2012/02/27

松屋、豪州産米使用宣言のインパクト 前編

2月13日のニュースで牛丼の松屋が、オーストラリア産米を導入することが報じられました。
また、21日の記事では一部店舗で使用を開始したとのこと。国産とのブレンドだそうですが、7割の店舗で使用するそうで、おそらくうちの近くの店でも食べることができると想像します。

このニュースがインパクトを持っているのは、メジャーなチェーン店である松屋が、外国産米を使用することを正面から宣言したことにあります。なかには「大手外食チェーンなんてもとから外国産米を使ってたんじゃないのか?」なんて感じている人もいれば、「外国産米=インディカ米」と思いこんで強烈な拒否反応を示す人や、TPPの件と混同している人もいるようです。誤解も多いような部分なのでちょっとまとめてみます。


米トレサ法と22年産米の暴落

まず、ここ数年のコメ流通の状況を記してみます。
平成22年10月、23年7月の2段階にわけて米トレーサビリティ法が施行されました。これにより、飲食店などで米飯類を提供する場合も、お客様に産地を明示する義務が課せられました。
従来、外国産米を使用していた業者も使用を避け、国産米へと切り替えがすすみました。

一方、平成22年は史上最悪の米価水準を記録した年でした(田植前にすでに予想されていたことでしたが)。そのためコスト重視の大手チェーン店などでも、安くなった国産の銘柄米が使えるようになりました。
例えば、この年の秋以降、某大手牛丼チェーンは「国産コシヒカリ使用」を積極的にアピールし、いかにも日本の農業を考え貢献しているかのようなイメージの広告を頻繁に出していました。よくウェブサイトの端っこに出ていた広告をご覧になった方も多いと思います。で、確かに、明らかに、このチェーン店のご飯の味は変わりました。かつては「よくこんな、ひねた米をを使うなあ。」とあきれるほどに胸焼けのするクオリティだったのですが、ホントだいぶ良くなりました。


22年度のSBS米

ところで、日本へ輸入するコメには関税がかからないMA枠があります。これが年間77万トンほどですが、大部分は農林水産省が砕米などを輸入し加工用や援助用にまわしています。なんで農水省がそんなことをするのかというと、もし民間業者が主食用に使える米を77万トンのMA枠いっぱいに輸入すると生産農家へのダメージが大きすぎる、そのため国がその枠を使ってしまっているという感じです。
ただし、民間が好きな米を関税なしで輸入できるSBS枠が、77万トンのうちの10万トンだけ用意されています。この10万トン枠の権利はマークアップという関税代わりの手数料みたいなものをいくら払うかの入札で決まるのですが、今年だと1kgあたり60~80円くらいで落札しているようです。
そのSBS米なのですが、米トレサ法と米価暴落の影響で22年度入札は超不人気に。通常は4回くらいで終了する入札も9回まで実施され、しかも最終的に成立したのは10万トンのうち3万7千トンほど。6割以上の枠を残しての終了です。うち主食用になる一般米はわずか1万0,606トン。マークアップも40円台が中心でした。

農林水産省/輸入米に係るSBSの結果概要  http://www.maff.go.jp/j/seisan/boueki/nyusatu/n_sbsrice/


タイトになった需給

22年の秋には過剰に思われたコメの供給でしたが、大手チェーンの大量の契約が原因で、年が明けてすこし経った頃には、特にコシヒカリの需給がタイトになり始めていました。巷では5月あたりには未契約のコメは無くなるのではないかという噂も流れていました。

そんな状況で起こったのが大震災と福島第一原発事件です。当初は福島第一原発による放射能汚染よりも、浸水や倒壊でダメになったコメがどれくらいあるのか、作付け不可能な田んぼがどれだけあるのか、が心配されていました。
また東北からのコメがストップしたため先ずは当座の手当として、後には関東で発生したコメ不足を補うために西日本のコメが流れて行きました。
その後、放射性物質による汚染が深刻だという状況が明らかになると、その年に収穫予定のコメが嫌われて22年産の買い溜めが発生、8月には本当にモノがなくなりました。通常年なら10月から11月に開始される業務用米の新米への切り替えも、9月の刈り取りが始まるとさっそく行われた状態です。
予想されたように米価は20%くらい上げてスタートしました。東日本のコメは忌避され、ただでさえ数量の多くない西日本のコメに人気が集まりました。
ただ、23年出来秋には「需給バランスはむしろ緩いくらいだ、年明けか春頃にはモノも出てきて価格も落ち着くだろう」と見られていました。しかし年が明けても「どうも何時まで経っても高値のままだし、もしかしたらもうモノは市場に出てこないかも」という雰囲気がでてきました。


人気復活のSBS枠

高いだけじゃなく、モノもない。さらに国内、特に東日本のコメは放射能汚染の可能性があること、原発事故以降の諸々の騒動から国内産農産物への信用が崩れてきていることから、海外のコメへの抵抗感も薄らいだと思います。
SBS米は2月10日に行われた第4回までで10万トンの枠すべてが成立しました。豪州玄米短粒種は12月に5,000トン、2月には9,780トンが落札されています。松屋はそのうち4,000トンを使用するとのことです。

後編へ続く・・・

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