2014/08/04

やっぱり浸漬

 炊飯でなにが重要かって、やっぱり浸漬だと思います。
 研いだ後、炊飯開始までしっかりと水に漬けて吸水させる行為。「浸す」と書いて「かす」と読んだりもします。最近つくづく、この工程を軽んじている人が多いと感じてます。
 イマドキの炊飯器は炊きあがり後の蒸らし時間までプログラムに入っているのが普通ですから、浸漬させる工程が余計に面倒くささく見えるのかもしれません。無洗米なら、なおのこと、水加減してスイッチ入れるだけのお手軽さが当前だろ?と考える傾向にあるのかもしれません。
 ただ、美味しく炊飯しようと思うなら、ここは端折ってはならない部分でしょう。デンプンが糊化するには水分と熱が必要ですが、米粒の中心まで水が浸透するのに充分な浸漬時間がないと、中心部が糊化しきれない芯のあるご飯となります。
 また、このようなご飯は短時間で硬化しがちです。「冷めてもおいしいご飯」には、コメ自身の品質だけではなく、きちんとした炊飯も必要というわけです。いやむしろ、充分な浸漬が出来ているかどうかの方が影響大かな、と思ってます。

 で、どれくらいの時間、浸漬が必要なのか。

 よくいわれるのが、「冬場2時間、夏場1時間」。人によっては「冬場1時間、夏場30分」。でも、私の考えは、「夏場でも2時間浸漬したものは美味さが違う」です。
 芯まで吸水させるという観点からは、夏場でも30分では短いと思います。じゃあ、なんで夏場の浸漬は短時間でいいと言われ続けているのか?安全上、衛生上の観点からみれば、夏場にコメが漬けられた栄養たっぷりの水は簡単に腐敗してしまいます。長時間の浸漬はそういう危険があるのです。炊飯から変な臭いがしたり、黄色ないしは茶色っぽかったりするのは、何らかの菌が繁殖していると考えられます(余談ですが、炊飯器の内蓋の裏や蓋の蒸気が抜ける部分も毎回清潔にしましょう!)。
 じゃあ、夏場はきちんと浸漬した美味いご飯は諦めるしかないのか?対策としては、冷蔵庫に入れて浸漬させるということになります(冷蔵庫を使ったからといっても絶対な安全はありません、夏場は腐敗のリスクが高いので五感を活用してご注意ください。)。
 で、浸漬が完了したら、ざるで水をきって、一度かるく流水ですすいでから水加減して炊飯開始すれば理想でしょう。

 まあ、確かに面倒くさい。パンは買ってくればすぐに食べられるし、パスタなども熱湯に入れてから長くても十数分間茹でればOK。それに比べて、何時間も前から準備に取り組まないといけない。コメの消費増を願う米屋からすると、あまり口にしたくない不都合な真実ではあります。ではありますが、この手間をかけるか否かで世界が違うのは確かです。

 しかし実際、営業として飲食を提供しているところでも浸漬は軽視されているんです。
 先日、取引先でライスを食べたところなんか口当たりが悪い。調理現場のパートの方に浸漬はどれくらいしてるのか聞いてみたら、「うーん、10分くらいかな?」とのこと。「それじゃあ短すぎる、せめて1時間!」と言ったのですが、内部の事情がいろいろあるみたいで改善は難しそう・・・。ここは営業開始してから、たぶん15年近く経つと思うのですが、その間ずっとこのやり方でやってきた様子。
 いや、実にもったいないと思うんですが。