2013/05/17

全農の24年産米概算金値上は集荷増に効果あったのか?

1ヶ月前のちょっと古い記事ですが。
全農は今年も同じことやるのでは?という噂もちらほらあるので。

全農のコメ集荷量3.1%増、7年ぶり前年上回る :日本経済新聞

昨年に全農が実施した集荷テコ入れは、熱心に農家へ顔を出して出荷を頼んだり、集落営農のキーパーソンを狙ったネゴなどの地道な行動も含まれると思います。
が、このテコ入れの目玉は、やはり概算金の大幅な値上げでしょう。
その結果、24年産米の全農取扱量が前年比3.1%増の276万3000トン、JAグループ全体では前年比1.9%増の367万2000トンとのこと。
記事には、この結果について肯定的な全農幹部の言葉が載っています。
 商社や民間集荷業者との競争が激しく、全農単独目標の300万トンには届かなかったが、集荷てこ入れで「長期低落に歯止めがかかった」(全農幹部)と強調。

しかし、あれだけの無茶な概算金値上げにも関わらず目標300万トンには程遠く、傍から見てこれでは失敗でしょう。
この微妙な増加すらも、補助金たっぷりの新規需要米のおかげで、実は主食用は・・・という見方もあります。

いくら衰退したと言っても全生産量の半分近くはJAグループが取り扱っており、その動きが与える影響は大きいです。
概算金の大幅値上げは、流通、加工、飲食業、最終的には消費者全般と、農民以外の国民全体をカバーする相当な広範囲に悪影響を及ぼしました。
国民生活に大きな犠牲を強いておきながらも、目標達成は失敗。全農は自分たちがかけた迷惑について全く自覚できていないようです。さらに本年度も同じことを繰り返そうとしているとすれば、単なる幼稚な甘えといって過言ではないでしょう。
現在、概算金に起因する高値ゆえ、流通での動きがひどく鈍っています。卸売業者などは高く買わされた在庫についても、ダンピングしてでも捌かなくてはならず、値崩れがおきています。これをかぶるのは中間流通業者。全農は後のことなど知らん顔。
実需の現場からは早期の関税撤廃を含むフェアな流通を待望する声がでるのも当然でしょう。


そもそも、概算金が上がれば農協の集荷率が上がるのか疑問です。

農協に出さずに業者や消費者に販売する場合、価格の設定は二通りあります。
一つは概算金や相場とは関係なしに毎年決まった価格で取引するやり方。
もう一つは概算金を基準にプラスアルファするやり方。

前者は生産者と買手の結び付きが比較的強い場合が多い。生産者の技術もそこそこにあり、安定した品質と量の供給が期待できる場合にはこういう付き合い方もできる。
またこういうコメは、一般消費者向け直売であったり、業務用であっても品質を価格より重視するちょっとこだわった店舗などへ向けられます。
難しいのは、年によっては相場と大きくかけ離れること。生産者から消費者までが一貫して相場とは関係ない値ごろ観を共有していることが必要。途中で誰かが、相場と比較して高いとか安いなどを言い出したら成り立ちません。
この手の価格設定は、そもそも良い時も悪い時も安定した価格での取引を継続することで相場のリスクを消すのが目的です。概算金が上がったからと言って、いきなり農協委託に切り替えということはあまりないはずです。もちろん、一部には目先につられて高い方へ流す生産者もいるとは思いますが。

後者の場合、概算金が上がれば民間業者への販売価格もそれにつられて上がるだけで、概算金が民間業者の買取価格を大きく上回ることはない。別に農協への委託が有利になるわけでもないのです。


わたくしは以上のように考え、概算金の値上げは集荷増に大して効果がないだろうと見ます。
一方、アンフェアな方法による米価の上昇はコメ流通の停滞や消費の低迷をもたらすでしょう。

本当に集荷率を上げたいのならば、生産者との関係の強化、職員の資質の向上、魅力的な企画などにより、生産者がJAへ委託することのメリットを自発的に感じることが必要かと。

さらに、JA取扱量へ影響するのは生産者側の意識、行動だけではありません。
買う側つまり卸売、小売、実需者からみて、JA、全農を通すことに強いメリットがなければダメでしょう。
むしろ見落とされているこっちがポイントかも?

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