2012/04/04

お米の表示について思うこと その2

以前、内閣府消費者委員会の食品表示部会で議論されている「未検査米の産地・産年・品種表示」「低品質米(くず米)使用の表示」の義務付けについて疑問に思っていることを書きました

その後3月28日に第17回会合が開かれたようです。以下、リンクを張ります。

消費者庁から論点整理が提出され、それに基づいて「品位の表示」、「未検査米の品種・産年の表示」、「複数原料米の産地・品種・産年の表示」の義務化について意見交換がされたようです。

とりあえず
  • 現時点では農産物検査に代わる第三者機関による証明方法がなく、それによらない(米トレサ法の範囲での)品種・産年表示義務化は困難 
  • コストや内容の流動可能性から複数原料米の内容の表示義務化は非現実的 
  • ふるい下米の表示義務化は困難だが、砕米の混入率は表示させるべき 
という方向になるようです。

未検査米、複数原料米の3点セット表示

未検査米の表示義務化、複数原料米の内訳表示義務化が非現実的なことについては、なんとか認識されたのでしょうか。
4月2日付「商経アドバイス」紙の記事によると、
また、米トレサ法の拡充による品種・産年の表示が厳しいことが示された消費者代表委員は、「食品表示部会の親委員会である消費者委員会を通し、農水省等に米トレサ法がこのままでいいのか問題提起していきたい」と語り、食品表示部会とは別に米トレサ法での活用に路を開いていく考えを示した。(「商経アドバイス」2012年4月2日)
とのことですが、どうも米トレサ法を過大評価しているように思えます。

とはいえ、私は、販売者の責任において、未検査の旨を併記してなら品種・産年を表示してもいいくらいには思っています。すぐ近くの生産者からの仕入で圃場もよくわかっていて信用もできる場合など、販売者の責任で表記できてもいいのではないでしょうか。
しかし、「義務化」というのは、何か間違っていると思います。

ふるい下、砕米

「ふるい下」と「砕米」って知らない人にはイメージがつかみにくいと思います。

お米は籾摺りのあと、未熟な米を取り除いて粒を揃えるためにふるいにかけられます。そのふるいの幅ですが、小さいもの(基準が甘いもの)で1.8mmくらいから、大きいもの(厳しいもの)で2.0mmくらいです。1.8mmを使ったほうが歩留りはよくなるのですが、さらに粒揃いのよい仕上げを求め、他との差別化やブランド化を狙う生産者や地域ではより網目の大きなふるいを使う傾向にあります。このとき下に落ちたのが「ふるい下」。いわゆる「くず米」です。
例えば2.0mmのふるいで下に落ちたくず米を、再び1.7mmとかのふるいにかけて選別したものなどが「中米(ちゅうまい)」なんて名称で呼ばれています。主に取り扱うのは「特定米穀業者」と呼ばれる業者です。また、生産者や生産者団体がそれを農産物検査に出し、「規格外」として品種・産年・産地の証明を受けて出荷することもあるようです。
外観は薄っぺらくて色も青かったり白かったりの未熟な感じで、パッと見、米と言うよりも鳥の餌ってイメージです。もちろん、米であるのは確かなんですが。
ディスカウント店で売られている激安米を見ると、妙に薄べったくて白く濁ったのがありますが、おそらく中米、規格外がメインで作られているのでしょう。

「砕米」は文字通り、砕けたお米。上記のふるい選別の時にも分別されますが、精米するときにも発生します。割れる原因としては刈り取り前に稲を倒してしまったとか、収穫後の乾燥に問題があったとか、保管や運送時の温度・湿度が適切でなかったなどです。もともとの米質が軟らかく精米時に割れやすいものもあります。
しかし、この砕米をコストを下げるためにわざわざ混入する業者が、果たしてどれほどいるものかと疑問に思ってます。
コスト低下の効果を出すには、ある程度の高い割合で混入しないとならないでしょうが、それでは外観からも炊きあがりからもクレームは必至でしょう。いくら低価格米の要望が強い業務用といっても、炊飯での歩留りが悪くなるほどであれば本末転倒ですし。

砕米の表示

報道などによりますと、「ふるい下米」の混入の表示は見送られそうですが、「砕米」の混入率は表示することになりそうです。
ただ、砕米ってのは上記したように、中米みたいに意図的に使用するケースってのは稀だと思えます。ほとんどが意図しない混入で、それをパーセントで表示してどれだけ意味があるのかな、と。
これも結局、精米業者、販売業者の自己申告ですから、農産物検査の等級付けとは全然違ったものですが、消費者委員の方々はどうイメージしているのでしょうか。なんか現実と委員の方々のイメージするものとの間に大きなギャップがありはしないか気になります。

中米にしても、それを使うのは一般向けならディスカウントストアやドラッグストア向け激安品、スーパーであれば特売品ぐらいで、あとは外食・中食向けの最安価格米でしょう。
まあ、激安量販店で売られている廉価品は、そりゃもう、中米・くず米で出来てるのが見てすぐに確認できるくらいのモノですが、その代わり価格も内容と釣り合うくらいに安いです(10kg2,000円台前半とか)。内容がそれなりのモノだってことは社会常識の範囲で識別できるレベルで、表示云々以前の話だと思います。そもそも、砕米や中米の混入を気にする人はそんなお米を買わないし、買う人はそんなことは気にしてない或いは納得ずく、ということでしょう。

思うに・・・

ただ、店頭で買う場合はこう言えても、問題はインターネット等での通販でしょうね。
お米を販売しているサイトでは美味しそうに炊けた御飯の写真がよく載ってますが、いろいろ見てると別のサイトでも同じ写真が使われてたりして・・・。売ってる商品そのものの写真ではなくて、どっかから買ってきた写真を載せてるわけですね。販売するお米そのものの写真をきちんと掲載しているお店もありますが、多くのサイトが載せているのは単なるイメージ写真に過ぎないです。
また、ネットでは米のことも全然わからないような素人が販売していることもあります。先日、地元の他業種の会社が運営している通販サイトを見てたら、地元スーパーで3,700円くらいで売られている県内の某卸売業者がつくった商品が5,170円送料別で売られていて苦笑しました。まあ、うちの県内でしか作られていない品種で他所の人には珍しいかもしれませんが・・・、食味はイマイチなので地元では人気ない品種なんですよね。米屋ならプライドが邪魔して、出来ないことです。
でも、これはまだマシなケースだと思います。お米って乾燥していて少々保存が出来てしまうために、これが食品だってことを忘れてるのじゃないかって業者もいますから。適切な温度、湿度で清潔に保管してても、時間経過と共に劣化は避けられないものですが、どうも甘く見ている人々もいるようで。
ネット販売こそ消費者に誤認をさせるようなまやかしに溢れているわけで、いかにすれば商品の実際や販売者の実態についての情報を消費者が正しくつかみとることが出来るか、その仕組みづくりのほうが有意義なんじゃないか、と思います。

ところで、2月20日の第16回会合の議事録もネットで公開されていました。こんど改めて、その感想も書こうと思います。

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