生じたコメ騒動。テレビでは国産米の高騰のみならず、タイ米とのブレンドを買わざるを得なくなることや、飲食店でもタイ米が使われること、そしてそのタイ米が美味くないこと!が語られます。ついでにヤミ米の話やら、なぜかお米を売る城南電機の宮路社長やらもテレビに登場して、コメの世界や農政を全く知らない人間にとってはカオスでした。

それまでの私は日本人の常識(?)にとらわれており、外食中心ではありましたが、1日1回も白飯を食べないで過ごすなんてあり得ないと思ってました。
そこに起こったこの騒動。白飯が食べられないのは困る、しかし「不味い」だの「不衛生」だのとテレビで散々脅され偏見に囚われていた私はタイ米を食べるのも気がすすまない。
で、結局その騒動の間、お米を買うこともなく、外食でもなるべくは白飯を食べず、ほとんどはファストフード、パン類、麺類でなんとなく過ごしてしまいました。

結果、よーく判ったのは「しばらくコメを食わなくてもなんてことない、他の選択肢はいっぱいある」ということ。
おそらく、この騒動で私と同じような悟りに至った人も少なくないのでは?
こういう経験は、各人のコメ離れの傾向にボディーブローのような効き目があっただろうと思います。

生産者サイドの一方的な都合によるコメ高騰を迎えている今秋、そんなことを思い出します。
今は1993年と比較して、外国産米への理解は進み抵抗はなくなっています。コメ以外の炭水化物で食事を終わらせることも当たり前の習慣となっています。
おそらく、今年の高騰は消費量だけでなく、気持ちの上でもコメ離れをもたらすのではないでしょうか。

2012/09/05

24年産新米スタート

平成24年産早期米の価格について先日投稿しましたが、その続きです。

うちの地元県内でも、早期米ではない通常のコシヒカリの刈り取りが始まり、9月の中旬には玄米の出荷スタートします。で、先日JA県連の組合長会議、全農と卸売各社との会議が相次いで開かれ価格が決定した模様です。
「やはり!」というべきか「なんと!」というべきか・・・。きちんとした見積もりはまだ受け取ってないのですが、人づてに聞いた話では、早期米と同じく昨年比2,000円のアップです。
白米にしてkgあたりの原価40円近く高くなっています。もし業務用取引先に対しての値上げ要求が受け入れられなければ、場合によっては原価割れ。
もしかしたら今年は取引先、業態など根本から見直さなければならないかもしれません。まあ、いずれはそういう時が来るわけで、これがいいきっかけかもしれませんが・・・。

しかし、私の周りでは、この価格が1年を通して続くと思っている人は少ないようです。
まず、この価格が需要と供給を反映したものではなく、JAが集荷率を上げるために農家への概算金を高く設定した結果であること。24年産の作柄は、ほとんどの地域が「平年並み」か「やや良」に含まれる見通しで、そのうえ過剰作付けもあり、数量的には余るのは必至でしょう。当初は飛び抜けて上昇した関東地方某県の概算金も、バランスを取るようにじりじりと下げてきているようですし。
業者もバカ高い24年産にあせって手を出すこともしないでしょう。にぶい動きに、仕方なくズルズルと値下げの価格改定が連続するのでは、と思われます。
(海外の干ばつの影響、他の食糧の高騰の影響がどこまであるか、など気になることはいろいろとありますが・・・。)

8月、近所のスーパーで宮崎コシヒカリ新米が5㎏2,380円で販売されていました。玄米の価格からすれば、そうならざるを得ない価格ですが、スーパーの目玉商品としてはちょっと高いな、という印象でした。その商品をスーパーに卸している業者の人から聞いたところ、全然売れないとのことでした。
ところが、9月に入ってその業者の配送トラックがたまたまうちに寄った時のこと。荷台を覗くと宮崎コシヒカリがたんまり積まれています。聞くと「値段を下げたら、バンバン売れてる」とのこと。
5kg1,990円と当初から390円の値下げ。原価割れではないけれど、搗精、配送のコストを考えると・・・ですね。9月に入り、もうじき普通の新米が出回り始めるわけですから、その前にシーズン物の宮崎コシヒカリは捌いてしまわなければならないから仕方ありません。
この業者も、自社が仕入れた値段に見合う価格設定をしたのでは売れないことはわかっていたし、こんなバカ高い米は仕入たくもなかったみたいですが、いろんなしがらみから引き受けざるを得なかったようです。
後味悪い早場米ですが、宮崎の生産者やJAは消費地の状況をどう思っているのでしょうか?まさか、「自分らは高値で売り切ってしまえばOK」ってことはないと思いますが。

2012/08/25

節米

去年に続き電力不足が懸念された夏でした。
原発の問題だけでなく、以前から「節電」の必要性は人々に認識されていました。エアコンの設定温度、LED電球や省エネ家電の使用、グリーンカーテン、クール(ウォーム)ビズ・・・等々さまざまな方法で実践されてます。

今年の夏、私は「節電」だけでなく、コメを節約する「節米」も必要なんじゃないか、なんて考えながら過ごしていました。
原発への依存度がもとから低い地方で暮らしていることもあり、電力の供給についてはそれほど切迫したものを感じずにすんだのですが、その代わりコメの供給に対しての不安は消えることがありませんでした。

この「節米」という言葉、適当に思い浮かんだ言葉だったのですが、ネットで検索してみると、国語辞典にも載っている言葉のようです。またこちらのブログには「節米器」なる道具が紹介されています。戦時下には当たり前のように節米が奨励されており、雑誌で節米の方法が指導されたり、地方によっては米の代わりに「ほうとう」を食べることが奨励されたり、また駅弁の包み紙までもが節米を説いていたようです。

しかしまあ、23年秋の収穫、在庫、消費量からしてもっと余裕があってもいいはずなのに、なぜかずっとタイトな感じ、卸売業者も売るコメがないという手持無沙汰な状態がつづきました。
産地か流通段階のどこかに隠されているのではないか?しかし、隠されていたならそろそろ出なきゃおかしい時期になっても、まだ出てこない。ならば、そもそも生産量の推計が間違っていたのではないか?あるいはまさか消費者や小売には必要な量が既に行き渡っているのか?
23年産の不足の原因についてはいろいろな説が考えられていますが、ハッキリしない。事実はどうであったのか不明なまま、24年産の新米時期となりました。真相は迷宮入りしそうです。

このように、米屋はヤキモキしたり、不安を感じながら過ごしてきたわけですが、最終的にそのお米を消費する一般家庭の皆さん、飲食店さん、弁当屋さん等には、なかなかその辺の危機感が伝わっておりませんでした。


まず、23年産の不足原因の一つとして挙げられていたのが、消費者の買いだめです。
放射性物質による汚染の不安から23年の夏には22年産が、秋以降はコメ不足の不安や災害対策用としてかなりの量を買いだめする消費者がいたと聞きます。しかし中には適切に保管されずに虫やカビを発生させ、廃棄されたコメがかなりあるという推理です。


また、業務用で発生する無駄。
飲食店・弁当店などは仕事でやってるわけですから、滅多なことでは炊飯量を減らすわけにはいきません。
お米というのは、食べられるご飯の状態にするのに時間がかかるわけで、お店はあらかじめ炊飯しておかなければなりません。
大抵のお店ではお客様の注文に対して不足しないように炊飯するわけでして、閉店時にご飯が余っているほどに用意されることになります。
余ったご飯は、スタッフのまかない飯にするか、あるいは冷凍保存して焼き飯に使うなどで無駄は減らせるでしょう。しかし、白飯で提供する場合は余った分を翌日に回すのは避けたいところで(なかには一日くらいジャーで保存したり、一晩冷蔵保存されたご飯をチンしたりするお店もあるようですが、衛生・安全の観点や食味の観点から避けていただきたいです。)、基本的には廃棄されていると思われます。

以前読んだ本「日本残酷物語〈5〉近代の暗黒 (平凡社ライブラリー)」に「残飯屋」という商売が描かれていました。残飯を仕入れて、それを貧しい人たちに安価で提供する飯屋が登場します。当時のような不衛生なやり方では論外でありますが、衛生管理がしっかりしていれば余り飯を残飯にせず安価な食材として使用することも可能性としてはありでしょう。食糧危機の到来を予想する人たちもいますし。
そうでなくても現在もエコフィードなどの利用方法もありますね。

ところで、最近の日本人のコメ消費量の平均は1人1年間で1俵を下回るといわれています。しかし、少なからぬ残飯が発生する外食・中食の利用割合が増えていることを考慮すれば、実際に食べている量はもっと少ないのではないか、そして食べられずに廃棄されているコメは相当あるのではないかと思えます。

この数年、コメ余りでダブダブというのが当たり前の状態が続いていましたが、311あたりから風向きが変わったという印象があります。ただ、実際にモノが不足しているかどうかは大いに疑問ですが、円滑な流通とは言えないのは確かです。滞りが発生する歪があり、円滑な流通を阻害する原因となっているのではないでしょうか。
この歪をなくすことが食糧安全保障にも海外のコメとの競合にも必要だと思うのですが。どうも、世間的には無邪気にこの歪をつくり育てる方向に向かっているのではないかと、そんな感じがしています。

2012/04/14

消費者委員会が議論するお米の表示・・・

内閣府消費者委員会の食品表示部会では「未検査米の品種・産年表示義務化」と「砕米・ふるい下米の混入率の表示義務化」が議論されています。3月28日の第17回会合を報じる業界紙によると「砕米」の混入割合については表示義務付けの方向になりそうだが、その他は見送られる雰囲気だと伝えられています。

今のところ第17回会合の議事録はアップされておらず、詳細はわからないのですが、その前の回、2月20日の第16回会合の議事録がアップされてました。

想像していたとおりで、どうも話が噛み合っていません。
途中、委員の一人からはこんな発言もでるくらい。
要するに、何を議論してほしいかがわからないのです。現状がどうなっていると言われても、今、調べた段階ではこうですということを我々に漠然と言われても、これは全体の表示の中で私がどれだけ重みづけて言うべきなのか、そういうことがわからない。今後はそういうことも含めて検討されるのですか。(鬼武委員)

また、米業界の片隅に身を置く一人として、普段は全農に対していろいろ思うところもある私ですが、今回ばかりは全農代表委員からの発言が至極まっとうに感じられてしまいました。

ふるい下・砕米

まず、砕米・ふるい下(くず米)の混入についてですが、普通はわざわざ入れることはありません。
そもそも、なんで精米ラインに篩その他の選別機があれほど組み込まれていると思っているのでしょうか?スペースを犠牲にし、清掃の手間が増え、ランニングコストが高くなるにもかかわらず。生産者サイドが選別した玄米をただ精米しただけじゃ商品として出せるシロモノにならないからです。
また、主食用米全体の消費量とくず米・中米の発生量、加工用の需要量等の関係を考慮すれば、中米混入自体が限られた価格帯での特殊なケース(で使えるほどの量しかない)であり、従って消費者保護の観点からもプライオリティの高くないテーマであると思われます。

あえてくず米を混入するケースは、とにかく価格を抑えた業務用かディスカウントストアやドラッグストアで売られている激安品くらいに限られるでしょう。業務用の場合は、相手もプロですから内容と価格のバランスについて納得した上でのことでしょうし、炊飯において食べるお客さんも納得できるレベルに仕上げることでしょう。ディスカウントストアの激安米も、値段なりのものだって普通わかるはずですよね。実在の消費者は消費者団体の方々が想定している(理想としている、あるいは都合のいい?)消費者像よりも賢いと思いますよ。

ただ、もしも虚偽の表示がされているならそれは別の問題ですが。例えばこれ(くず米をコシヒカリに偽装「まずい」と苦情 東京の業者3人逮捕  - MSN産経ニュース)など。謳い文句と内容に矛盾があるケース。一部の委員などはこういう悪質なケースが頻繁に生じていると思いこんでいるのかもしれません。
でもこれはくず米の混入率や3点セットの表示義務化とは別の問題。虚偽表示の問題です。また販売者名として、勝手に実在する米穀業者の名称が無断使用されていたわけで、もう偽ブランド品と同じレベルの事件です。
また上記の事件では、仕入れたディスカウントストアも、当時の新潟コシの相場からみた240円/kgという単価の不自然さや、商品の内容からも疑ってしかるべき、食品販売のプロなら判らないのは恥でしょう。
いくら表示する内容をいじくりまわしても、嘘をつく者は嘘をつく。むしろ、農産物検査などによる第三者の確認なしにさまざまな表示ができるとなれば、こういう連中にさらに嘘をつきやすい環境を与えるだけです。そういう連中を排除する仕組みとか、仕入れる側にもある程度責任を持たせるなど、嘘をつくハードルを高くする必要があると思います。

また、このような質問がありましたが、
○青柳委員 先ほどの迫委員の質問と似ているかもしれませんけれども、資料2のグラフなんですが、砕粒と価格の相関関係なんですけれども、このばらつきを見るとほとんど関係ないという感じなんです。そうなると例えば消費者の方は例えば0%のものと15%のものが同じ価格でずっと並んでおりますが、全くわからない状態で買っているという状況になってくるわけです。それと、こんなに実際に差が出るんですか。そこら辺をお聞きしたいと思っています。
そもそも、低価格米の理由はくず米の混入率だけじゃないでしょう。古米であるとか、未検査米だとか、米自体の食味が悪いとか、見てくれが悪いとか、中途半端に余った米(端米)のブレンドだとか、在庫処分とか・・・。

未検査米の品種・産年表示、複数原料米の詳細の表示

現在、品種と産年を表示できるのは農産物検査を受検したコメに限られています。
ここでの議論のひとつは、農産物検査を受検していないコメについても、産年・品種の表示を義務化するべきか、です。
もうひとつは、複数原料米について、原料玄米の品種・産地・産年の内訳の記載を義務化するべきかという議論です。
これは業界の意見と消費者団体の意見が噛みあいません。
【資料3-4】 産地・品種・産年表示等に関する関係者意見一覧 (PDF形式:170KB)の内容も含めまとめてみました。

表示を義務化するべきだという消費者団体側は、

  • 米トレサ法の伝達を根拠に表示すればいい。
  • そもそも目視検査や生産者の自己申告に基づく農産物検査では根拠とするには弱い。
  • 農産物検査でつけられた等級が精米のJAS表示では消費者にわからない。
  • 「複数原料米 国内産 10割」の表示では消費者の知る権利をまもれない。

3点セット表示は困難だとする業界側は、

  • 農産物検査に代わって内容を担保するものが現状存在しない。米トレサの伝達では担保として不十分で、それを根拠にするならば虚偽表示が横行するだろう。
  • 生産者から提出される書類やその他の状況を加味して行う農産物検査はそれなりに信頼性がある。
  • 複数原料米として販売している商品は内容が都度変わることが多く、表示するのは非現実的。

私の考えです。
まず、米トレサ法の伝達は根拠として十分か?
私は嫌ですね、気味が悪い。
よく知っている生産者から直接買ったとか、まあ間に1人くらい入ったとしても出所がよく判っている場合ならいいのですが。
例えば卸売業者から仕入れた未検査米、袋には何の表示もなく、ただ産地・産年・品種が伝票に書いてある。これはどこの誰が確認したのか?卸売業者もどこぞの集荷業者の伝票に書いてあることを写しただけ。これで、表示を義務付けさせられるのは、気持ち悪いですね。
まあ、販売者が責任持てる範囲でなら「未検査」の旨併記で記載してもいいという程度なら理解できますが、義務化はおかしいでしょう。
また、義務化となった場合、それこそH23年産魚沼コシヒカリに、同じく魚沼コシの中米・規格外を混入させている場合は、「単一原料米 魚沼 コシヒカリ H23」という表示が義務付けられることになるでしょう。

農産物検査について。
農産物検査も大抵は地元のJA職員が行っています。種もみの購入、栽培履歴などの書類だけでなく、実際の田んぼの位置や作業の状況まで丸見えです。また近所の目もありますので、この時点で品種について嘘をつくことは難しいでしょう。
少なくともトレサ法の伝達よりは頼りになります。
会合では次のような発言もありました。

○夏目部会長代理 私は米を栽培している生産者の立場と、皆さんのように米を消費する消費者の立場で見ますと、先ほどたびたびお話が出てきますように、お米を栽培して販売をしていくまでは信用取引だと思います。栽培履歴を私たちは一生懸命書きますけれども、それはあくまでも自主申告でありますし、トレーサビリティの根拠になっているのも自主申告なんです。農薬の使用状況も全部自己申告です。そこでもって、それが信用できないということになりますと、全くそれは取引ができない、生産もできない状況になるというのが、これは生産者の現場で申し上げたいと思います。
勿論、米を栽培するときに全く独立して、自分1人だけが例えば人の介在しないような場所でつくるわけではありません。多くの生産者の中で水田というのはあるわけですから、つまり地域の中ではだれがどの段階で例えば農薬を使い、どこの水田、圃場でどの品質をつくっているかというのは一目瞭然なわけです。そういう中で皆さんは一生懸命つくっているということを御理解いただきたいというのが生産者の立場です。
コストと信頼性を考慮すれば、現時点では農産物検査を唯一の表示の根拠にするのがベストではないかと思います。ただ、農産物検査を行っているのがほとんどJAであり、JAに販売委託しない農家は受検しにくいという状況は改善の余地があるのではないでしょうか。JAに委託しない生産者も受検しやすい環境が必要だと思います。

等級について。
ハッキリ言って、等級は原料玄米を精米に加工する米屋、精米業者のためにあるもので、消費者のためにあるのではないと思っています。
消費者にとっては、商品として手にする精米が食味・鮮度・安全性・価格など諸々の観点から見て納得できるものに仕上がっていることにこそ意味があるわけです。精米業者にとって玄米は商品を作る原材料です(このことはブレンド米はもちろん、単一原料米においてもそうです。)。その使い勝手とか歩留の善し悪しによって原料の価格に差が出るのは当然だし、そのための基準も必要です。
また、農産物検査の等級は外観検査だけだと批判する方々もいますが、外観と食味にはある程度の相関関係があると経験から感じてます。そもそも、外観に問題が生じているということは、何らかの問題(栽培技術の未熟、管理の懈怠、生育不良、倒伏、害虫の食害、病気など)があったことをほのめかしているわけですから。
ついでに書きますが、精米する立場から見ると1等の基準って結構低いです。ギリギリ1等に引っかかった玄米は、かなりモノが悪いです。同じ1等でも上の方と比べると、物凄く、大きな差があります。1等での上下差があまりにも大きいので、1等よりも上の等級、例えば「特等」なんてあればいいな、と思ってるくらいです。
ただ、山浦委員が発言しているように、白米においても消費者に示す等級のようなものが必要だろうと思います。とくに購入時に現物を目視できないネット等での取り寄せほど、より必要とされるでしょう。その基準設定の際に考慮されなければならないポイントは多数あり、くず米、砕米の混入率だけの話ではありません。

複数原料米の内容の表示について
【資料3-4】 で主婦連合会は複数原料米について次のように意見しています。

「複数原料米・国内産・10割」との簡略表示が許されていることにより、国内産であれば古米、古古米、ふるい下米、餌米、加工用米、米粉用米を混入しても無表示で良く、違法にならないのは不合理です。
まず気になったのは、餌米、加工用米、米粉用米を主食用に使うのは単一原料米だろうが複数原料米だろうが違法なのじゃないでしょうか?これは複数原料米の表示の仕方とは別の問題でしょう。
また、より詳しい内容が判らなければ嫌だというのなら、このような表示の商品を避ければいいだけの話だと思います。

全体の感想

文字で読んだ限りでの印象ですが、それぞれが代表して出てきた団体の主張を言い合うばかりで、相手の意見を理解しようとする雰囲気が感じられませんでした。何のために顔を合わせて意見交換しているのか。
また、一部の委員の方々は木を見て森を見ていないのではないか、というのが感想です。はたしてそれが消費者にとって意味があることなのか、利益になることなのか。自分たち団体のプレゼンスを高めるのに、この場を利用しているだけじゃないのか?と邪推したくもなります。

未検査だろうが複数原料米だろうが、とにかく表示をさせろって感覚は理解できません。虚偽表示が頻発することでしょう。表示制度そのものが信頼できなくなってしまいます。

しかし、そもそも3点セットの表示だけでお米を解ろうとする安易な感覚がいつまでも蔓延してるのがおかしなこと。そろそろ、そこを疑ってもいいのじゃないでしょうか。

2012/04/04

お米の表示について思うこと その2

以前、内閣府消費者委員会の食品表示部会で議論されている「未検査米の産地・産年・品種表示」「低品質米(くず米)使用の表示」の義務付けについて疑問に思っていることを書きました

その後3月28日に第17回会合が開かれたようです。以下、リンクを張ります。

消費者庁から論点整理が提出され、それに基づいて「品位の表示」、「未検査米の品種・産年の表示」、「複数原料米の産地・品種・産年の表示」の義務化について意見交換がされたようです。

とりあえず
  • 現時点では農産物検査に代わる第三者機関による証明方法がなく、それによらない(米トレサ法の範囲での)品種・産年表示義務化は困難 
  • コストや内容の流動可能性から複数原料米の内容の表示義務化は非現実的 
  • ふるい下米の表示義務化は困難だが、砕米の混入率は表示させるべき 
という方向になるようです。

未検査米、複数原料米の3点セット表示

未検査米の表示義務化、複数原料米の内訳表示義務化が非現実的なことについては、なんとか認識されたのでしょうか。
4月2日付「商経アドバイス」紙の記事によると、
また、米トレサ法の拡充による品種・産年の表示が厳しいことが示された消費者代表委員は、「食品表示部会の親委員会である消費者委員会を通し、農水省等に米トレサ法がこのままでいいのか問題提起していきたい」と語り、食品表示部会とは別に米トレサ法での活用に路を開いていく考えを示した。(「商経アドバイス」2012年4月2日)
とのことですが、どうも米トレサ法を過大評価しているように思えます。

とはいえ、私は、販売者の責任において、未検査の旨を併記してなら品種・産年を表示してもいいくらいには思っています。すぐ近くの生産者からの仕入で圃場もよくわかっていて信用もできる場合など、販売者の責任で表記できてもいいのではないでしょうか。
しかし、「義務化」というのは、何か間違っていると思います。

ふるい下、砕米

「ふるい下」と「砕米」って知らない人にはイメージがつかみにくいと思います。

お米は籾摺りのあと、未熟な米を取り除いて粒を揃えるためにふるいにかけられます。そのふるいの幅ですが、小さいもの(基準が甘いもの)で1.8mmくらいから、大きいもの(厳しいもの)で2.0mmくらいです。1.8mmを使ったほうが歩留りはよくなるのですが、さらに粒揃いのよい仕上げを求め、他との差別化やブランド化を狙う生産者や地域ではより網目の大きなふるいを使う傾向にあります。このとき下に落ちたのが「ふるい下」。いわゆる「くず米」です。
例えば2.0mmのふるいで下に落ちたくず米を、再び1.7mmとかのふるいにかけて選別したものなどが「中米(ちゅうまい)」なんて名称で呼ばれています。主に取り扱うのは「特定米穀業者」と呼ばれる業者です。また、生産者や生産者団体がそれを農産物検査に出し、「規格外」として品種・産年・産地の証明を受けて出荷することもあるようです。
外観は薄っぺらくて色も青かったり白かったりの未熟な感じで、パッと見、米と言うよりも鳥の餌ってイメージです。もちろん、米であるのは確かなんですが。
ディスカウント店で売られている激安米を見ると、妙に薄べったくて白く濁ったのがありますが、おそらく中米、規格外がメインで作られているのでしょう。

「砕米」は文字通り、砕けたお米。上記のふるい選別の時にも分別されますが、精米するときにも発生します。割れる原因としては刈り取り前に稲を倒してしまったとか、収穫後の乾燥に問題があったとか、保管や運送時の温度・湿度が適切でなかったなどです。もともとの米質が軟らかく精米時に割れやすいものもあります。
しかし、この砕米をコストを下げるためにわざわざ混入する業者が、果たしてどれほどいるものかと疑問に思ってます。
コスト低下の効果を出すには、ある程度の高い割合で混入しないとならないでしょうが、それでは外観からも炊きあがりからもクレームは必至でしょう。いくら低価格米の要望が強い業務用といっても、炊飯での歩留りが悪くなるほどであれば本末転倒ですし。

砕米の表示

報道などによりますと、「ふるい下米」の混入の表示は見送られそうですが、「砕米」の混入率は表示することになりそうです。
ただ、砕米ってのは上記したように、中米みたいに意図的に使用するケースってのは稀だと思えます。ほとんどが意図しない混入で、それをパーセントで表示してどれだけ意味があるのかな、と。
これも結局、精米業者、販売業者の自己申告ですから、農産物検査の等級付けとは全然違ったものですが、消費者委員の方々はどうイメージしているのでしょうか。なんか現実と委員の方々のイメージするものとの間に大きなギャップがありはしないか気になります。

中米にしても、それを使うのは一般向けならディスカウントストアやドラッグストア向け激安品、スーパーであれば特売品ぐらいで、あとは外食・中食向けの最安価格米でしょう。
まあ、激安量販店で売られている廉価品は、そりゃもう、中米・くず米で出来てるのが見てすぐに確認できるくらいのモノですが、その代わり価格も内容と釣り合うくらいに安いです(10kg2,000円台前半とか)。内容がそれなりのモノだってことは社会常識の範囲で識別できるレベルで、表示云々以前の話だと思います。そもそも、砕米や中米の混入を気にする人はそんなお米を買わないし、買う人はそんなことは気にしてない或いは納得ずく、ということでしょう。

思うに・・・

ただ、店頭で買う場合はこう言えても、問題はインターネット等での通販でしょうね。
お米を販売しているサイトでは美味しそうに炊けた御飯の写真がよく載ってますが、いろいろ見てると別のサイトでも同じ写真が使われてたりして・・・。売ってる商品そのものの写真ではなくて、どっかから買ってきた写真を載せてるわけですね。販売するお米そのものの写真をきちんと掲載しているお店もありますが、多くのサイトが載せているのは単なるイメージ写真に過ぎないです。
また、ネットでは米のことも全然わからないような素人が販売していることもあります。先日、地元の他業種の会社が運営している通販サイトを見てたら、地元スーパーで3,700円くらいで売られている県内の某卸売業者がつくった商品が5,170円送料別で売られていて苦笑しました。まあ、うちの県内でしか作られていない品種で他所の人には珍しいかもしれませんが・・・、食味はイマイチなので地元では人気ない品種なんですよね。米屋ならプライドが邪魔して、出来ないことです。
でも、これはまだマシなケースだと思います。お米って乾燥していて少々保存が出来てしまうために、これが食品だってことを忘れてるのじゃないかって業者もいますから。適切な温度、湿度で清潔に保管してても、時間経過と共に劣化は避けられないものですが、どうも甘く見ている人々もいるようで。
ネット販売こそ消費者に誤認をさせるようなまやかしに溢れているわけで、いかにすれば商品の実際や販売者の実態についての情報を消費者が正しくつかみとることが出来るか、その仕組みづくりのほうが有意義なんじゃないか、と思います。

ところで、2月20日の第16回会合の議事録もネットで公開されていました。こんど改めて、その感想も書こうと思います。

2012/03/26

最近の「6次産業化」って何を目指しているのだろう?

「コメ」あるいは「農」にまつわる問題が話題になるとき、二つの異なる問題がごっちゃにされがちな気がします。
一つは、産業としての農業。各戸が順調に経営でき、税を納めて、国民の需要を満足させ、さらには輸出も可能な農業。どうしたら、そうできるのかという問題。
もう一つは、農村、農家の存続。消滅していく集落、継ぎ手のないイエ、地域の特色ある伝統文化をどう守るのかという問題です。

わたしは、これら二つは相反するものと考えています。一方を満足させるには、一方を犠牲にするしかない。
これまでの農政はどちらへも中途半端に応え、バランスを取りながらやってきた。騙しだましに、問題を先延ばしてきた、とも言えるでしょう。どちらかが完全に犠牲になることもなかったけど、どちらの問題も解決されていません。

このように農政を認識しておりますので、近年の「6次産業化」ブーム、国の支援などについても、これまでのモラトリアムの延長くらいに捉えていました。
そんな先日、業界紙「商経アドバイス」紙で気になるコラムを読みました。
曰く、「餅屋さん」が集まる懇親会に参加したところ、「6次産業化」が話題になったが参加者は一様に怒っていた。なぜ怒っていたかというと・・・
◇公平な競争で負けるのならば文句はないが、ライバルたる農家は補助金付き“特別待遇”での6次化展開。だが、もち米・餅・和菓子を知り尽くした「プロ中のプロ」である彼らが本当に憤っていたのは、そこではなかった。本業の彼らから「餅の神様」と呼ばれる社長いわく「農家の手作り餅というイメージだけで売れるのかもしれないが、餅のことを何も知らず、深く学ぼうともせず、薄っぺらな製品が多い。本当に良いものを作ろうという気があるのか疑いたくなる。やるなら本気でやれと言いたい」。 (「商経アドバイス」2012年3月12日「時の声」)
そして、もし6次産業化というものが補助金付きで「悪化が良貨を駆逐する」ものならば、餅屋さんだけでなく消費者や米穀業者にとっても願い下げだろうと締められています。

ここ数年のブームに乗り遅れまいと無理やり企画したような薄っぺらな6次産業化がらみの事業ってありがちですね。
もちろん、素晴らしいモノ、サービスを提供されているところも多々あります(20年、30年とブームに関係なく取り組まれているところも沢山あります)が、全体として見て補助金を含めたこのお祭り騒ぎが価値ある何かを残すとは考え難いです。これらの事業が国民の食を支えるなんてことは考えられないし、地域経済にどれだけ意味があるかも疑問です。
補助金をつぎ込んで、なにを目指しているのかよくわかりません。

補助金もらって稼働率の低い中途半端な機械を買い込んで、規模に比して過剰な数の人間が絡んでくる。スケールの小さな(採算取れないだろうと想像される)主体が、わさわさと数ばかりは沢山。
それぞれが独自に設備を持ち、経費を負担する。

今後、あまたある事業の中から、真に成功事例といえるケースも出てくるだろうとは思います。いくつか成功例が出てくれば、それでヨカッタということなのかもしれません。
私が子供のころは小さな食品メーカーが多数ありましたが、競争、淘汰により衰退しました。6次産業化認定のリストを見てると、そのような有象無象の小規模メーカーの群雄割拠をちょっと連想したりもします。ここで競争が起きると面白いことが起こるかもしれませんね。
ただ、全員の「共存」が農業界の譲れないテーマである限り、それはないのかもしれませんが。

結局、今の雰囲気からは、6次産業化=「農業では抱え込めない農村の過剰な労働力を、とりあえず世代交代でそれが消滅するまでの時限的な受け皿」って印象をもってしまいます。
しかし、農家、農村はこれで儲けられなかったとしても、建物、機械設備、コンサルティング、ブランディングなどで関係する人たちはきちんと儲けているのでしょうね・・・。