2012/03/05

米ヌカの産地情報伝達とコイン精米所

精米すると、重量にして玄米の1割ほどの米ヌカが発生します。容量でみると、かさ張るので2割くらいになります。
米屋にとっての米ヌカは廃棄物というよりも副産物という位置づけになるのですが、引取価格はかなり安く保管の場所代にもならなくらい。それでも処分しなければ溜まるばかりだし、廃棄物として処分する手間やコストを考えれば、取りに来てもらえるならマァいいか、という感じです。

発生した米ヌカは、主に米油の原料や堆肥、飼料に使われます。 また、少量でしたらヌカ床に使ったり、これからのシーズンは筍を調理するときにも使われます。あとは、石鹸に添加したり、美容パックとして利用したり、ヌカ袋に入れて清掃に利用したり、などなど。
胚乳部分よりも油分やミネラル、ビタミンなど微量栄養素に富み、原料価格も安いのが魅力でしょうか。
反面、栄養分に富んでいるうえに細かい粉末になっているため、酸化しやすく、腐敗したり虫がつきやすい厄介な部分もあります。また、人間に有益な栄養素だけでなく残留農薬やカドミウム等の重金属もヌカ部分に多く溜まります。そして放射性セシウムも同様です。

昨年末、農林水産省から「平成23年産米に由来する米ぬか等の取扱いについて」が発表されました。
要点は、

  1. 米ヌカの加工係数は「8」。(例えば、10Bq/kgの放射性セシウムが検出された玄米なら、そのヌカの放射性セシウム濃度は80Bq/kgと推計する。)
  2. 米ヌカの販売においては産地情報を伝達する。
    1. 放射性物質調査の対象となった17都県産以外の玄米の場合はその旨を、
    2. 17都県のうち放射性物質が定量されていない地域のものは産年(22年、23年)ごとの使用割合を、
    3. 放射性物質が定量された地区の玄米は使用割合とその地区の放射性物質調査の結果を伝える。
    4. 暫定規制値を超えないようにする。
  3. 飼料、肥料等の製造業者はこれらの情報を基に、製品が許容値を超えないようにする。

先日、同業者と集まる機会がありました。そのときにちょっと話題になったのが、コイン精米機でのヌカです。
コイン精米所には不特定の利用者により30kgとか60kgの小ロットで多様な玄米が持ち込まれるのですが、そこでどんな玄米が持ち込まれているのかは把握されていません。さきに書きましたように米ヌカの引取価格は安く、加えて回収するごとに内容が異なる。とてもじゃありませんが回収毎に検査機関に測定してもらうのは非現実的な話でしょう。
ならば、コイン精米機のヌカはただの廃棄物として処分されるのか?
農林水産省は通知で、つぎのように指導しています。

2.米ぬか等を用いた食品、肥飼料等の安全の確保(1)(イ)
コイン精米機の管理事業者は、玄米の放射性物質調査の結果、40 Bq/kg 以上の値が見られた市町村に設置されたコイン精米機で発生した米ぬかについて、当該地域の玄米から発生した米ぬかの放射性セシウム濃度の推計値を参考に、食品や単体での肥飼料等への利用は控えるようコイン精米機の利用者や米ぬかの利用者に注意喚起を行う。
ここでは、昨年行われた玄米の放射性物質調査で40Bq/kg以上の値が出なかった市町村に設置されているコイン精米機には触れられていません。
昨年の玄米の調査のとき40Bq/kg以上が見られた地域は、福島県を除くと茨城県鉾田市、北茨城市、栃木県日光市、群馬県安中市、渋川市、千葉県市川市くらいですね。
では、それ以外のヌカは原発事故以前と同様にフリーパスということなんでしょうか。
当該地域の玄米から発生した米ぬかの放射性セシウム濃度の推計値を参考に
という部分から思うに、他の地域においてもコイン精米機の米ヌカのセシウム濃度は、それが設置された地域の検査結果から推計して扱うということでしょうか。
しかしこれは、コイン精米機で精米される米は、その地元の米ばかりだという想定を前提としているわけですよね。
原発事故の影響もあり首都圏でコイン精米機の利用が増えていることが、業界紙で報じられています(商経アドバイス2月27日号)。今、国内のコイン精米機から発生するヌカは、かなりの量にのぼることでしょう。
東京都や神奈川県などにあるコイン精米機には、それら都県のコメ生産量と消費量のバランスから考えても、持ち込まれる玄米の大部分は他県産だと思われます。

もちろん、完璧な制度というものが存在するとは思いませんが、どこか納得いかない、釈然としない。この辺の詰めの甘さが、残念に思えます。あるいは、いろんな方面への影響を考えた結果、中途半端になったのか。
いくら一部では情報伝達をきちんとしても、こういう大きなところに穴があると思うと、なにか虚しさを感じます。

コメ行政に関しては、ありがちな虚しさなんですが。

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